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BBOY PARK 2009

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前に参加したのがたぶん、「We Are The Wild」(久々に聴いたらえらくカッコいいじゃないの)が出た回だから、2000年?
ほぼ10年ぶりとなった「BBOY PARK 2009」に行ってきた。
あまり評判の良くなかった時期はスルーして、ラインナップを見るだけで気合いが伝わった今回から参加なんて我ながら現金すぎるかな、と尻込みしつつも、都合がついた2日目だけ。

サッカーの試合同様、写真選びで収拾がつかなくなったが、思ったより写真が雄弁だった。
常にビール片手の一日だったので、いつも以上に小学生の日記スティーロ、見てきたことをありのままに書くぜ。

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曇り空、たまに陽が差し、弱めの雨が降ったりと、懸念された酷暑が避けられた日曜日。
People’s Choiceの先頭バッター、ノリキヨのライブに間に合うように起きたつもりだったんだけど、もろもろあって完全に遅刻。
アルバム結構リピートしてるので楽しみにしてたダースレイダーのステージにも間に合わず。

渋谷駅からとぼとぼ歩いた先、ステージを盛り上げていたのはDJ NOBU aka BOMBRUSH!と仲間たち。
ちょうどKGEがアルバム曲を披露しているところだった。
このざわざわした感じ、久しぶり。
次から次へとギラついた、おっかないお兄さんが出てくる。
しかも誰一人として似通わない。
KGE、JBM、ミクリスにTETRAD、JBL~宇田川ラインに、大阪から4WDとJAZZY BLAZEも参加。
面子の割合的に大阪勢は分が悪いというか、後半の宇田川チームの悪ノリなテンションに所在なさげだったのはかわいそうだったけど、チラっと聴けた4WDの迫力ヴォイスはシーダがバックアップしているというアルバムに期待させるものだった。
でもこの若手ショーケース的なステージ、ニップスが全部持ってっちゃった。
それこそ選び切れずというか、選ぶ気もなく、全部が面白くって乗っけた写真のように、一挙手一投速から目が離せない。
TETRADの作品は未聴なのでどんな曲を歌ってたかは分からなかったが、BDがタイトにかますのと対照的に、ゆらゆらと、くねくねと、自在。
それでも序盤は割りとまともに歌ってて、何年か前に見たときより全然まとも、そういえば最近は多作だし、モチベーション高いんだなあって目を細くしてたら、フリーダムっぷりは加速する一方。
つか、BDはじめTETRADの面々とかが、一回りくらい差はありそうなニップスをいい意味でいじり倒してて。
もうその絵がカオスっていうか、でもそれがあってニップスも楽しくやれてるんだろうなっていう。
「アラスカ アラスカ 鼻息荒いシロクマー」という、どう解釈していいのか分からないパンチラインをスピットしたかと思えば、終始腰を振り続け、特にムロのビートと思われる曲のときにみながキングオブディギンを称え、掘り師がなんちゃらっていう盛り上げ方をしていたら、「掘る」に反応して鬼ピストンww
ステージを縦横無尽に動き回り(ゆっくりと)、挙句スピーカーの上に寝転んだあの姿は、90年代中ごろ、奇跡の全員来日を果たしたクラブチッタでのウータン公演でステージ上で酔い潰れて寝だした在りし日のODBを思い出させた。
なんにせよ、ニップスがリビングレジェンドであることをまざまざと見せ付けられるステージだった。
セクソシストとしての活動もあるみたいだし、注目したい。
そうそう、そんなニップスとがっぷりよつで、ときに無視しながらガッツリラップしまくったBDのカッコよさも異常。
ニップスを除けば期待のヤングガンズが次々と登場したステージだったけど、存在感は圧倒的だった。
まずはTETRADから、聴いてみたいと思う。

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この裏では第三会議室の公開収録がサブステージにて。
オレもかなり好きなのでちょろっとのぞきに行ったりしたんだけど、すごい人気。
ゆっくり話聞くにはつらそうな環境だったのでライブ優先した(結果としてはそれでよかった)。
この日、無理やり連れについてきてもらったんだけど、彼女にとってはここがハイライト。
つか第三会議室がやっててくれたおかげで動き回れたので、感謝。
で、ずっと見てた連れによると、この日はいつもどおり話題をいろんなところに飛ばすんだけど、どうしてものりピー問題に戻ったらしい。
笑えるようで笑えない話のオンパレードだったらしく、まあほとんどカットだろうww
途中、そのジブラとマミーDが参加して、ギドラとライムス揃い踏みの一幕もあったらしい。
そこは見たかったなあ。
ステージのラッパーに「事件は会議室で起きてるんじゃない!」って言われてたってのもワラタ。
ライブやバトル一辺倒だとさすがに疲れるし、こういう企画ができることも、10年一昔というか、隔世の感。

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昼間のステージのハイライトはなんといってもジャスワナだろう。
クラシック「BLACK BOX」からの曲を中心に、メガG、メシア、ムタの2MC+1DJのタイトすぎるライブ。
音源そのままにスキルフルなライム、フロウを堪能できる2MCのラップは安定感があり、堂に入った無駄のないステージングはまさしくラッパーのそれ。
ムタのターンテーブルをしっかり活かしてくる構成にもにやりとさせる。
オリジナルトラックを入り口に盛り上げながら、セカンド、サードヴァースでは洋モノクラシックビートに切り替えて飽きさせない。
どの曲か忘れたけど、スクラッチでビートを刻んで、半アカペラ状態でマイクを回したヴァースは鳥肌モノだった。
メガGの「昔はオレもそっちだったんだから、上がって来い!」的なメッセージは、ありがちだけど、目頭が熱くなった。

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適当に休憩したり、久々に合う友人と乾杯しながらブッチャーズジャークチキンに舌鼓を打ったりしてたらいつの間にか夕方。
すごい歓声が沸きあがったと思ったら、ジブラ・オン・ステージ。
初っ端は「JACKIN 4 BEATS」のリミックスで、確認したのはメガGとJBMとSLACKくらいだったけど、1曲目からライブ終盤のような大人数のステージにはびっくり。
ニップスじゃないけど、勢いあるマイクリレーの中でジブさんこそが楽しそうだったのが印象的。
「Perfect Queen」で嫁さんステージに上げちゃうテンションだったもんな。
で、そのまんまのノリで、クラシックに次ぐクラシックのヒットパレード。
「真っ昼間」、「I’m Still No.1」、「Neva Enuff」に「Mr.DYNAMITE」、NIKEのCMのヤツもやってたな。
「カラオケで歌ってんだろ!」って煽りもさすがだけど、その通りで、そこかしこで大合唱。
もう満腹ですって感じのところで今もっともアガる日本語ラップクラシックのひとつ、「STREET DREAMS」!
華と色気と哀愁があるセロリビーツが流れただけでブチアガってたんだけど、ジブさんのヴァース終わりかフック終わりかでなんと、ライムスター・イン・ザ・ハウス。
確か「キングオブステージ」リリックで宇多丸&マミーDがキック・ザ・ヴァース。
Bボーイパークのスターといえばなライムスの登場で盛り上がらないわけがない。
ジブさんとライムスはあの世代でもちょっと格が違うなあとしみじみ眺めてたら、ジブさんの粋な計らいでライムス復活の新曲、「ONCE AGAIN」。
サービス精神旺盛すぎでしょー。

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とにかくアガりまくったジブラ+ライムスターの反則ジョイントだっただけに、そのステージの途中くらいから、ああ、次のサ上ロ吉、大変だなあって思ってたんだけど、ブチかましてくれたね。
世代交代、口にする権利、あると思います。
まともにライブ見るの初めてだったけど、「オレたっちの名前はなんだ? サ上とロ吉!」の掛け合いに始まり、「バウンス祭り」、再び宇多丸登場でサ上宇多丸スワッピン、ボンクラスーパーラッピン、「MASTERSオブお家芸」と惜しみなくアゲまくる。
正しく狂ったロベルト吉野の、それでいて出過ぎないバックDJっぷりも美しい。
RYUZOを迎えての「START LINE」もカッコよかったなあ。
もうこの曲のときだけは笑いなし、純度100パーな2人のラッパーがヒップホップ賛歌を歌ってるわけで、胸にくるモノがあった。
ラストの「WONDER WHEEL」がまた、名曲過ぎてもう。

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今振り返ると、すごい濃密なライブを続けざまに見てたんだなっと改めて実感。
ジブラ、サ上と続いた熱は、このPeople’s Choiceのステージの趣旨、ファン投票ナンバーワンの般若がトリ、大トリ、ビッグバード。
チャリに乗って登場した般若は、なかなか顔も見せずに、斜に構え、シュールな雰囲気と鋭いブラックユーモアで刺しながら、半ば淡々とステージをこなしている…ように見えたら、「HANNYA」の中でも随一の熱さを誇った長渕調の「やってやる」で超エモい展開に。
ひたすらに拳を突き上げ、客を煽り、一体感を作り続けたフックのループは一種、異様な光景だった。
確かに何かを打ちつけるその拳は、種類は違えどブルーハーブのそれと通ずるものを感じさせた。
なんともいえないカリスマ性。
「フェイク」や「最ッ低のMC」、タイトなパフォームを決めながら、最後はフリースタイルで締める。
「ラップじゃなくてもいい」みたいなことも言ってたけど、オレの目にはナチュラル・ボーン・ラッパーって感じだったなー。

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大ラスまでは見られないスケジュールだったので、オレのBBOY PARK 2009の締めは3on3バトルの決勝。
ここでもまた、期待せずしていいものが見れた。
ダースレイダー、MASARU、KEN THE 390のチーム、対するは漢、メガG、ベスのチーム。
とにかくKEN THE 390がカッコよかった。
多分に漏れず、聞かず嫌いというか、先入観で避けていたKEN THE 390が、93やんねーとダメなのかとか、しっかり準備してこそのプロだとか、まともなラインで次々に、名うてのハーコーラッパーを切り刻む姿は痛快そのもの。
どっちが好きとかじゃなくって、オレも「ダメ、ゼッタイ」とか、自分は守るけど大手を振って言う気はないんだけど、でもそうだよね、吸わなくってもできるやついるよね、とか思うじゃん。
少なくともベスは準備不足だったし、恐持てで押す漢は普通に怖かったし、そうじゃなくて(まあそれを逆手にとってたけど)単純にスキル一本で勝負する様は潔かった。
サ上は難しいジャッジだったと思うけど、KEN THE 390の3人抜きが妥当だったと思うけどなー。
そんなこんなでオレの興味は尽きちゃったので、残りのバトルはあまり印象にないけど、KEN THE 390の音源も聴いてみようと思ったところで、終了。

思いに任せてありのままに書くと、こんなに乱文雑文になるっていうww
まあ少々取り乱すくらいのインパクトがあったのは確か。
環境もあって真夜中のクラブ活動とかままならない今、ああいったデイイベントを、しかも無料で見させてくれるのは嬉しい限り。
正直金取れるよね。
でもブロックパーティーの雰囲気を出すには代々木公園が最適だし、フリーだからこその空間でもある。
物販ブースとかかなり力入ってたけど、ああいうところで還元できるといいね。
要素的にも欠けてるし、ミックステープDJがこのイベント用にエクスクルーシブ作ってきて、売り上げで勝負するとか、実利を兼ねたエンターテインメントに出来そうだ。

とにかく楽しかったです。
不満はないです。
ありがとうございました。
by blue-red-cherry | 2009-08-25 21:08 | 音楽

HANNYA

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般若、5thアルバムは自らの名前を冠した「HANNYA」
1年に満たないスパンでのリリース、その瞬発力たるや、相変わらず歯切れがいい「ブログ」に通ずるものがある。
つうか、多様なオケの上で、思ったことをフィルタリングせずにポンポンと吐き出すスタイルは、あの「ブログ」のノリ、そのものだ。
そんな印象と、ポップ極まるジャケットの影響もあってか、少し軽いかなーなんて思ってたんだけど、よく聴いてみると、一曲一曲の強度も決して低くない。
むしろ、バラエティに富んでることでバランスが取れた、完成度の高い作品な気がしてきた。

オープニングにしてタイトル曲の「HANNYA」、単語、単語を小節に投げ、散文的な言葉遊びをしているようでいて「みーんなマイメン?んなわけないぜ」「思い出した、これが韻か、でも踏んでるだけじゃ粗チンだ」「オートチューン 聴きすぎちゃって嘔吐中」、っと要所要所でしっかりと刺してくる。
この一見ちゃらけてるようでどぎつい、機嫌よさそうなのに目が笑ってない感じ。
イントロに相応しく勢いのある曲だけど、いきなり般若節は全開だ。
「フェイク」では、吉本とジャニーズだらけのテレビから、着メロに代表される世に蔓延る薄々な音楽、この世のフェイクをバンバンバンバン、というよりは淡々淡々と刻んでいく。
あれもこれも、世の中のありとあらゆるものがフェイクだけど、フェイク、フェイクで韻を重ねてく中、「人生だけはワンテイク」、っていうフレーズが好き。
世にナチュラルに噛み付いてくアティテュードも、らしさ、だ。

変化球を武器とするのも彼の個性。
ド直球、ステレオに囁く天使と悪魔のダブルキャストを演じる「天使と悪魔」、こういうブラックユーモアは真骨頂。
携帯電話を擬人化し、ヴァースごとに違うストーリーを歌った「ケータイ」も面白い。
夫の浮気を知った妻に折られるケータイ、新しもの好きの女子にあっさり見捨てられるお古のケータイ、タクシーに置き忘れられたケータイ。
単純に面白いし、共感を呼びそうな下世話な目のつけ方が般若っぽい。
この感覚、ヒップホップの枠に縛られず多くの人に受け入れられるヒントだと思う。
電池切れでブラックアウトするところとか最高で、描写の巧さ、演出の巧さは確かなスキルを感じる。
「のぞみ」も笑える。
「シートを倒すとマダムが睨む 顔が伊良部 ちょっといらつく」とかさ、袋とじのくだりとか、夢オチのとことか、新幹線での移動あるあるでこれだけオモロイラップを聴かせるって、これも偉大なる才能だ。
「ドクタートーキョー」に比べると、ユーモア溢れる内容が増えた印象。

長渕剛をリスペクトしてやまない般若だけに、エモーショナルな曲もまた、力が入っている。
「オオーオーオオー」と、まさに長渕調のコーラスがフックに被さる「やってやる」は、タイトルまんま、開き直りのポジティブさにリアリティーがある。
「負けっぱなしもそろそろ飽きた」という歌詞にあるように、ただ前向きな言葉を羅列するだけの薄っぺらなポジティブではなく、ヤラレたことがあるからこそのエナジーが刺さる。
高揚感あるギターとシンセサウンドにシンコペのビートという組み合わせが、個人的にベストラックな「空」
激しく転調するフック前のブレイクもカッコよく、ビートの良さが際立つが、うまくいかない日々を綴るヴァース、「この空を飛べたなら」と願うフック、自由を願うメッセージソング、あつい。
作品中でも随一のヒップホップ濃度を誇る「最ッ低のMC」
自らのルーツ、敬愛するMCにシャウトを送り、オリジナル般若、妄走族、出自への思いを込めて己のヒップホップ観を吐き出す。
潔さが文句なしのカッコよさに繋がっている。
「ボタンひとつ」もエモい。
バリバリのギターリフが鳴り響き、四つ打ち、マイアミベース、転調しまくる超絶サウンドがたまらなくカッコいい。
荒れ狂うトラックに合わせるように、般若のラップもいつになくエモーショナルで、暴発する内面を強烈なリリックでスピットする。
激しさこそないが、静かに死生観、というか人生観から世界観を描く「ゼロ」もまた、胸に響く。
三線のような弦を弾く音色が寂しく奏でるメロに、貫かれている嘘のないポジティブさはやっぱり、グっとくる。

飽くことなきラップ力。
作品、現場、ブログ、どれにも相当な熱量があり、落ちない。
聞き取りやすさ、トピックの明快さ、遊び心と純度の高いメッセージ。
今はまだ叶っていないが、もっと非ヒップホップ層からの支持が得られてもおかしくないと思う。
ブレイクスルーのきっかけさえ与えられれば。
メジャーなチャートを賑わす般若を見ても、オレはまったく驚かないだろう。
by blue-red-cherry | 2009-08-12 14:39 | 音楽

NEWGIGANTE

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随分前にミクリスへの偏愛ぶりを表明し、DA BONGZのアルバムを誰よりも待っていたりと、オレは大の44、40周辺好きです。
フッドこそ千葉、茨城かもしれないけど、鳴りを優先させた個性的なMC、柄の悪さにイケイケなビート、雷、ペイジャーからニトロへ受け継がれた宇田川系のノリは彼らに受け継がれていると、個人的には思ってる。
それでこの夏、待たしても待ち焦がれた44発のフッドスター、KGE THE SHADOWMENの待望過ぎるフルアルバム、「NEWGIGANTE」がこれまた待望のリリース。

44BLOX周辺の客演仕事、大所帯ゆえに必然的にマイクリレーに参加することも多かったKGE。
そこで目立ったのがなんといっても変幻自在なフロウアーとしての魅力。
ライミングのパターンは前のめりなほど前にかちっと合わせてきたり、黒人ばりにどっしり裏の拍でリズム作ってきたり、幅広い。
言葉の崩し方もオリジナルで、特に語中、語尾、伸ばして抑揚をつけるスタイル(グッドイーブニーング!とか)が、挑発的で言い放ち気味のリリックとマッチしてカッコよくハマってる。
声張ってるし、張り付くし、存在感強め、濃いめのスタイルはフルアルバムという尺だと、ともすれば飽きるんじゃないかという心配もあったが、バラエティに富んだトラックに合わせるようにそのスタイルも変化に富んでいて、杞憂に終わった。
遅い曲、速い曲、サンプリング、打ち込み、それぞれにあった引き出し、というよりは瞬発力を聴かせてくれる。


先行でリークされた「STILL STREET」は、一歩一歩踏みしめるというよりは何かを踏み潰すかのように重く、ずっしりと刻むドラムスに不穏な声ネタとストリングス。
時代が時代ならホラーコアの部類に入りそうな重めのトラックに、声高に自身のルーツ、志向をスピットしまくる名刺代わりのセルフボーストモノ。
隙間が多いトラックだけに、決まったリズムを刻むのはフックくらいで、あとは縦横斜め、伸び伸びフロウが跳ねては波を打つ。
シャドウマンの面目躍如、現役バリバリのストリート感ぷんぷんで、これはほかの曲にも通ずるんだけど、ちょっと怖いくらいの物言いにリアリティがあっていい。

こういうど真ん中ストリート、みたいな曲がKGE“っぽい”んだろうけど、流麗なピアノが疾走する1曲目「Stay Stoned」のようなサンプリングトラックにもまた、映える。
独自にヴァース、フックと奏でるピアノの展開を無視して、RINOの如く「サビなし」で好き放題にラップするKGEとトラックの絡みは、フリージャズのテイスト。
続く2曲目の「NEW GIGANTE」もBPM早め、細かく刻むホーンがどこかファニーな雰囲気を醸し出す。
早めのトラックに特段早口で対応するわけでもなく、それでもブレスレスで長いフレーズを吐くラップは、遅めのトラックに裏でまくし立てるスタイルとはまた違った味わいがある。
そういえば「Night Madness」も、タイトルまんまの夜なムードを演出するジャジーサウンド。
Amebreakのインタビューではこの辺の90’sなトラックを選んだことを自身のルーツに拠るものとしていたけど、もっとバキバキな打ち込み系でくるかと思ってたので、同じくインタビューで本人が語っている通り、いい意味で裏切られた。
この曲の出だしなんかに顕著だけど、「夏がそろそろ終わるとひとたび 次の準備に追われる人たち」って、字面にするときっちりライミングしてるっぽいんだけど、トピックも相俟って、語り口調は普通に喋っているような、スポークンワードっぽく聴こえるときがたまにある。
型にハマらない符割りはやっぱり、唯一無二じゃないかな。

マーズマニーにJBM、44BLOXの盟友と勇ましくマイクを回す「Soldier's Soundz」はアンセム。
最近こういう、たぎる系の曲聴かなかったから、テンション上がる。
いなたいドラムの行進と、デジってるウワモノのミスマッチが初期ラフライダーズっぽくってカッコいい。
44の流れでいくとエッセンシャルのSmith-C.Nを迎えた「Just Wanna Chill」
気持ちいいトラックの上で歌う内容は、おなじみのHIGH LIFE。
もう、ホント好きなんだね、みなさん。
チープでメロウなビートに、「I Don’t Wanna Ill, Just Wanna Chill」と歌うわけだけど、尖ったKGEと、くねくねのSmith-C.N、個性出まくりの2人の対比も面白い。
BULLDAWGSとしての活動を共にするB.D the brobusとミクリス、3MCでヘヴィ級のダウンビートを乗りこなす「Fagget」はフェイバリット。
先頭バッターのB.Dの、ビートに負けない重量感のあるスローなラップが激シブなんだけど、三者三様、一曲の中で繰り広げられる3MCのスタイルウォーズがスリリングでいい。

尖った声質、フロウ、挑発的な佇まい。
バトルMCとしても名を馳せる攻撃的な雰囲気が全体的に漂っている。
不良性、全開。
その中身は単なるセルフボースト、マニー・キャッシュ・ホーに留まらず、メタファーを多用しながら社会を風刺してみたり、幅は狭くない。
客演やライブで見せてきた、こちとらファンが期待していた魅力は存分に詰め込まれている。
活躍しているほとんどの人に言えることだけど、10年戦士は伊達じゃない。
一方で、この作品内でも多彩な顔を見せているように、まだまだ化学反応は起こりそう。
44勢の枠を超えた展開にも期待したい。
by blue-red-cherry | 2009-08-11 15:09 | 音楽

More Grey Hairs

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ボストンからの安定供給には頭が下がる。
レックス、08年のクラシック「Grey Hairs」から間髪入れずに放たれた「More Grey Hairs」も高値安定のクオリティ。




相変わらずボストンの同胞、スタティック・セレクターと絡んだ仕事の出来がいい。
タイトルそのままテレビにラジオ、DJにオレの音楽をかけろ!と歌う「Play My Music」
あったかソウルフルな音色に延々繰り返す「Play My Music」という声ネタ、フックでは懇願するように優しく問い掛けるレックスの下手ウマな歌がツボ。
3rdヴァースでも歌われているけど、スカイズーにターマノロジー、サイゴンとここ周辺のラッパー・トラックメイカーたちの精力的な活動は嬉しい限り。

くぐもったベースがうねり、細かく刻まれるハット、ドラムブレイク、フックのホーンとジャジーなトラックが渋い、「killaz On Wax」もいい。
ここまで色濃くジャズっぽさが出るのも、彼らにしては珍しく聴こえるが、しっとり聴かせるトラックにアグレッシブにまくし立てるラップとのミスマッチが意外な相性。

今更確かめるべくもなく、相性のよさを見せつけるレックスとスタティック・セレクターのボストンコネクションだが、出色なのは「Year Of The Showoff」か。
背中で語る男の世界を漂わす、泣きのサンプリングに硬めのビート。
跳ねるようにフロウするレックスのライム。
「You don't know? You better ask somebody」と、故ビッグLの有名なラインをこすったフックもシビレる。
ネタ感、ソウル、ファンクの要素をベースにしたスタティック・セレクターのトラックは数打てば打つほど深みが増してきた気がする。
最新鋭に進化していくソウル・ファンク・ヒップホップがカニエならば、古き良きを今の時代に体現しているのがスタティック・セレクター。
ここにオーソドックスかつ、引出しの多いフロウ巧者、レックスのラッピンがハマる。
こと聴こえの相性だけでいえば、レックス>ターマノロジーだよな。



スタティック・セレクターとのコンビネーションだけでおなかいっぱいだが、ほかにも好曲、目白押し。
プリモ御大がぶっりぶりのファンクネスを注入した男のワンループトラック、「Cloud 9」
スキルズと並ぶ系譜にあると思う、レックスの張り付き、粘着系の声を味わうにはこういったシンプルなトラックがいい。
ヴァースごとにライミングの仕方はことごとく変わり、そのスキルの高さは聴こえだけで充分把握できる。
リード・シングルっぽい「System」はDJ GIジョー作。
GIジョーってキッズ・イン・ザ・ホールとかやってる人だよね。
レックスのヴァースでも「back to the 90's」なんてリリックが出てくるけど、ホーンが華麗に鳴り響くいかにも90年代調のサンプリングサウンドで、あの時代の空気がバッチリ出せてる。
三十路Bボーイズは絶対に気に入るはず。


おっと、この調子でいくと例によって全曲語ってしまう。
盟友ターマノロジー、スカイズーとドープサウンドの上でマネートークをディープにかます「Money On The Ave remix」もひとつのハイライトだが、ここはひとつ、最後に「Dear Winter」を。
奥行きのあるストリングスに、ハンドクラップ的にビートを刻むミディアムナンバー。
なんの変哲もない、ヒップホップだが、それがいい。

もちろん意味はわからないんだけど、端々にビギーや2パックが出てきたり、この人のラップは英語の聴き取り易さもそうだけど、言ってることもわかりやすそう(に聴こえる)。
言葉が違っても発音や発声がクリアであることは大切だな、と感じる。
乗っけるトラックごとに微妙にスタイルを変化させてたり、カラフルな音色が楽しめる作品だけど、通して聴いて好きなのはレックスのラップ、そこだなと。
タイトルだけだと続編的な位置付けに済ませてしまいそうだが、前作「Grey Hairs」に勝るとも劣らない、素晴らしい作品だ。
by blue-red-cherry | 2009-07-23 17:34 | 音楽

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パフューム、「⊿」

一聴して最初に感じたのはアルバムとしての完成度の高さ。
文字通り、「⊿」の音の世界に飛び立つような広がりのあるデジタル音に引き込まれるイントロの「Take off」から1曲目の「love the world」
カウントダウンを経て、一分の隙もなく、ピッタリ曲のケツと頭を重ねてくる、徹底された曲間の作りこみにその意気込みがうかがえる。
さらに後半でも、「The best thing」から、「Speed of Sound」への切れ間のない繋ぎぶり。
コンマ秒単位で計算し尽くされたマスタリングの妙。
淀みないスムースな流れは熟練のDJミックスのようであり、曲曲を聴かせる一方で、アルバム全体の流れが非常に重要視され、作りこまれた作品だという印象を受ける。
事実、このアルバムに関しては、どこかを抜き取って聴く、という行為にいたらない。
「Take off」から始まり、「願い(Album-mix)」まで、通して聴くことが正しい聴き方であり、それが今のところ一番しっくりきている。

テクニックの部分は置いといて、アルバムの並び、曲順も例によってよく練られている。
「love the world」、「Dream Fighter」と、「GAME」から「⊿」までの間を繋いできてくれたシングル群が、安定した鳴りを聴かす前半。
夏フェスや武道館、パフュームの精力的な活動がフラッシュバックする。
と、ピースな流れで始まったアルバムを転調させるのが「edge(⊿-mix)」
病的にクセになるミニマルなデジタルサウンドのループと、よりパーツ的に、衝撃的なリリックを無機質に歌うフックが「love the world」カップリング収録時から話題だった異色の楽曲が、爆発的に存在感を高めて登場した。
ベースやギターの音圧は前出バージョンとは比較にならないほど分厚くなり、打ち込みひとつひとつの硬さ、パターンも豊富で、音圧がとにかくハンパない。
「GAME」で言うところの「GAME」、ちょうど出番も同じくらいか。
挑戦的で先鋭的、パフューム⊿というか、ystk⊿の真骨頂。

この並びで「NIGHT FLIGHT」
既報通りの80'sテクノポップ、駆け抜けるエレクトロなメロの洪水。
ウワモノの適度にエキゾチックなメロのイメージはまんまYMO、ただしベースはブリブリystk仕様。
はちきれんばかりにキュートな3人の歌も加速気味で、初回盤特典のDVDに収録されている代々木ディスコ時のライブ映像が証明しているように、ライブ映えがいい。
展開含めかなり派手なので、シクシクほど長く聴けるかはわからないが、アルバム用のボムをしっかり用意してくるところはさすがだ。

で、一つ目のハイライトを越えたあとの3曲がまた、刺激が強い。
冷水、熱湯、冷水と交互にかけてはち〇こを腫らした小学生時代の銭湯での出来事を思い出した。
まさに冷や水掛けられたかのような、突き放された気持ちにさせられる「Kiss and Music」
ミッドテンポなR&B調のナンバーといえば「マカロニ」を思い出すが、それとは180度違う世界観。
夜だ。
オトナだ。
「コルクを開けて酔いに揺られて
 勇気ないのね 踏み出せないの? ねえ」
って、ちょっとぉ。
なんつうか、恐らく個人的にこういうのを求めてなかっただけに刺激、いや衝撃が強かった。
ベースが引っ張る、ブラックネスに満ちたコード進行、うーん。
こういう曲いるのかなーって思ってたら、「Zero Gravity」
のっけからかしゆか濃度が高い、ふわふわキッチュで柔らかい歌声と音色。
入り口を抜けた先はハウスのりなグルーヴが心地よいトラック。
歌詞も恋する女子の背中を押すようなポジティブさで満ち溢れていて、「Kiss and Music」との恐ろしいまでのコントラスト。
「アンタ、ダメね」
「ほら、キミならできるよ」
ステレオで天使と悪魔に囁かれているようなこの並び、確信犯的にystkに弄ばれているような感覚に陥る。
トドメが「I still love U」
決して叶わぬ恋への想いを拭い去れない女心。
マドンナやカイリー・ミノーグなんかが歌いだしそうなキラキラしてて、どこか切ない80'sポップスのノリ。
奏でるメロは相田翔子と鈴木早智子が出てきて歌ってもおかしくなさそうな、これまた80'sなJ-POP・歌謡のテンション。
ほんのり甘く、たっぷり苦い、美メロナンバーのドキムネ感はいまだかつてないレベル。
この3曲の並びで味わえる悦びとダメージは絶大で、トドメに強烈な完成度を誇るISLUを喰らい、いよいよ「Complete best」収録曲との本格的なお別れも覚悟しなければいけないと、身の縮む思いがした。

一転アップテンポに戻り、スタンダードながらもダンサブルな、らしい「The best thing」で安心させられる。
間なしで繋ぐ、ほぼインスト曲の「Speed of Sound」は客いじりにもってこいで、ライブでその真価を発揮してくれそう。
「ワンルーム・ディスコ」も同じく、安心感を覚えた。
あの攻撃的なイントロから、懐かしいリズムのダンストラックに変わるあの流れは慣れ親しんだパフュームのそれで、シングルの時点では結構面白いな、と思ったが、中盤の心揺さぶる展開を経た今となっては、安心感が先立った。
「願い(Album-mix)」は見事なアレンジ。
これも全体のトーンあってのアレンジだと思うが、一枚通じてダンスサウンドを貫いたアルバムの締めとして、骨抜きのアコースティックじゃ締まらない。
ドラムの強度を挙げたことで、より聴かせる仕上がりになっていたのでは。

緻密に計算し尽くされている気がするんだよね。
アルバム全体のトーンに始まり、曲と曲とのつなげ方、並びには歌詞や意味的なものから、曲間の秒数など技術的なところまで、すべてがアルバムそのものの統一感を高め、それ自体の完成度を高めている。
たぶん、これは最初から絵がないとできない芸当であり、やはりプロデューサーの存在が大きいだろう。
ましてや「GAME」以降大忙しなパフュームの3人にここまで作りこんだ物作りは、アイデア出しのレベルでさえ不可能に近い。
だからね…正直、このアルバムはystkのアルバムに近いんじゃないかなって思ってしまったわけですよ。
実際、3人のヴォーカルの記号化は、間違いなく進んでないか?
モノによるけど、例えばISLUなんか、声のエフェクトのかけ具合もいままでより強くかけられているように聴こえるし、どのパートが誰なのか、判別がいつになくしにくい。
それでもパフュームの3人のアルバムだから成り立っているものであることも間違いないと思う。
「The best thing」~「Speed of Sound」のくだりもそうだし、恐らくライブというパッケージも見据えて映えそうな作りの楽曲も多い。
ファンであれば、聴きながらにしてそういうシーンを描くわけで、そういう聴き方ができるのりしろはある。
だからこのアルバム、パフュームの「⊿」としてのポテンシャルはライブを見てはじめて正当な価値を知り得るものなんだと思うんだが、このCDアルバムとしての完成度の高さがどうしても、今の時点では強烈なインパクトがある。
優れたプロデューサーの手腕が存分に発揮された一枚だ。

弄ばれてる感があったり、いろいろ心が揺れるアルバムではあるが、曲単位でのクオリティは引き続き、ブレることなくハイレベル。
どれも楽しく聴ける。
「TSPS」のような甘い作調が減りつつあるのは、寂しいようで頼もしい。
うまく溶け込ませてはいるものの、シングル曲は少し、浮いて聴こえる。
恐らく、シングルなしでアルバム制作、という流れが許されるのであれば、さらに研ぎ澄まされた完成度のアルバムを作ってきそうな気がする。
音源だけで感じ取れるパフュームのパーソナリティは明らかに減退していると思う。
しかし、一方で音楽性の高さはより、幅を広げ、質を深めている。
この「作品はマニアックに」、「ファン心理はライブで満たす」というスタンスがいつまで続くのか、持つのか。
「⊿」以降は、「GAME」以降よりさらに難しく、楽しみな季節になりそうだ。

うわ、あーちゃん、かしゆか、のっち、とか、そういうワードが全然出てこなかった。
でもそういうアルバムなんだと思う、うん。
by blue-red-cherry | 2009-07-21 02:04 | 音楽

BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!

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超待望のニューアルバム、「⊿」の発売を目前に控えたこのタイミングで、DVD「BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!」を見終えた。
作品ごとにステージを上げていくパフュームのことだ、更なる高みに登ることは想像に難くないし、集大成的なイベントだったこのライブDVDを、新作の前に見といて良かった。

あらゆる「雑音」は抜きにして、純粋にライブエンターテインメントとして楽しんだ感想を。
やっぱりライブアーティストとしての基礎体力が高い。
とりわけ目立ったのはあーちゃんの客いじりのスキル。
クローズドな現場で、熱狂的なファンとの間で成立してたコール&レスポンスを、分かりやすさとしつこさで一見さんすらも巻き込み、それが嫌味じゃない。
武道館という超大箱ならではの、2階からアリーナ、上手から下手、広大なステージと客席を駆使してのいじり方も心得ている(スタンディングの客を一度座らせるんじゃなくって、ジャンプさせてウェーブを実現するってのは初めてみた)。

最近のパフュームのライブはどこでやってもホームの一体感、そんな評をどこかで目にした。
確かに一体感はあったし、カタルシスもあったと思うけど、武道館はどんなアーティストにとってもホームにはなりえないよね。
国立競技場がそうであるように、聖地は聖地でしかなく、誰のものにもなり得ない。
だからこそ、武道館でのライブは、そこでライブをやれる域に達するというステータスがあるとともに、そこでどんなパフォーマンスをするかが問われる、アーティストのライブ力が問われる場でもある。
永ちゃんの武道館とライムスターの武道館、パフュームの武道館はどれも趣の異なる演出で、それぞれの世界観を表現しているが、どれも武道館のライブであることは隠しがたい事実。
豪華なセットを組もうが、証明にひたすら凝ろうが、武道館ライブは武道館。
その歩みをともにしてきた熱狂的な信者の後押しを得つつも、この武道館がファースト・コンタクトとなるファンもたくさんいる。
パフューム色に彩られたステージから少し目を外せば、伝統と格式漂う(時代遅れの)コンサートホールの作りが目に入る。
誤魔化しは利かない。
歌、踊り、客いじり、すべてにおいて実力が問われる。
このライブアーティストのひとつの到達点は、そこでの開催権を獲得した達成感を与えるとともに高いハードル、試練の場を与えられることにもなるのだ。

だからこそ、パフュームのシンプルなステージが映えた。
ゲストを招くでもなく、大所帯のバンドやダンサーにサポートされるでもなく、コントを挟むでもなく。
ただひたすらに歌い、踊る。
そこにギミックはなく、楽曲の強さ、キャラクターの強さ、それだけ。
もちろん練られた構成、曲順に1曲1曲の演出、素晴らしい。
でも、このライブで感じたのは、作りこまれたステージングよりも、箱負けしない、パフューム3人の確かなライブ力。
初っ端の「コンピューターシティ」から、アンコールの「Wonder2」まで、一糸乱れぬコンビネーション、キレを失わないダンス。
開演前のステージに並べられていた無数のマネキン。
物言わず動かぬそれらに代わり、その後の2時間、ステージ上には歌いっぱなし、踊りっぱなし、躍動するパフュームがいた。
「BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!」は、パフュームにとって、それまでの努力が報われたひとつのギフトだけど、単なる記念碑ではない。
ハタチそこそこの3人の女の子が、1万人の観客をロックし続ける。
その記録映像は字面をはるかに超える、インパクトがあった。

とかなんとか言っときながら、例によって鑑賞中はにやけっぱなし。
特にお色直し後のかしゆかの衣装のカワユス加減は異常すぎて、それ以来釘付けだった。
テレビのモニターにセンサーつけといて、自分の目線を集計してみたら絶対、ゆかちゃんに偏ってただろう。
かしゆかといえば、特典ディスクの「TOKUTeeeeeeeeeeN!!!!!」に収められた、生・JKかしゆかも必見。
観客を向こうにテレながら、ステージの端でうしろ向きに「あのぉ~」だの、「わかんにゃい~」だのやってるゆかちゃんの後姿は、ステージのそれとはまったく異なりつつも、同じく胸をかきむしる何かがある。
振り付けのMIKIKOって人も本当にすごいと思う。
詞世界、音、パフュームのパーソナリティ、どれをも取り込んだバッチリすぎる振り付けのおかげでどの曲見てても飽きないってのは絶対にあると思う。
それに、組み合わせの妙で超複雑、難易度高いってのはあるけど、ひとつひとつの踊りのパーツは割りとオーソドックスだよね。
それ女の子にやらせたら絶対可愛い!ってのを満遍なく散りばめてて、ほとんど全部の曲で「おおっ!」ってなる。
かしゆかばかり見てたせいか、かしゆかの寄りが多かった気がするんだけど、気のせいかな。
でも喋ったらあーちゃんの独壇場だしな。
のっちは元々、センターの時間長いしな。
まあでも、いいわ、パフューム。
本当にいい。
変わらずいい。
いろんな意味でこの「BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!」はひとつの区切り。
このライブから今にいたる半年ちょっとの間にもいろいろと変化はあっただろうし、このあと、「⊿」以降のパフォーマンスがどうなっていくのか、セットリスト考えただけでも楽しみ。
「⊿」リリース後のツアーは「⊿」中心で行くんだろうけど、またどこかのタイミングでこういう、集大成的なパッケージも見てみたいな。

この際、「雑音」に関しては何も言うまい。
宇多丸氏が「タマフル」でおっしゃってたとおり、そんなのどうでもよくなるクオリティの「⊿」を楽しみにしてたら、すでにどうでもよくなったよ。
いよいよ明日、「⊿」は店着日。
当然フラゲでヘビロしますよ。
by blue-red-cherry | 2009-07-06 16:59 | 音楽

【其の五】その後は吾郎の五曲

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クレバの主宰レーベル、くレーベルのレーベルコンピ第5弾、「【其の五】その後は吾郎の五曲」
高校時代からハタチくらいまではFGの追っかけみたいなのをしてたこともあったのだが、我が青春のストリート至上主義、地下潜伏時代に毛嫌いしてたこともあり、キック後期からはほとんど音源を聴けてない。
それでも近年の突き抜け感は異常で、USメジャーアーティストのそれに近いものを感じるクレバ。
青いジャケのに入ってる「成功」をちょろっとだけ聴いたけど、メロもリリックも素晴らしい。
早いとこ、しっかりとソロ音源を聴かないと、と思っているが、まずはこのレーベルコンピから。

過去のレーベルコンピも未聴。
韻踏の2人とクラシックブレイクの上でライム対決をする「マッハGOGO」だけはYouTubeで視聴したことがある。
万人に向け放たれている煌びやかなソロ音源とは一線を画し、自らの周辺メンバーのショーケース、自分のやりたい面子とのコラボ企画、そしてなによりラッパー・クレバのアイデンティティーを前面に押し出したシリーズという印象があった。

で、第5弾はクレバが重用しているトラックメーカー、熊井吾郎が全曲トラックメイキング。
ライナーノーツによると、ベースの熊井トラックに、共同RECでクレバのテイストが加わってエディットされたらしい。
固めのパーツに流れるようなメロ、奥行きのある空間で強弱はっきりした音が鳴り響く作りはクレバのそれと遜色なく、音色は押しなべて美しい。
実験的なサウンドメイクも、広いフィールドで活躍するクレバの血を受け継いでる感がある。

初っ端はいきなり変化球でドラムンベースの「都会陸上」
まさにトラックを駆け抜けていくかのように、トラックの上で軽快にライムするのはクレバとロマンクルー、4MCのマイクリレー。
規則的に打ち込まれる高速ビーツに、夜を想起させるシンセ奏でるメロが響く。
イメージそのまま軽妙洒脱なリリックがハマる。
将絢の低音ヴォイスだったり、エムラスタの暑苦しさだったり、クレバが加わったこと、高速ビーツなこともあり、なんだかリップスライムテイスト。
クレバはソロ作ではとことんそのナルシズムに突っ走り、どこを切ってもクレバだらけ、客演は極力排してるイメージがある。
だからこそこの曲に限ったことではないが、ほかのMCとやることでそのラッパーとしてのスキルの高さが際立つ。
スタンダード、倍速、メロ寄り、とヴァースごとにフロウを変えてるこの曲の巧者ぶりは圧倒的。
それでいて聴こえの良さ、聴き取り易さは誰も及ばない。
やっぱクレバはMCとして一段高いレベルにあると思う。

2曲目の「NEXT LEVEL」は、タイトルどおり明日への一歩を後押しする、前向きなメッセージソング。
メロは適度にセンチメンタルながら、生っぽいドラムが心地よいグルーヴ、ゆったり体を委ねたくなるトラックが気持ちいい。
フレックス・ユナイトも未聴のグループ。
2MCともクレバとは異なった声質、落ち着いたラップでこのトラックへのマッチ具合はバッチリ。
人選勝ちってところか。


個人的なハイライトはシーダを迎えた「good boy, bad boy」
柔らかいメロのトラックでタイトに、エモくラップするシーダと、メロ作りの巧さを見せつけるクレバのフック。
この組み合わせがこの上ないハーモニーを奏でる。
シーダの「街風」での「Technic」も良かったけど、こっちのほうがいいね。
アプローチする立ち位置こそ違えど、ベクトルは同じ。
そんな2人の世間体に向けたリリックも必聴の深みがある。

Lボーカルに、アミダakaエビスビーツと、曲者3者のマイクリレーとなった「無くない!無くない!」は期待通りの遊び心に満ちた一曲。
トラックもエビスビーツの諸作で味わえるような、派手な鳴りと、隙間の多い作り、ラッパーのスキルやメッセージに耳を傾けられる気の効いた変則サウステイスト。
クレバの社会風刺のヴァース、Lのパブリックなヒップホップイメージ斬りも面白いが、アミダの「自称ラッパー」百態をブラックユーモアで描くヴァースが痛烈。

千晴との師弟愛に満ちた「忘れずにいたいもの Remix」に関しては割愛。
同じくライナーにあるが、録音エピソード込み、リリックもそうだし、クレバとくレーベル周辺を追いかけてるファンへのボーナスっぽい匂いがするし、そこで楽しむべきものっぽい。
扇情的な美しいメロと、クレバのフックがこれまた秀逸なのは変わらない。

5曲入り1,500円のEPとしては出色の出来。
バラエティに富んだカラフルなメンバーの好演を楽しみつつも、やはりクレバのパフォーマンスに耳が引っ張られ、より彼の作品への思いを深くした。
それとは別に、熊井吾郎のトラックの良さもしっかりと心に残った。
思えば日本人のトラックメイカー(ラッパーもだけど)で、こう、苗字と名前でやってる人とかほとんどいないよね。
そこでなんとなく色眼鏡で見ちゃうところもあったけど、バッチリヒップホップしてる。
熊井吾郎、その人の動向も楽しみになってきた。
by blue-red-cherry | 2009-07-04 15:18 | 音楽

THE LAST KISS

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やっぱりわかりやすいのがいい。
もともとリリック追ってないし、深読みできないし、ならば鳴りの良さ、素直にノれるのがいい。
どメジャー感たっぷり、白バックに革ジャンで決めたジャケとは裏腹に、ジェイダキスの新作「THE LAST KISS」は、多くの曲がフロア向け、首振って、体揺らしてナンボのわかりやすいアルバムだ。

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Who's Real


Grind Hard

ひと月前くらいにHOT97のストリーミングを知り、それ以来は仕事中、しばらくつけっ放しだったんだけど、向こうのラジオ局は相変わらず本気のヘビーローテーション。
1時間に同じ曲が2回かかることなんてざらで、その頃だとドレイクとか、リル・ウェイン&ヤング・マネーとか。
途中からは例の「D.O.A」が解禁になって、ガンガンオートチューンな曲と、それのアンチが交互にかかりまくるっていう。
そんな流れの中で健闘してたのがこの「THE LAST KISS」随一のヘッドバンガー、「Who's Real」
ラフ・ライダーズからの盟友にして、長きに渡りフロアを揺らすスウィズ・ビーツのトラックだ。
けたたましいホーンと、どたばた走るブレイク、作りは至ってシンプルだが、スウィズの煽りがクセになる。
この曲に限ったことではないが、ジェイダの「アヒャァ!」という怪鳥音ばりの嬌声も最高潮。
お約束のポッセカットリミックスはDMXにイヴ、ドラッグオンらが名を連ねたラフ・ライダーズリユニオン仕様として既に話題だが、ベース厚め、ウワモノ抑えたマイナーチェンジがいまいちで、こういうのって得てしてそうだけど、トラックはオリジナルのほうがいい。
しかし派手さでいくと、「Who’s Real」の次の曲にあたる「Grind Hard」のほうが一段上のレベル。
バリバリのシンセ音がフックでは荘厳に、ヴァースでは攻撃的になりまくり。
ベースも終始広げっぱなし、ドラムも硬く、もこもこしてて耳に響く。
しかもフックを歌うはメアリーJブライジという磐石のフォーメーション。
ありがちっちゃあありがちな音の組み合わせだが、やったもん勝ち。
この振り切れ具合は一時期のジャスト・ブレイズやネプチューンズに通ずるものがある。
つかこの曲が一番好き、超ヘビロ中。
なぜかチャイナタウンなビデオが謎なリードシングル「Can't Stop Me」はいつぞやの勢いあるロカフェラ、フリーウェイあたりのトラックを思い出させるミッドナンバーで、これもフロア受け良さそう。

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Can't Stop Me

そういやネプチューンズの仕事ぶりもまずまず。
アフリカンなドラムブレイクに、変なデジ音を鳴りっぱなしでのっけといて不穏な空気を作って、ファレルが囁くっていう、ある種王道のファレル節が味わえる「Stress Ya」
派手目な曲が並ぶ中で、いい感じにクールダウンできる。
たぶんあいつが良かったとか、オマエがいちばんいい的なことを歌っているであろうと思われる「Rocking With The Best」はボビー・ヴァレンティノがフックをしっとり歌い、サマータイムっぽくピロるウワモノでセクシーな雰囲気を醸し出す、これまた王道ネプチューンズサウンド。
「Excuse Me Miss」とか「Beautiful」とか、女子モノでうまくいくと最高に気持ちいいの作るよね、ネプチューンズ。
2曲提供でこのクオリティは、健在ぶりを示すに充分だったと思う。

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By My Side

マジで佳曲ぞろい。
ダンサブルでベースが引っ張るアップ、「By My Side」はDJクイックっぽさすら覚えるスムースな出来。
ニーヨの歌いっぷりとフックの上げ方も相俟って、どこかマイケルを思い出さざるを得ない。
基本的にパーツの鳴りは太く、ファットなんだけど、ウワモノはキラキラしてて、華やかなトラックが多い。
ゴーストフェイス&レイクォンのウーブラザースをフィーチャーした「Cartel Gathering」も、サビなし、男のマイクリレーなのに、ウワモノの鳴りがキラキラしててどこか爽やか(でもラップは重量級)。
同じことはナスとの競演が実現した「What If」でも言える。
最近のUSヒップホップに感じている聴きやすさの追求を、ここら辺にも感じる。
メジャーアーティストは意識的にリスナーを広げているというか、やっぱり本場の層の厚さというか、メインストリームはアメリカの音楽自体のメインストリームだから、必然的にそうなるわな。

そういう意味ではまだまだ血気盛んなキッズたちを狂喜させるであろう、ガチガチの、昔でいえばリル・ジョンのクランク風なヘヴィなサウンドもあったりする。
ヤング・ジージーとハスキーヴォイス同士、サシで掛け合う「Something Else」は、重厚なギターが鳴り響き、シンコペビートが乱れ打たれ、ズシっと重い。
ボートラ扱いの「Death Wish」ではリル・ウェインをゲストに迎えている。
こちらはドラム、ベース、一発の強度がハンパなく、その残響音と、不穏な金属音でダークな世界を演出。
トラックがシンプルだから、ジェイダとウィージーのラップも際立ち、特にウィージーはいつにも増して扇情的なヴァースがカッコいい。

ビギー映画のサントラに収録された「Letter To B.I.G.」もおまけっぽく聴けたりして、こう追ってみると実に豪華なアルバムだ。
音の面では踊れる曲、気持ちいい曲、ハードな曲、バラエティに富みつつそれぞれ掘り下げられてて薄っぺらさは微塵もない。
一方で全体的に明るめなテイストというか、作りは鮮やかで、いい意味で敷居が低い。
このアルバムを万人受けしそう、と感じるのはヒップホップ中毒者の曲がった見解、でしょーか。
ソロ3作目、間違いなく最高傑作デフ。
by blue-red-cherry | 2009-07-02 12:12 | 音楽

CHAMP ROAD

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リリースの量、質、ともにかつてないほどの活況を迎えている日本語ラップシーン。
これだけ幅が広がると、リスナーからすれば選択肢がたくさんあって嬉しい限りだが、やってるほうはどう受け入れられていくのか、突き抜けるために何をすべきなのか、悩ましいところだろう。
そういう意味では、例えばSCARS、CCG周辺のように、ひとつ主流となっているところは相乗効果も期待できる一方で、突き抜けるにはひとつ抜け出た何かが必要で、競争も激しい。
逆にその主流というか、今を切り取って語られた際の文脈に乗らない、独自路線で尖るというやり方も、異端にしてスマートだ。

ドスモッコスの3rdアルバム、「CHAMP ROAD」
この作品はハッスルハードなストリート臭漂う日本語ラップとは完全に一線を画し、グループの出自であるサウスサイドニッポン、九州ならではの言語を織り交ぜて尖り、また、音の面においてもひたすらに「ファンキー」というか「ファンク」であることを貫くことで、ほかにはないオリジナリティーを獲得している。
そしてその変化球なライム、フロウとトラック、どちらもクオリティが高く、ポジティブなヴァイブスに満ちた作風と相俟って、長く楽しめそうな一枚だ。

餓鬼レンジャーのポチョムキン、ヴォルケーノ・ポッセのケンイチロウ、それにDJのモーリキの2MC+1DJ。
結成は餓鬼レンの1stに収録された衝撃の九州弁マイクリレー、「ばってんLINGO」がきっかけらしい。
懐かしい。
あれ、好きだったなあ。
「ばってんLINGO、ばってんLINGO」って力強くうねるケンイチロウの流れるフロウが新しく、九州、日本のサウスサイドからの登場ということと、そのユーモア溢れる雰囲気もあり、リュダクリスみたいな存在になったら面白いなあ、なんて思ってたっけ。
餓鬼レンもそういえば、インリンをビデオに出したあたりはチェックしてたけど、1st以外はあまり記憶にない。

久々に聴いた2MCのラップは、多少声質に変化を感じるが(特にポチョのほうは餓鬼レンの頃の奔放な感じが記憶にあったが、歳を重ね熟成された、声変わりに近いものを覚えた)、硬軟、速遅、自在のファンクトラックに乗り遅れることなく対応し、さらに自分の色を加えて乗りこなす。
オリジナリティがそのまま高いスキルの証明となっている。
時折差し込まれる九州弁は彼らのアイデンティティーのひとつだが、決してそれに偏ることなく、それに頼ることもなく、標準語と混ぜながら小気味よい鳴りのよさを実現している。
しっかり日本語として聴き取れるレベルのライミングだが、澱みなく流れる聴こえの良さは絶品で、その聴こえの良さが、ゲストで迎えた海外のMCとのマイクリレーを違和感なく聴かせているのかもしれない。
語尾で上げ下げ、伸ばしに自在な九州弁はその点でアドバンテージになっている。


トラックがまたいいんだ。
ファンク、ファンクいわれてるけど、確かにファンク以外のなにものでもない。
DJモーリキを中心に数名のトラックメーカーが手がけているが、みなモッコスマナーのファンク色を念頭に製作しているようで、アルバム全体の音色はカラフルながらも統一感がある。
男気を感じるギターリフにぶっといベース、バンド感漂うドラムの乱れ打ちが初っ端からファンクワールドに誘う「Go Go Spark」の分かりやすさは直球のファンク。
かと思えば、尺八ライク(つか尺八?)な笛の音が短く速く刻まれるループが強烈にオリエンタルで、どこかオシャレで音楽性が高い「めふっ!!!」は、ダンサーも喜びそうな超速ブレイクビーツ。
ビートだけ聴いてたら、非ヒップホップな方々も素直に乗れて、楽しめそう。


この完成度高いファンクトラックをさらに濃く、いなたいヒップホップに昇華するのはやっぱり、2MC。
掛け合いもそうだけど、フックのユニゾンはジュラシック5ばりのヒップホップマナーが伝わってくる。
このマナーに沿ったフックってのもまた、海外勢との競演を自然な形にする工夫のひとつだよね。
エイリアンとエイジアンで踏むフックで曲のコンセプトをきれいにまとめた「Alien」にはクアナムMCズからリリックス・ボーンをフィーチャー。
この曲も走り気味の速いトラックに心地よいベースがうねり、小気味いいギターリフが刻む、シンプル極まりないファンクループ。
歌心アリのリリックス・ボーンらしく歌い上げるフック、彼の擦れ気味の声が、曲を味わい深いものにしてくれている。
カナダのMC、アブドミナルを迎えたその名も「Drum & Bass」がまた、渋い。
まさしくドラムとベースだけで構成された曲では、3MCの三様のフロウをこれでもか、と楽しめる。
曲の速さに合わせてテンポよくマイクをつなぐリレーは、さながらバンドと即興でセッションしているかのような臨場感がある。
フックにヴァースに、掛け合いが多いものの、英語と日本語が巧みに散りばめられており、違和感はまったくない。
これは総じていえることだが、勢いある楽曲ながら構成は実に練られているものが多い。
だからこそのマイクリレー。
素晴らしい。

ホーンやエレクトーンの音が夕焼けを想起させるセンチメンタルなメロ、ポジティブに迎える次の日を歌った「Brand New Day」
始終、ビブラフォンの高音が鳴り響き、気持ちいいグルーヴを生み出す「Indigo Days」もまた、音色に合わせたバッキンザデイ的リリックがハマる。
音と言葉のバランスがいい。
日々繰り返されるくだらなさをお得意のユーモア満点のリリックで巧みに表現した「いつもの」も、エビスビーツならではのヘンテコなトラックにぴったり。
ぼんくら極まりない夢想を綴ったファーストヴァースはゆったりとたラウンジテイスト、転調して一気にヒートアップしたラテンサウンドが鳴るセカンドヴァース、昼の部と夜の部でガラリとテンションを変えるビートが楽しい「悠々クレイジーランド」、これまた音、言葉ともに遊び心があっていいなあ。
Ahhcoなる女声シンガーがリン・コリンズばりに歌い上げる「On My Way」もJBを彷彿とさせるファンクサウンドでハイライトのひとつ。
ラップと歌、ダブルで聴かせるコマチの好演が光った「Friday Night」は前作収録のものをバンドによる演奏で引きなおしたバージョン。
ボートラ的扱いだが、これまた秀逸なファンク、当然バンドとの相性はいいわけで、これがあることで作品の価値がグっと高まっている。

あれ、思ったより気に入ってるみたいだなww
洗練された末の傑作のようだが、ファンクは荒削りなもの、乱暴くらいがちょうど良かったりもする。
2ndも聴いてみようと思う。
ファンキーな日本語ラップはこれ、モンキーでもベイビーでもない、マジなファンク!
by blue-red-cherry | 2009-06-25 21:18 | 音楽

Back on My B.S.

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日米もメジャーもインディーも関係なく、ここ最近、ヒップホップのリリースラッシュが続き、その多くが高いクオリティを保っており、リスナーとしては嬉しい限り。
音楽を売り物にすることが難しいこの時代に、心から尊敬と感謝の念を送りたい。
パッケージでもダウンロードでも、リスペクトといくばくかの金を送ることしかできないが、せめて。

バスタ・ライムズの新作、「Back on My B.S.」
とにかく精力的に作品を出し続けている印象が強く、8枚目のソロアルバムというのを聞いてえらく少なく感じたんだが、前作「BIG BANG」からは3年、その前の「IT AIN’T SAFE NO MORE」との間では4年も空いていた。
ここ最近は寡作の人、だったんだなあ。
まあ元祖だみ声、がなりも変化球も得意なキャラ立ちMCなため、客演はひっきりなし。
個人的にも過去最高傑作だったと思っている「BIG BANG」を聴き続けていたので久しぶりという感じがしない。

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Arab Money

それでも待ちに待った新作、大きな期待をもって聴いた…んだけど、期待しすぎたかな。
「BIG BANG」はやっぱり不世出の傑作なのかな。
あれへの思いはここに書いたので今更書くまでもないが、曲のバリエーション、一曲一曲の粒の大きさ、どちらをとっても前作に比べると落ちる。
クラブとか行かないからかもしれないが、バンガーだという「Arab Money」もピンとこなかった。
オリエンタル風味ならばパンジャビMCとジガのあれには遠く及ばないし、シンセと重めのベース、クラップ音という構成のデジタルサウンドも一昔前のネプチューンズっぽくって、今更なぜこれが流行るのか。
アラブをトピックにした歌詞は断片を拾うのが精一杯だが、確かに面白そう。
PVでのコミカルなダンスも、そのままフロアに持っていけそうな楽しさが伝わってくる。
でもねえ。

本家ネプチューンズトラックの「Kill Dem」も収録されていて、こっちはこっちでなんつうか、手抜き感が拭えないワンループ。
単純な太鼓とシンセの組み合わせはいつものそれなので安心して体を揺らせられるが、いつもの、の粋を出ない。
全体的にちょっと古いんだよなあ。
古いというか、中途半端なのかな。
盟友・DJスクラッチが手がけたイントロ流れの「Wheel Of Fortune」、スキット流れの「I'm A Go And Get My...」、どちらもクラシックなドラムブレイクをバラして打ち込んだループがベースのシンプルなトラック。
前者は速めのファンクサウンド、後者はデジタルなウワモノを被せながらこちらもファンク魂を感じるダウンビート。
たぶん言葉が分かれば楽しめそうな気がするんだけど、耳で、鳴りで聴いてる身としてはやや退屈な出来。

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Hustler's Anthem '09

今をときめくスターを招いたいくつかの曲では、ゲストを迎えたことで生まれた変化が楽しませてくれる。
Tペインの肩の力が抜けたフックがクセになる「Hustler’s Anthem ‘09」はアルバム中でも随一の軽快なナンバー。
バスタのラップも遊び心が効いてる感があり、ゆるく体を揺らしたくなる。
対照的にリル・ウェイン、ジェイダキスを迎えた「Respect My Conglomerate」は骨太なマイクリレー。
怪しげな女声のイントロとフック、不穏な音色のウワモノがそれぞれ中毒性高い。
ゲストの2MCの声もダークな雰囲気にマッチしていて、豪華メンツながらまとまりよく、完成度高い一曲。
エイコンが歌い、T.Iがラップで援護射撃する「Don't Believe Em」は昨今のメジャー感ありまくりサウスサウンドで、素直にカッコいい。
クール&ドレによるトラックは、ベースにあるシンコペなリズムと、乱れ打たれるドラムがサウス発の流れを汲んでいるんだが、サビに向かう高揚感と、ストリングスやギターを用いて盛り上げるフックの上がり方は、この手のサウンドが今もっとも熱く、サウスを越えたグローバル・スタンダードな鳴りを聴かせていることを感じさせる。
一転して静かに時を刻むビートに、物憂げなピアノループ、その上でしっとり聴かせるジェイミー・フォックスの歌ヴァースから入る「Decision」
バスタのヴァースを挟んで最初のフックはクイーン、メアリーJブライジが力強く歌い上げ、再びバスタヴァース、2度目のフックはジョン・レジェンド!
空けて3つ目のヴァースはコモン!
なんつう豪華さ、そしてバッチリな人選とトラックのマッチング。
しっとり、締めにはもってこいなのに、なぜかこのあとディスコティークなエレクトリック四つ打ちチューン、「World Go Round」が続くのは実にもったいない。
曲自体は悪くないんだけど、蛇足じゃねえ?

ゲストを配した曲でも、ずしりと重いドラム&ベースとギターが奏でる泣きのメロが美しく渋い「Sugar」あたりは、勢いだけじゃないバスタの魅力が味わえる。
走り気味のトラックにヴァース、フックと抑揚をつけたバスタ独演、「Shoot For The Moon」もいい。
でも全体としては散漫。
派手に曲単位で尖らせたコンピ的な作品として楽しむには、つまらない曲が多いし、かといって全体に統一感は感じない。
曲単位にも佳曲ぞろい、アルバム全体のイメージも統一されていた「BIG BANG」はやっぱり秀逸だったなあ。
期待が高すぎた。
by blue-red-cherry | 2009-06-15 15:25 | 音楽