王道楽土

c0025217_20281924.jpg

マイクロフォンペイジャー、まさかの復活作、もしくはロングロングアウェイテッドな2ndアルバム、「王道楽土」
当時を知る者も知らぬ者も、日本語ラップ好きを自認するなら未聴なはずがない金字塔、「Don’t Turn Off Your Light」から13年。
求めるモノは今も変らず。
だからこそ…ああすればよかったのにこうすればいいのに、満足はしていない。

ボーカルのゲストだけで30組を数える。
高々4、5分の曲で、CDのサイズで考えたってフルフルで70分強、イントロアウトロ入れて16曲にこれだけ詰め込んでるんだから、主役のムロとツィギーのヴァースが少なくなるのは仕様の問題だ。
そして30組もいれば東西南北、ありとあらゆるタイプのラッパーがそろい踏みし、世代も超えた集まりぶりは確かに豪華絢爛だが、セレクトに一貫性がないゆえの散漫な印象も拭えない。
それはそれぞれのリリックにしても言えることで、そもそもムロ・ツィギーと一緒にレコーディングできてない(クレジット見ても分かるが)ゲストも多く、さらにクルーやフッドの枠を超えたドリームマッチゆえの疎通のなさもあり、一曲の中で歌われるトピックに統一したテーマがほとんどなく(強いていえばタイトル縛りと、ペイジャーのパンチライン応用)、聴いてて違和感を覚えることも多かった。
ゲスト間においてフロウに幅があるのは飽きずに聴けて嬉しい要素だが、スキル含め、もろもろの個人差も目に(耳に)付く。
音もいいし、ムロとツィギーのコンビネーションが聴けるのは紛れもなくペイジャーのそれだ。
だけど豪華なゲストの参加が裏腹に、2人の存在を薄くしてしまっているのは皮肉だ。
これだけのメンツをそろえてアルバムを作るのは相当骨の折れる作業だったろうし、ダボの「Baby Mario World」とともに近年のシーンを象徴したショーケースとして、歴史に残る作品だと思う。
そう、ショーケースっぽいんだよなあ。
ダボのもそうだけど、作品自体はカラフルだし、個々に特筆モノのハイライトが散りばめられているし、楽しめるんだけどなぜか…残らない。
どちらかというと「Baby Mario World」は曲単位での意思統一はされていたから、曲単位では佳作が多いけど、ペイジャーのこれは曲単位ですら不具合が発生しているというか…。
製作期間も限られていたと思うし、満足な環境だったかは分からない。
でもそこまでして、例えば急いでペイジャーのアルバムを出さなきゃいけなかったのかな?
個人的には今のシーン、急いでペイジャーが改正しなきゃいけなかったとは思わない。
するのであれば、童なんちゃらとかスフィなんちゃらとかみたいな「青山テルマスタイル」(つかネリーのジレンマ?ジャルール?いまさら…)が横行しているところにぶち込む内容でやってほしかった。
ムロにしてもツィギーにしてもヒップホップの枠に捕らわれずに高い評価を得ている人たちだし、それができたと思う。
お互いの活動もあるし、それこそ74分フルフルにやる必要なんかまったくない。
45分、10曲とか、タイトにやるってアイデアはなかったのかな。
まあ何を言おうとオレなんかの測り知るところではない。
いまだどこにも出てこないが、いずれ読めるであろう本人たちのインタビューをぜひ、読んでみたい。

なんだか生意気にも偉そうなことをつらつらと書いてしまったが、じゃあこのアルバム嫌いなのか、聴かないのかと問われればそんなことはまったくない。
ムロのトラックはジェイZ音源を和モノオンリーでリミックスした傑作「JAPANESE GANGSTER」に続き、生感のある生きたサンプリングが光る、タイトなトラックが並んでいる。
ラップに関しては両者、13年前の勢いは当然ないものの、重ねたから生まれた渋みのある大人のラップを聴かす。
もともと(「病む街」とかは例外)「Don’t~」にしてもメッセージ性があったかといえばほとんどなかったわけで、スタイルとしてのカッコよさは失われていないと思う。
確かに自分語りの進化が進む今のラッパーに比べると物足りなさがないこともないが、ペイジャーにそこは求められてないだろう。
むしろ依然としてヒップホップアイコン足りうる2人のカッコよさは異常だ。


改正開始08

散々な書き方をしているが、豪華絢爛なゲストのヴァースにもグっとくるシーンはある。
先行で聴けた「改正開始08」のB.DとD.Oは、アルバム中でも1、2を争う重めのファンクトラックの上で、己のフロウを貫くふてぶてしさが頼もしい。
続く「号外」ではQ、漢、鎮座DOPENESSと個性もバラバラ(リリックの中身にもう少し整合性があればヘラタイトだったのに)な3人だが、三者三様、気合い入ってるし、スタンダードな押韻のQ、詰め込み型の漢、フリースタイルの鎮座DOPENESSとスタイルウォーズ状態。
鉄琴の残響音とぶっといベースのコンビネーション、ド渋なトラックと相俟ったイルな世界観を実現している。
音のほうでは個人的にベストトラック、早めでクラシカルなドラムブレイクにウッドベース、ホーンを短く刻んでくるジャジーなポッセカット「HEY!FELLOWS」
迎えるはGKマーヤンにユウザロック、リノ、3人で雷クレジット。
あまり評判のよくないベテラン勢、正直あまり期待してなかったけど、同時期をともに戦った同志ゆえの気合いか、もともと相性の良い速めのトラックにバッチリハメてきてて健在ぶりをアピールしている。
ライムスのブログにて、元はペイジャーへのシャウトだった、それが発展して曲になったという旨を知ったので、当初感じた手抜き感も納得の「MESSAGE」
E.G.G.MANにマミーD、ジブラにボーイケンとそろえるならガッツリ作ってもよかったんじゃない?という欲はあるが、ペイジャーへのリスペクトを短い小節にまとめてきたジブさんのヴァースの素晴らしさに感服したので溜飲を下げさせていただく。
「たこに焼き入れるたこ焼きスタイル」という衝撃的なラインでもってくヒダディーと、変幻自在のヴァースを聴かすSHINGO西成が印象深すぎてほかの記憶が薄れてしまう「HARDCORE」もアルバム随一のスリリングなマイクリレーだし、ネタ感の強いアルバムにおける異端な存在のバウンスナンバー「隙」ではニトロからスイケン、ダボ、そこにRYUZOが加わり、四者の速射ラップが楽しめる。
曲あまり関係ないが「MP5000FT」でのシーダは、リルウェイン化が進んでおり、ここに自身の持つエモーショナルな部分とかがうまく合わさってくると…なんて期待が膨らむヴァースをキック。
そうそう、違和感の筆頭は「灯かり消すな」のコマチとベスの共存。
「ハードルがないとつまらない」と息巻くコマチからマイクを受け取ったベスが「その日暮らし達が泣く街角」ってスピットしてるっていう。
ねえ。

ほら、なんだかんだで楽しめちゃうんだって。
平成ニッポンの、日本語ラップ見本市としては十二分に機能している。
「号外」での鎮座DOPENESSのヤバすぎるフックに魅了されてコチトラも聴いてみようと思っちゃってるオレがいたりとか。
でもでもでもね。
やっぱりペイジャーがアルバムを出すっていったら隙のない完璧なクラシックを期待しちゃうよね。
だって伝説だし、オレは偶然その時期を過ごせたけど、もろに影響受けたから。
ブッダがもし、再結成アルバムを出す、ってなったら同じように物凄く高いハードルを求められるだろうな。
だからこそデヴラージのソロ、実質ブッダ以降初のブッダ直系音源だった「THE ALBUM」は長い歳月をかけて、細部にわたって作りこまれたアルバムだったと思うし。

もしこの先もペイジャーが活動するんだったら…次はムロとツィギーでタイトに作ってほしいな。
できればマサオとPHをちょろっと絡ませたりとかしてくれちゃったら泣くね。
by blue-red-cherry | 2009-01-22 20:32 | 音楽
<< ラーメン凪 ゴールデン街店 チャーハン二郎風 >>