Stick 2 The Script

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ボストンの気鋭MC2人のアルバムに続いてレビュっとくのは、同じくボストンからニューヨーク、アメリカのヒップホップを代表するようになったDJ、Statik Selektah(スタティック・セレクター)のセカンドアルバム「Stick 2 The Script」
ミックステープDJとして名を馳せた、とのことだが、ミックステープは聴いたことがない。
短いスパンで届けられたセカンドで、ファースト「Spell My Name Right」も相当調子いいので、次回はそれについて。

REKSのアルバムでは大活躍、ターマノロジーのアルバムにはプロデュースで名を連ねることこそなかったものの、ボストンのタイトなチーム感はその作風に感じられる。
古き良き、を感じさせるクラシカルなビート、温かみや哀愁を感じさせるメロウなサンプリング。
バキバキにキーボード聴かせる攻撃的なトラックもお手の物。
今年何度か音楽ネタを書いたときに書いてるが、何かっぽさを感じさせないのに、良かった頃を思い起こさせるサウンド。
いずれ、「ボストンっぽくね?」みたいに言われるのかもね。


To The Top (Stick 2 The Script)

速いの遅いの、ハードなのメロウなの、何でもいけるスタティック・セレクターならではのバラエティに富んだラインナップ。
スパニッシュギターっぽい音色がモロに哀愁漂うメロを奏でる初っ端の「To The Top (Stick 2 The Script)」からしてヤバすぎる。
静かに時を刻む、といった感じのゆったりしたドラムブレイクに、流麗って言葉がしっくりするウワモノが重なる。
キャシディ、サイゴン、ターマノロジーもしっとりねっとりと絡んでくるし、ジガとリル・フェイムというチョイスからプリモっぽさを感じざるを得ないフックの擦りっぷりまで、すべて完璧。
タイトル曲足りうる名曲からまず、トバされるよねえ。
続いてM.O.Pとジェイダキスというニューヨークの鉄板コンビネーションによるストリート仕様の「For the City」
声に特徴のある3MCに対し、まさに“ヌキ”のブレイクを入れてその違いを楽しませる作りはかなり正解。
音圧強めのベースが癖になる。
さらにボストン勢と密なUGKからバンBを迎えた「Get Out The Way」で畳み掛ける。
ややエキゾチックな鳴りを聴かすピアノループ、もちろんフックはスクラッチと、これまたプリモ直系なサウンドだが、悪いわけがない。
バンBって本体聴いたことないんだけど、ド低音、渋さがこれまた癖になってきた。


Talkin' Bout You (Ladies)


On The Marquee

とまあ、頭3曲からこのクオリティ。
これだけでアルバム一枚分の価値はある。
それなのに、ほかの曲も粒揃いだったりする。
ヤング・クリス、ピーディ・クラック、フリーウェイで「All 2gether Now」ってタチの悪い冗談みたいなタイトルだが、散り散りになってしまった元ロカフェラ王朝戦士たちのマイクリレーに相応しい仰々しさで、悪くない。
長めにネタを流したイントロからそのスムースさを引っ張りながらループしていく「Church」、疾走り気味のトラックに気持ちいいホーンとコーラスが響く「Talkin' Bout You (Ladies)」は春っぽさを感じるQティップとラファエル・サディークのあれみたい。
前者がターマノロジーのソロ、後者はSkyzoo、ジョエル・オーティス、タリブ・クゥエリのマイクリレーと、被せるラップも的を得ている。
リトル・ブラザーをフィーチャーした「On The Marquee」はダイヤモンドの「Hiatus」を思い起こさせる奥行き感。
男声ヴォーカルも心地よい。


So Good (Live From The Bar)

優しく弾かれるギターリフに生っぽいドラム、洒落たホーンとタイトルそのままジャズバーが似合いそうな「So Good (Live From The Bar)」は締めのCLスムースが大人の渋さでハマってる。
ターマノロジーやREKS、ボストン勢を並べたマイクリレー「Streets Of M.A.」もいなたいドラムにピアノ、シンプルな構成がマイクリレーにもってこいの出来。
ピースフルなサウンドにフックは女声ボーカル、締めのマナーとして実に理に適ってる「Take It All Back」もいいね。

限りなく捨て曲ナシに近いアルバム。
個性的だけど筋の通ったスタティック・セレクターサウンドと、それを壊さない程度に個性を発揮するMCたち。
特に多くの曲に参加しているREKSとターマノロジーらボストンのMCがバランス取ってていい感じ。
この手のDJ名義のアルバムってどうしてもコンピの域を脱しなかったりするんだけど、確かに求められるMCの豪華さ、多様さに応える一方で、フッドのMCを大量フィーチャーすることで作品全体の色づけがうまくできてるんじゃないかな。
完成度が高まり、多様性が出たセカンド、素晴らしい作品。
もうちょっとシンプルで分かりやすく踊れるファーストも負けじといいアルバムなので、次回。
by blue-red-cherry | 2008-12-17 19:53 | 音楽
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