CHAMP ROAD

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リリースの量、質、ともにかつてないほどの活況を迎えている日本語ラップシーン。
これだけ幅が広がると、リスナーからすれば選択肢がたくさんあって嬉しい限りだが、やってるほうはどう受け入れられていくのか、突き抜けるために何をすべきなのか、悩ましいところだろう。
そういう意味では、例えばSCARS、CCG周辺のように、ひとつ主流となっているところは相乗効果も期待できる一方で、突き抜けるにはひとつ抜け出た何かが必要で、競争も激しい。
逆にその主流というか、今を切り取って語られた際の文脈に乗らない、独自路線で尖るというやり方も、異端にしてスマートだ。

ドスモッコスの3rdアルバム、「CHAMP ROAD」
この作品はハッスルハードなストリート臭漂う日本語ラップとは完全に一線を画し、グループの出自であるサウスサイドニッポン、九州ならではの言語を織り交ぜて尖り、また、音の面においてもひたすらに「ファンキー」というか「ファンク」であることを貫くことで、ほかにはないオリジナリティーを獲得している。
そしてその変化球なライム、フロウとトラック、どちらもクオリティが高く、ポジティブなヴァイブスに満ちた作風と相俟って、長く楽しめそうな一枚だ。

餓鬼レンジャーのポチョムキン、ヴォルケーノ・ポッセのケンイチロウ、それにDJのモーリキの2MC+1DJ。
結成は餓鬼レンの1stに収録された衝撃の九州弁マイクリレー、「ばってんLINGO」がきっかけらしい。
懐かしい。
あれ、好きだったなあ。
「ばってんLINGO、ばってんLINGO」って力強くうねるケンイチロウの流れるフロウが新しく、九州、日本のサウスサイドからの登場ということと、そのユーモア溢れる雰囲気もあり、リュダクリスみたいな存在になったら面白いなあ、なんて思ってたっけ。
餓鬼レンもそういえば、インリンをビデオに出したあたりはチェックしてたけど、1st以外はあまり記憶にない。

久々に聴いた2MCのラップは、多少声質に変化を感じるが(特にポチョのほうは餓鬼レンの頃の奔放な感じが記憶にあったが、歳を重ね熟成された、声変わりに近いものを覚えた)、硬軟、速遅、自在のファンクトラックに乗り遅れることなく対応し、さらに自分の色を加えて乗りこなす。
オリジナリティがそのまま高いスキルの証明となっている。
時折差し込まれる九州弁は彼らのアイデンティティーのひとつだが、決してそれに偏ることなく、それに頼ることもなく、標準語と混ぜながら小気味よい鳴りのよさを実現している。
しっかり日本語として聴き取れるレベルのライミングだが、澱みなく流れる聴こえの良さは絶品で、その聴こえの良さが、ゲストで迎えた海外のMCとのマイクリレーを違和感なく聴かせているのかもしれない。
語尾で上げ下げ、伸ばしに自在な九州弁はその点でアドバンテージになっている。


トラックがまたいいんだ。
ファンク、ファンクいわれてるけど、確かにファンク以外のなにものでもない。
DJモーリキを中心に数名のトラックメーカーが手がけているが、みなモッコスマナーのファンク色を念頭に製作しているようで、アルバム全体の音色はカラフルながらも統一感がある。
男気を感じるギターリフにぶっといベース、バンド感漂うドラムの乱れ打ちが初っ端からファンクワールドに誘う「Go Go Spark」の分かりやすさは直球のファンク。
かと思えば、尺八ライク(つか尺八?)な笛の音が短く速く刻まれるループが強烈にオリエンタルで、どこかオシャレで音楽性が高い「めふっ!!!」は、ダンサーも喜びそうな超速ブレイクビーツ。
ビートだけ聴いてたら、非ヒップホップな方々も素直に乗れて、楽しめそう。


この完成度高いファンクトラックをさらに濃く、いなたいヒップホップに昇華するのはやっぱり、2MC。
掛け合いもそうだけど、フックのユニゾンはジュラシック5ばりのヒップホップマナーが伝わってくる。
このマナーに沿ったフックってのもまた、海外勢との競演を自然な形にする工夫のひとつだよね。
エイリアンとエイジアンで踏むフックで曲のコンセプトをきれいにまとめた「Alien」にはクアナムMCズからリリックス・ボーンをフィーチャー。
この曲も走り気味の速いトラックに心地よいベースがうねり、小気味いいギターリフが刻む、シンプル極まりないファンクループ。
歌心アリのリリックス・ボーンらしく歌い上げるフック、彼の擦れ気味の声が、曲を味わい深いものにしてくれている。
カナダのMC、アブドミナルを迎えたその名も「Drum & Bass」がまた、渋い。
まさしくドラムとベースだけで構成された曲では、3MCの三様のフロウをこれでもか、と楽しめる。
曲の速さに合わせてテンポよくマイクをつなぐリレーは、さながらバンドと即興でセッションしているかのような臨場感がある。
フックにヴァースに、掛け合いが多いものの、英語と日本語が巧みに散りばめられており、違和感はまったくない。
これは総じていえることだが、勢いある楽曲ながら構成は実に練られているものが多い。
だからこそのマイクリレー。
素晴らしい。

ホーンやエレクトーンの音が夕焼けを想起させるセンチメンタルなメロ、ポジティブに迎える次の日を歌った「Brand New Day」
始終、ビブラフォンの高音が鳴り響き、気持ちいいグルーヴを生み出す「Indigo Days」もまた、音色に合わせたバッキンザデイ的リリックがハマる。
音と言葉のバランスがいい。
日々繰り返されるくだらなさをお得意のユーモア満点のリリックで巧みに表現した「いつもの」も、エビスビーツならではのヘンテコなトラックにぴったり。
ぼんくら極まりない夢想を綴ったファーストヴァースはゆったりとたラウンジテイスト、転調して一気にヒートアップしたラテンサウンドが鳴るセカンドヴァース、昼の部と夜の部でガラリとテンションを変えるビートが楽しい「悠々クレイジーランド」、これまた音、言葉ともに遊び心があっていいなあ。
Ahhcoなる女声シンガーがリン・コリンズばりに歌い上げる「On My Way」もJBを彷彿とさせるファンクサウンドでハイライトのひとつ。
ラップと歌、ダブルで聴かせるコマチの好演が光った「Friday Night」は前作収録のものをバンドによる演奏で引きなおしたバージョン。
ボートラ的扱いだが、これまた秀逸なファンク、当然バンドとの相性はいいわけで、これがあることで作品の価値がグっと高まっている。

あれ、思ったより気に入ってるみたいだなww
洗練された末の傑作のようだが、ファンクは荒削りなもの、乱暴くらいがちょうど良かったりもする。
2ndも聴いてみようと思う。
ファンキーな日本語ラップはこれ、モンキーでもベイビーでもない、マジなファンク!
by blue-red-cherry | 2009-06-25 21:18 | 音楽
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