クルマもないし、歩くの大好き、散歩人を自認する身としては見逃せなかった「転々」をようやく見た。 劇中で三浦友和演じる福原愛一郎も言っていたが、景色がめまぐるしく変わる東京はホント、散歩向きだと思う。 ビル街から下町まで、広い道も狭い道も、静かに淡々と歩く姿を映した映像は、渋く、温かく、切ない。 一時期、といっても2年ほど髪を伸ばしていたのは、似ても似つかないオダジョーに憧れて、だったという恥ずかしい思い出も今は昔。 相変わらずカッケーは、オダジョーは。 ぶっきらぼうでもクールでも、何でもいいけどスマートなカッコよさに嫌味がない。 起伏がなくても感情を出せるっていう。 特に今回の役、文哉がまた、いろいろと背負ってるバックグラウンドありきながらも、感受性の強い純粋培養系キャラだったからもう、その魅力爆発。 マジハマり役だったかと。 んでそんな文哉と、若い頃はそっくりだったという福原愛一郎を演じた三浦友和もカッコよかった。 「流星の絆」でやってるような太目のオッサンやらせてもガチだけど、どうにもコミックなリーゼントが似合って見えるくらい見事に、ファンキーな役柄を「渋く」演じてみせた。 オダジョー同様、多くを語らないからこそ、言葉ひとつひとつに重みがあるキャラで、これまたピッタリなキャスティング。 不機嫌そうないいヤツ、冷静に見えて熱血漢、そんなキャラをやらせたらこの2人はバッチリでしょ。 映画でこそ若い頃は似てた、っていう設定を与えられてるけどひょっとしたら、役者としても近いものがあるのかもな。 途中から重要なロールを担うキョンキョンと吉高由里子もいい味出してた。 吉高のエッセーだか写真集にキョンキョンのコメントがついてたの、ここのつながりなのか。 どっちもビジュアルいいし、だからこそ振れ幅広いぶっ飛んだキャラ設定のギャップが楽しめる。 キョンキョンが奥さん役の映画、ほかにもありそうだけど、いいわ。 やたら持ち上げられてるのに乗っかりたくないのと、そういうキャンペーン苦手なんだけど、それでも吉高由里子はいい。 あの声、動き、ルックス。 岩松了、ふせえり、松重豊、スーパーの3人衆のコミカルな演技もいい。 インタールード的に入ってきては、物語のテンポを上げている。 一瞬の出演で爆発的な存在感を見せる石原良純や岸辺一徳、「時効警察」な世界観で片付けちゃえばそれまでだけど、ともすればせつなーい物語を温かくしてくれるユーモアの使い方はすごく良かった。 その分、文哉の泣きの場面とか、温かさで包まれてる場面なんだけど切なさが際立ってグっときた。 分かっちゃいるけど安易なハッピーにもサッドにもしないエンディングは、ある種煙に巻かれたような感覚もないではないが、あれでいいんだと思う。 なぜか穏やかな、爽やかな気持ちになれた映画だった。 そして大好きな東京の街を、目的もなくただただ歩きたくなった。
by blue-red-cherry
| 2008-11-19 19:03
| 映画
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