アメリカ大会の決勝以来かな、見るの。 昔のことはあっという間に上書きされる脳の持ち主なんだけど、あの試合の光景はなぜか、今も色濃く残っている。 足を引きずりながらドリブルを仕掛けては、倒されるロベルト・バッジョ。 攣った足でギリギリのピンチをクリアし続けるフランコ・バレージ。 当時世界最強のコンビと言われながらもこの試合では決定機を逃しまくったロマーリオとベベット。 灼熱のアメリカのピッチで繰り広げられた熱戦は、その暑熱を超えた熱さが伝わる激戦だった。 期待しまくりで見た、コンフェデ2009グループB最終節、イタリア×ブラジル。 ワールドカップのプレ大会ではあるが、一応FIFA公認のタイトルマッチであるコンフェデ。 ワールドカップ一年前チャンピオンの挑戦権をかけたグループリーグ最終戦、勝ったほうが決勝トーナメントの切符を手にするシチュエーション。 ワールドカップ本大会の決勝と比較するのはナンセンスだが、そこまでいかずとも、テンションの低い戦いだった。 めぐりめぐったイタリアの3トップはトップにトーニ、右にカモラネージ、左にイアクインタ。 予選リーグ3試合通じて結局固定されず、役割もバラバラ、まあベストなチョイスではなかったな。 中盤の3センターもいじってきて、確かに空回りというか、何もできてなかったガットゥーゾを下げてモントリーヴォを入れてきた。 対するブラジルは国内組を入れたアメリカ戦の編成をベースに、ルシオの相方をファンに戻してきた。 序盤こそ一進一退の様相を見せていたが、相変わらず組み立て、仕掛けが拙いイタリアはなかなかエリアに入れないし、フィニッシュに至れない。 一方ブラジルは、前2試合ほど激しくプレスはかけないものの、それでも前線から守備意識は高く、少しずつ高い位置でのプレスでミスを誘い、奪いながら、ルイス・ファビアーノやロビーニョがゴールへ迫っていく。 両チームともに運動量は少なめ、無理をして人数をかけることもなく、前半の中盤はこう着状態。 プレスが控えめだったこともあり、トップ下に構えたカカがリズムよく、ブラジルが押し気味な感はあったが、両軍ともにらしくないパスミスが目立ったり、ピリっとしない。 慎重なのか、疲れているのか、期待していたような熱い戦いとの乖離もあり、眠気を誘う展開だったが、30分過ぎのブラジルのセットプレーで目が覚めた。 右からのコーナーがファーに流れると、フリーで待っていたルシオの足元に収まる。 来季からバイエルンの指揮をとるファン・ハールには気に食わないらしいが、オレは大好きなルシオのテクニックが炸裂。 ドリブルでディフェンスを置き去りにし、シュート性のクロスを中へ送ると必死で伸ばしたイタリアディフェンスの足に当たってポスト直撃! 再び得たコーナーキックはなぜかまた、ファーに抜けてきてフリーのルシオの元へ流れ、今度はダイレクトで左足のボレーを放つ! これはブッフォンの好セーブにあってしまった。 ルシオ最高。 一気に目が覚めた。 あのでかい図体で繊細、なんだけどモーションでかいから豪快なテクを発揮して、フィニッシュに至る攻撃性。 それにしてもイタリアの体たらくはこのシーンにも出ていたね。 同じ種類のコーナーキックで2度、ファーサイドを空けているっていう。 信じられないミスだ、よく考えると。 続けざまの決定機に、こう着状態の凡戦だとか思ってたのが、意外とじわじわブラジル押してるんじゃないか、と思った手たら37分、左サイドで組み立てたボールを右に大きく揺さぶりマイコンへ、マイコンは中へ切り込んで左足を振りぬくと、強烈なグラウンダーのシュートを、イタリアラインに並んで入っていたルイス・ファビアーノがまさかのトラップで方向転換、対角線に鮮やかなシュートをぶち込んで先制ゴール。 フィニッシュも見事だったが、その前のマイコンのシュートを足元に収めるトラップが、いや、あのシュートを止めて自分で打つ(ってトラップする前に決めてないとあのタイミングでは打てない)っていうアイデアがすごい。 あわててイタリアは、イアクインタをジュゼッペ・ロッシに代え、機能不全の前線のてこ入れをするが時既に遅し。 ダラダラ回しているようで徐々にゴールに迫っていたブラジル攻撃陣は先制点でさらにテンポが良くなり、43分、イタリアのあまりにも拙い中盤でのパスワークを奪うとルイス・ファビアーノからロビーニョ、ロビーニョがドリブルでエリア近くまで運んで守備を引き付けながらカカへ、カカはタッチ少なく狙いすましたグラウンダーをキーパーとディフェンスの間に流すと、走りこんだロビーニョがスルー、完全に虚を疲れた守備陣の隙間にルイス・ファビアーノが飛び込んできてあっさり追加点。 極めつけは3点目。 ブラジルの2点目からわずか1分後、反攻したイタリアがブラジル陣内に侵入するも、右サイド深くで仕掛けたロッシは、カカに体を寄せられ無様にも吹っ飛ばされる。 奪ったカカはドリブルを挟んで、人数のそろわないイタリア陣内へ鋭いスルーパスを送る。 ラインギリギリで反応したロビーニョが抜け出し、中はなんとか絞ってきたドッセーナとルイス・ファビアーノ。 ファーに膨らみながら受けようとしたルイス・ファビアーノへ送ったロビーニョのグラウンダーは…ドッセーナが懸命に伸ばした足に当たって、完全に逆を取られたブッフォンの脇を抜けてゴールに吸い込まれた…。 あまりにも無残すぎるイタリアの末期。 もちろん、ゲームはこの前半で決した。 エジプト戦でも気を吐いたぺぺ、汚名挽回に燃えるジラルディーノらが入った後半、散発ながらブラジルゴールに迫る姿も見せたが、全体的な緩慢さは最後まで拭えない。 イタリアは攻守に選手同士の距離感が開きすぎで、これはそもそものフォーメーションにも問題がありそうだし、サポートもスペース作りも出来ない選手個々の運動量・質にも問題がある。 圧倒的なポゼッションを保ちながらも単調な放り込みに終始した攻撃を見る限り、タレントの選考にも再考の余地がありそうだ。 リッピはこの大会の、この試合のイタリアを本来のイタリアではないと語っていたようだが、もしそうでなかったとき、この大会の3試合ではひとつもいいところがなかったわけで、立て直すというよりはバラす、くらいの荒療治が必要になるだろう。 伝統の堅守も崩壊。 中盤の構成は手詰まりで前線は不発。 うーん、根は深い。 一方のブラジルにとっては楽なゲームだっただろう。 中2日の戦いが続き、さすがに疲労も出てきたか、持ち前のハードワークも抑え目だった前半、イタリアが輪をかけてひどい状態だったので、要所要所でギアを上げる程度でリードを奪えた。 しかしベストではなかったとはいえ、ゴールシーンはどれも素晴らしいものだった。 前線のタレントはサボらない動きの量が過去のブラジルとの違いを感じさせるが、アイデアの豊富さ、技術の高さは王国のそれ。 そしてコレクティブな守備から繰り出される圧倒的なカウンター。 マンチェスター・ユナイテッドを彷彿とさせる、技術・運動量ともに相手を凌駕する王者のサッカー。 ここまでの戦いで粗を出しつつも、その戦いぶりには積み重ねが感じられる。 期せずして決勝は(その前に南アフリカ、スペインはアメリカ戦があるけど大丈夫だろ)、至高のパスワークを誇るスペインが相手だ。 ブラジルにユナイテッドを重ねるのは少々強引過ぎるが、似たようなサッカーがぶつかるという意味で、チャンピオンズリーグ決勝に通ずる期待感がある。 こういうときに限って、アメリカがスペインに勝っちゃったりするんだよなー。 それにしてもエジプト! なんで負けるかなー。
by blue-red-cherry
| 2009-06-23 19:56
| サッカー(FC東京以外)
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