酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記

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久々に読書感想文。

恩田陸に関しては、代表作ともいえる「夜のピクニック」は未読だが、「ユージニア」を楽しく読ませてもらった。
どこか幻想的な香りのするミステリーを書く人、という認識。

んで、今作の「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」
普段はあまり読まないんだが、タイトルに惹かれ(特に〝酩酊〟)、エッセイに挑戦してみた。
作家としての力量はもう既に知ってるだけに、エッセイという舞台でどんな文章を書くのか、非常に興味深くページをめくった。
全体的には、やはり<小説家・恩田陸>のエッセイだ、という感じ。
異常なまでの飛行機恐怖症(怖い人にとってはホントに怖いんだな)とか、その飛行機恐怖症の一例として「のだめカンタービレ」の千秋クンが出てくるあたりとか、素の恩田陸にも触れられるんだけど、こんなエッセイ小説家にしか書けねーよ。
エッセイの感想文なんて、グダグダになりそうなので、琴線に触れた部分をピックアップ。

①小説家ならではの含蓄の深さを晒してるとこ
→序盤戦なんか特にそうなんだけど、彼女の行き当たる事象にいちいち例えで引っ張りだされる文化関連の作品群がすごく興味をそそった。ある時は映画のワンシーンで、ある時は小説のワンシーン。ある時は芸術作品の風景。小説のための取材なのか、はたまた単なる趣味なのか、どっちにしてもかなり手広く文化的作品に触れてるんだなぁ~と素直に感心。しかも、こうやって書物として発行してるくらいだから、広く浅くではなく<広く深く>である。また、説明が巧いから、いちいちその映画なり小説なりに興味が湧くんだよね。ご丁寧に注釈も豊富に設けられており(それをこちらも素直にいちいち目を通すもんだから、読むスピードが落ちたのは気になったが)、再読した際には、気になったヤツをメモって探そうと画策中。

②小説家の創作活動の一端が垣間見れたこと
→本文中にもあるが、小説家にとって旅は直接的な取材というより、創作への動機作りである場合が多いと、著者は語る。そんな彼女の今回のイギリス・アイルランド巡りの目的は、同所の遺跡探訪。どっちの国か忘れたが、そこの遺跡で彼女はおもむろに自分の創作活動時の脳内を晒してくれる。その空間が生み出すエナジーを敏感に感じ取り、目を瞑って浮かび出す、小説家・恩田陸だけに見える風景。そこには既にソコだけの世界が進行しており、その過程には目からウロコ。<小説家>という職業にちょっと触れた気がした。

③各地のバーでの呑みっぷりについて
→羨ましい。この一言に尽きる。そして気持ちのイイ呑みっぷりだ。アー、ビール呑みてぇ~

といったところですか。
何か本筋から外れているような気もしないでもないですが、エッセイも千差万別なら読み方も千差万別ってことで。
あ、旅行記としても優れものなのでご安心を。
当方、欧州童貞なので、激しく行ってみたいと思った次第。

オススメのエッセイ也。
by blue-red-cherry | 2005-05-18 15:52 |
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