Recognized.ep

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個性派ぞろいのSD JUNKSTAにおいても異彩を放つ、フリーキーフロウの持ち主・KYNのep「Recognized.ep」
「Lost Shit」収録曲や、ノリキヨ、BRON-Kらの諸作へのゲスト参加曲にても異端っぷりを遺憾なく発揮しているKYN。
ところどころ言葉を伸ばしたり、短く切ってみたり。
そのスピットぶりを譜面にすればクレッシェンドやスタッカート、演奏記号が随所に複雑にちりばめられたかのように、複雑ながらもカラフルで飽きさせない曲が並ぶ。
元々堅い韻や強烈なメッセージが売り、というよりはフロウや声質の個性、キャラ立ち集団という印象があるSD JUNKSTAで活きていくに十分足りうるオリジナリティーだと思う。

ことこのepにしてみれば、トラックも非常にオリジナル。
徹頭徹尾、サンプリングにこだわったというサウンドは、90年代後半のニューヨーク産アングラヒップホップを感じさせる。
Aboriginalsとか、AK Skilsとか、Mike Zootとか、あの辺の硬質なビートと浮遊感漂うウワモノのコンビネーション。
スチールパンのような金属質のドラム音が派手にビートを刻む実質イントロの「FIRST DRIP」の空気は、シンプルなドラムブレイクに対して奥行きと余韻が響く琴系の音色でスペイシーに。
ドラムブレイクが目立つ作りは徹底されてるかも。
「PROJECT2」でも骨組みのはっきり見えるドラムブレイクにウッドベースでうねりをつけるヴァース、フックではさらにフルートループが加わるジャジーナンバー。
ノリキヨやBRON-K、SD JUNKSTAクルーの声ネタを擦ってフックを構成する「STRAIGHT AHEAD」の空気もジャジーといって差し支えないか。
ジャジーなトラックにタイトなスクラッチ、さながらギャングスターの2ndあたりを思い起こさせる。
ドラムが立ってると生っぽく聴こえるよね。
淡々と刻まれるギターの音色も渋い。

今まで挙げた3曲はどれも2分半に満たない尺で、epであることと、インストが多いこと、ひっくるめてこの尺だと物足りなさを感じてもおかしくないんだけど、なぜか不満は少ない。
たぶん、この手のフロウってフルサイズで聴くと飽きが来ちゃうと思うんだよね。
これは完全に個人の嗜好の問題だけど、ガグルのハンガーとかも同じ感じ。
ガグルに関しても適度にミツザビーツのインストがバランスとってる気がする。
そういえばあえていうとハンガーと被るかもな、KYN。
唯一4分近い、普通のサイズな「THE BIG SHOT」は浮遊感ここに極まれり、といった感じの気持ちいいトラックで伸び伸び漂うようなラップが楽しめる。
DJスピナ、というよりはジグマスタズが思い浮かぶようなマッチング。
ラストの「THE END」も今作の中では長めのボリューム。
哀愁漂わすストリングスとピアノのループと流れるKYNのフロウが遅めのトラックにハマる。

聴かせるメッセージそのものもアブストラクト。
内容は相模ライフで変わらないんだけど、出てくる言葉は精神世界を具現化したような抽象的なワーディング、その組み合わせによるセンテンスだったりして、直接的なライフスタイルを形にしたノリキヨらとは一線を画す。
これに関してもフロウ同様、流れるように耳に入ってくるし、音とのマッチングがぴったり張り付いているというか、耳なじみがいい。
一聴しただけではわからないメッセージも、煙に巻くようなフロウの奥に潜んでいたりして、短いepだからこそ聴き込み甲斐がある。
音と言葉で統一された世界観、とろけるような深い暗いスペース。

不良性全開なSD JUNKSTAクルーにあってこの個性は異端であり、貴重。
パッケージとしての完成度が高かっただけに、フル尺での作品に期待が高まるし、クルー名義の作品での輝きにも期待がかかる。
by blue-red-cherry | 2009-04-13 15:45 | 音楽
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