オレの大事な友人(兄弟)は、随分前から読書家で、当時オレは全然本など読まず、月曜にスピリッツとヤンマガ、水曜にマガジンとサンデー、木曜にヤンジャンみたいな感じだったんだが、2人はオレの入る余地のない会話の中で、阿部和重の話をしていた気がする。 それから遅れることたぶん2年以上。 ようやくオレも阿部和重の世界に触れ、魅了されたわけだ。 「インディヴィジュアル・プロジェクション」。 直訳すると自己投影、になるのかな? まんま主人公・オヌマの日記形式で綴られる文章はとにかくスリリングだ。 自らに起きた異様な事象を、自らが客観的に書き起こすスタイルがリアリティーを生む。 本書で起こる、半ば狂人だらけの世界の日常が狂っているのか、それともオヌマ自身が狂っているのか、読んでいるほうまで狂わされる力強さがある。 ハードな文体も言いっぱなしで清々しい。 読み終わったあと、不可解な部分や明かされないことが多いことに関して、何ら疑問も不満も抱かなかった。 この手の小説に何を求める? オレは何も求めなかったからこそ楽しめた気がする。 ひとまず、他の作品を読むことにする。 それが終わったら、この作品の見方もちょっとは変わってくるんだろう。 楽しみは尽きない。
by blue-red-cherry
| 2006-09-29 13:24
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