Hard to Earn

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ギャングスター、DJプレミア、グールー、それぞれクラシック曲数あれど、アルバムとしての最高傑作は文句なしに「Hard to Earn」
前作「Daily Operation」はネタ感の強い曲から、フリップ・チョップを前面に押し出すスタイルへの過渡期(ネタより)だったと思うが、「Hard to Earn」ではいよいよミニマルな音、ムダのない音が研ぎ澄まされ、のちに生まれるジェルーやグループホームのクラシックへの道筋が見て取れる、もとい、聴き取れる。


Code Of The Streets

92~94年あたりのクラシックは一様にスキットやイントロ、アウトロも素晴らしかったりする。
そもそも尺の短いそれらの曲だけに、ワンループのインパクトがより求められ、逆に3分、4分の曲だと五月蝿かったりするネタでもインタールードならアリ、と受け取ってる。
「Hard to Earn」におけるイントロは、メロと呼ぶにいたらないギターのリフのループで不穏な音色を奏でる。
それはまさしく、ひっちゃかめっちゃかに鳴るフック、いや~な残響音を引っ張るヴァースと、おそろし系な「A Long Way To Go」のイントロダクションに相応しい。
続くクラシック、「Code Of The Streets」もおなじみのストリングス、これ自体ホラーチックなメロだし、このつかみの流れが実に素晴らしい。
どちらの曲にもいえることだが、既にこの時点でプリモのロマンチックなスクラッチによるフックは完成されており、さらに続くバリエーションの豊富さは今聴くとただただ感嘆。
いなたいビートに短い鐘の音、シンプル極まりない「Brainstorm」、こちらも機械的な音の鳴りがひたすらループする「Tonz O Gunz」、似た感じの曲を並べながらも疑念や物足りなさがないのはスクラッチを含めたパーツの打ち方、組み方の成せる業で、このグループにはその辺の構成力の高さを、それこそアルバムの曲順とかでも、感じる。


DWYCK

しかし名曲揃い。
ザ・ソウルという感じの黒いイントロに始まり、その後のワンループもギター、ドラムともにめっちゃ黒いダウンビートの「The Planet」から始まる中盤戦はハイライトだらけ。
遅めのビートにグールーのラップ、プレミアのスクラッチとも映える。
ナスのシャウトから入るスキット、「Aiiight Chill」はある意味もう、曲。
誰が誰か、全部はわからないけど、ラストでギャングスター・ファウンデーションをレップして、次の「Speak Ya Clout」に繋げる流れは言葉の意味がわからなくてもバシっとヤラレますわ。
「Speak Ya Clout」のヤバさは今更言うまでもない、か。
ジェルー、リル・ダップ、グールーのマイクリレーは「Daily Operation」収録の「I'm the man」ともどもヤバイ。
前段で書いたがこれも、この年代が誇るヤバいスキットを、3ヴァースのリレー形式にして1曲のクオリティーにした、という組み立て上手な印象を受ける。
で、「DWYCK」ですよ。
もはやナイス&スムースですら代表曲は「DWYCK」です、とでもいいそうなほど主体が誰でもいい、有無を言わせぬグッドミュージック感溢れるクラシック。
ヒップホップ界における「GET UP DANCE」的なパーティーチューンとでもいうか。
この時期にここまでシンプルな、クラシックブレイクまんま使いってのも改めて聴くと斬新だったと思う。


Mass Appeal

リル・ダップばかりフィーチャーしてるのをバランスとったか、ナットクラッカーがピンで16ヴァースキックする「Words From The Nutcracker」からは男前、マッチョなナンバーが続く。
ヤングスタズの声ネタスクラッチが数あるプリモスクラッチの中でも図抜けてカッコいい「Mass Appeal」も、その音だけが切り取られたサンプリングソースを聴くと、よくもまあこんな緊張感ある曲に仕上げるな、と感心する。
多少不穏な感じがするくらいがグールーのラップにはよく似合う。
それこそジャズな人、夜っぽい雰囲気が合う。
ファンク色の強い「Blowin' Up The Spot」はその点で後半戦の中では浮くんだけど、ネタを配したブレイクの部分でのプリモのスクラッチの切れ味がハンパじゃない。
で、「Suckas Need Bodyguards」ですよ。
やっぱ強くありたいBボーイズにとって、このズバリなマッチョ賛歌はたまりません。
「Fake MC!」と気勢をあげるフック、下手糞な英語で口ずさんだもんだぜ。
ナットクラッカーとグールーの対照的な高低の声が絡むユニゾンがやべえ。
最後のスクラッチネタ、「I'm not sucka so don't need bodyguards」は男として、嘘でも吹いていたい。
Cold Cutz Deejaysの「Hiphop vs Rap MEGAMIX」でもおなじみの「Now You're Mine」も鉄板。
軽快に鳴り続けるホーンループは無条件にテンション上がる。
ウッドベースで引っ張る「Mostly Tha Voice」、今作イチ、ピアノが映える「F.A.L.A.」(BIG SHUGカッコいい)、と締めはどちらかというと地味目。
でもクロージングには相応しいかな。

通しで聴くとネタ感について、モロ使いとカット・ペーストのバランスがちょうどいい。
プリモの変遷を考えると、そこら辺の感覚でこの一枚がベストに感じる。
プリモという天才、ギャングスターというグループあってのことだが、サンプリング文化の変遷、ヒップホップサウンドの作り方の変遷を考えると、90年代初頭という時代が生んだ、奇跡の一枚なのではないだろうか。
オールタイムフェイバリット。
死ぬまで聴く。
わかっちゃいるけど、こんだけの傑作で億万長者になれねえっつうんだから、「Hard to Earn」とはよく言ったもんだぜ。
by blue-red-cherry | 2008-11-13 19:01 | 音楽
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