第78回アカデミー賞で作品賞ほか、主要3部門を受賞した「crash」。 実は、仕事でそのアカデミー賞時期のハリウッドを訪ねていたオレは、その授賞式をなぜか「crash」の関係者たちと見ていた。 もちろん、賞が発表されたときの彼らの喜びっぷりったら凄かった。 会場から離れたレストランでの出来事だったけど、貴重な経験だった。 と、不思議な縁のある映画を、授賞式から半年とちょっとたった先日、ようやく見た。 受賞理由にも挙げられた、アメリカならではの人間関係が描かれる。 長く移民を受け入れてきた、巨大な多民族国家でしか起こりえない、多様な人種の人間たち(すべてアメリカ人同士)の日常は、諍いの連続。 人々の心に、奥深くで刻まれた人種差別の認識が、ふとした衝突をきっかけに露呈する。 その根深さ、いや考え方自体が同一民族国家(表向き)に長く暮らしているオレたち日本人には理解しがたい世界だ。 こっちにしてみれば、白人も黒人もプエルトリカンもアラブ人も、みんなアメリカに住んでてアメリカで暮らしてたら、アメリカ人だ、というのは綺麗ごとか? 日常的に表面化する諍いだからこそ、重く、痛い。 でも、この映画は差別問題だけかっていったら、そうではない。 かなりの差別主義者に映るマット・ディロン演じる白人警官も、病気の父親という闇を抱えていれば、議員と議員婦人という上流階級の人間も、夫婦間の、たわいもないが深い闇を持つ。 すべての人間が持つ、闇の部分が、人種問題とクロスしていろんな”クラッシュ”を生む。 人生、いろんなことがタイミングで決まると、オレは思う。 なんか、投げやりというか不確定すぎて嫌だが、仕方ない。 この映画の住人たちは、その怒りや哀しみ、喜びと、各々の感情の連鎖の末に立ち直ったり、死んでしまったり、さまざまな行く末を歩んでいる。 きっとオレたちの人生も、自分の感情に誘われるまま、誰かの感情に導かれるまま、多くの”クラッシュ”を乗り越えて、生きていくんだろう。 そんなことを考えながら見たが、全体のトーンも、展開も、演者も素晴らしい映画だった。
by blue-red-cherry
| 2006-11-19 11:50
| 映画
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