エジプト×イタリア FIFAコンフェデレーションズカップ2009

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ブラジルを追い詰めた勢いか、苦戦を撥ね退けた実力か、興味深い対戦となったエジプト×イタリア。
攻守の関係が色濃く別れ、イーブンの争いこそ少なかったものの、局面での攻防に見応えある90分だった。
守りきるサッカーも案外、退屈じゃない。

イタリアがピルロ、デロッシのところでボールを保持し、機をうかがう。
対するエジプトは慎重に、まずはブロックを作ってしっかり対処しながら、最前線のモハメド・ジダンを中心に鋭いカウンターを仕掛ける。
後半、モハメド・ジダンが退くまで、ゲームのバランスは終始この形。
その構図の中で徐々に明らかになってきたのは、引いた相手を崩す術を持たないイタリアと、足元の技術の高さと組織された機動力を活かしたエジプトのカウンターの鋭さだ。

イタリアはピルロもデロッシも当然の如く、持てるし、蹴れる。
エジプトの守備網もハーフライン付近ではさほどプレスがきつくなく、展開は自在だった。
しかし、フレッシュなメンバーで臨んだ前線の交通渋滞が改善されない。
アメリカ戦ではジラルディーノのトップ、左右のカモラネージとイアクインタが固定されすぎることで前線の連携を生み出せずにいたが、イアクインタ、ジュゼッペ・ロッシ、クアリラレッラという面子で構成した前線もまた、機能しない。
今度は動きすぎなんだよね。
エジプトがブロック固めてきていることもあって、なんとかこじ開けよう、穴を作ろうと精力的に動くんだけど、もらいにいったり、サイドに開いたり、動きすぎて前線に基点ができない。
楔を打ち込めなければ、前線に基点を作れなければ、押して引いての駆け引きができない。
裏にサイドに、動きながらボールをもらうか、点で合わせて勝負したがるフォワードの動きに呼応して、せっかく高い保持率を保つ中盤や、そこから開いたサイドからの攻撃も単調に前線に送るだけ。
いいリズムで繋いでいくんだけど、アタッキングサードからが強引に行き過ぎる。
もともと堅い守備で後ろ固めて、ほら、行ってこい!で前の力強いタレントがなんとかする国だけど、かつてのビエリやロベルト・バッジョクラスのタレントがいない中、行ってこいでは難くなってきていると思う。

そんなこんなで割りと守りやすかったんだと思う、エジプトは。
イタリアを代表するフォワード陣なわけで楽ってことはなかったと思うけど、センターバックのゴマーとサイードの凸凹コンビはそれぞれが強さとカバーリングに長けていて、焦れずに弾き返し続けていた。
特にゴマーの力強さが目立ち、前半はイアクインタ、後半からはトーニと迫力の肉弾戦を演じ、負けなかった。
イタリアが3列目から2列目に入ってくるあたりから囲む、中盤のプレスも見事なもの。
完全に前線に残り続けるのはモハメド・ジダンだけで、あとは全員が激しく上下動。
右サイドハーフのファティ、左サイドハーフのモワマド、この両翼の運動量はすさまじいものがあり、攻守に貢献していた。
そして奪ってからのカウンターにキレがあった。
これはブラジルを苦しめた初戦でも見られていたことだが、基本、足元の技術は高く、そして球離れの良さ、距離感の良さが成せるワンタッチのコンビネーションで局面を打開していく。
奪ってからの速い展開で前線へ運び、モハメド・ジダンが基点となり、サイドから、中盤の底から猛然と人数をかけて攻めあがる。
ただしイタリアの守備意識も高く、戻りも早いため、直線的なカウンターだけではなかなかフィニッシュまでたどり着けない。
ここでもエジプトの攻撃パターンは明確だった。
定石である、そろった相手にはサイドの揺さぶりだ。
スピードとテクに優れた左サイドに人を寄せ、大きな展開で精度高いクロスを武器にするファティに開く。
ファティからのアーリークロスは幾度となく、決定機を演出した。
カンナバーロのギリギリでのディフェンスも見応えあったが、クロスが上がる形にさせないことが肝心だった。
エジプトの先制点は38分、その左右のアタックが布石になったか、バイタルエリアでフリーになったセンターの選手がミドルシュートを放ち、ブッフォンがパンチでタッチに逃れる。
このエジプト一発目のコーナーキックでイタリアのマークが乱れ、どフリーだったホモス(すげえ名前)が綺麗なヘッダーを叩き込んだ。

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後半はもちろん、イタリアの攻めのギアが一段上がり、エジプトが受ける展開に。
エジプトもモハメド・ジダンが退くまでの10分間は勇気あるディフェンス、ひるまないカウンターを見せられていたが、ジダンが退いて前線に基点が作れなくなると、全体の位置を下げて守備に重心をシフトした。
ここから30分、イタリアは攻めに攻めた。
しかし、エジプトのゴールキーパー、エル・ハダリが最後まで立ち塞がった。

デロッシ、ピルロ、ガットゥーゾに代わってモントリーヴォが入ったセンターハーフの位置取りが高くなり、前線との距離が近くなったことで、強引ながらも攻撃に絡む人数が増える。
8分にはラインを上げかけたエジプトディフェンスの裏にクアリラレッラから浮き球のスルーパス、巧みに抜け出したイアクインタが絶妙のトラップからシュートを放つも、エル・ハダリ。
イタリアはクアリラレッラに代えてサイドアタッカーのぺぺを投入。
このぺぺがイタリアの攻勢をさらに加速させ、70分にはぺぺのアーリークロスに再びイアクインタ、大きめのトラップでディフェンスをかわして腰をひねった見事なシュートを放つが、エル・ハダリ。
73分にはトーニが左サイド深くから折り返したボールにフリーで上がってきたモントリーヴォが合わせ、低く抑えたボレーを見舞うが、エル・ハダリ。
77分にはショートコーナーからピルロがファーに送ったクロスに、大外から入ってきたイアクインタが三度、枠内に飛ばすも、片手で防ぐエル・ハダリ。
どれもこれも超決定的なシュートだった。
ポジショニングもよかったし、超人的な瞬発力、反応も素晴らしかった。
イアクインタはもう、エル・ハダリの顔を見るのも嫌なんじゃないかな。
間違いなく、マン・オブ・ザ・マッチの神っぷり。
モハメド・ジダンを欠いたことで、ギリギリの均衡を保っていた力関係が崩れたイタリアとエジプトの差を、奇跡的なセーブにより埋める、いや凌駕する働きだった。
…それだけに笑えたのがパントキック。
エル・ハダリはマイボールを必ず、パントキックで前線に送ったんだが、ターゲットはいなくなってるし、それなのに相手ペナ付近まで飛ばしては誰も触らずブッフォンの手に収まるっていうww
1回2回のミスならわかるけど、ほぼ100%これだから。
何度マイボールをやすやすと渡していたことか。
まあイタリアかなり前がかりになっていたし、低い位置からのビルドアップは危険だったかもしれない。
それにしても、ねえ。

エジプトはいいチーム。
でもジダンを欠いただけでバランスが一気に悪くなった。
最終ラインや中盤の守備力、運動量、集中力、そして組織はしっかりしてるし、怪我で離脱しているザキとかミドとかのタレントがうまく融合できれば、もっと面白いサッカーができるだろう。
なんとかアフリカ予選、突破してもらって本大会でも見たいチームだな。
イタリアはどうかね。
前線はタレント不足と、連携(約束事かも)不足、どちらも結構深刻に映る。
ピルロ、デロッシ、ガットゥーゾのセンターハーフも破綻はないが、迫力にかけるし、最終ラインは高齢化に伴い、スピード・パワーともに鉄壁と呼べるほどの安定感は感じない。
3年前の世界王者は前途多難なんじゃないかな。

さて、エジプトのジャイアントキリングで、消化試合になるかと思われたグループリーグ最終節が一転、ガチの決勝戦に。
トーナメント切符をかけたブラジルとイタリアの一戦、上がるぜ~。
録画を楽しみに…してたのに!
ここまでずーっと情報遮断に成功してきたコンフェデだったが、この上がるシチュエーションで初めて、見てしまったよ、結果を。
ああ、「芸●ポ速報」のぞく習慣にやられるなんて…。
まあそれでも見ますよ、一応。
by blue-red-cherry | 2009-06-22 19:44 | サッカー(FC東京以外)
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