アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない

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「コラムの花道」でおなじみのコラムニスト・町山智浩の「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」を読んだ。
いまさら、なベストセラー。
執筆期間、および発売された時期にはまだオバマ氏が民主党代表の座を争っていた時期で、それを考えると就任式を終えた今、感慨深い気持ちで読み終えた。
なぜならここに記されたブッシュ政権時代のアメリカのいくつものエピソードは、そのほとんどが笑えないジョークであり、できることなら上書きしてしまいたいものばかりだから(笑えるんだけどね)。

タイトルは今のアメリカとその国民がどういうステータスにあるかを端的に表している。
無知、といってしまえば楽だが、そこには知ろうとしない側と知らせることを怠ってる側という単純な構図だけではなくて、湾曲して教えられている事実がいくつも蔓延っていたり、複雑だ。
章立てされて語られる内容は「宗教」、「戦争」、「経済」、「政治」、「メディア」、「大統領」。
不倫騒動でホワイトハウスを去ったクリントンだが、彼は莫大な黒字を残して去っていった。
その遺産を任期中に見事に使いきり、それどころかかつてない負債を抱えさせ、アメリカの国力を著しく弱体化させたブッシュ政権の悪行の数々は章立てされたすべてのチャプターに介在する。
つまり少しも良いことがなかったのだ!
古くから根強くアメリカに残る悪しき宗教論であるキリスト教原理主義は、イスラムのそれを馬鹿にできない根深さで、それを蒸し返すことの愚かさといったら(狂った道徳!狂ったセックス観!)。
今となっては誰しもが知っているイラク戦争の空しさといったらない(取り返しのつかないことの大きさよ)。
信じられない格差社会を生んだ経済政策は、大国への憧れを一瞬にして忘れさせてくれる(社会保障なし、想像を絶する知られざるアメリカ)。
私利私欲で腐りきった政治に、嘘だらけのメディア(Sly Fox!)。
ただし、誰がなっても同じ、という諦め感がないのは救いかも。
長かった暗黒時代を抜けて今、歴史的、初の黒人大統領に対して国民は希望を託しているわけだ。

この本に書かれているようなことは本来、アメリカ人が知るべきことだ。
町山さんは映画や報道をソース(もちろん独自取材もある)にしているわけで、アメリカに住んでいる人は日常的にこれらのことを知りえるのに、知らない(知ろうとしない)。
翻訳されて、アメリカの一般ピープルの目に触れさせてみたい。
そう書いてて自戒の念も生まれる。
他人事だから冷静に怖がれたが、オレは日本の現状を直視できていない。
恐らくこの本に書かれていたようなことは、形や深度の違いこそあれど、我が国ニッポンでも起きていたり、起こり得ることなんだと思う。
そんなの関係ねえ、じゃ済まされない。
ネガるつもりはないけど、ちょっとは考えないといけないかもな。

ここに書いてあることがすべてではない。
鵜呑みにしちゃったらそれこそ、彼の国と変らない。
でも知りえてよかったと素直に思う。
知らなければ何も考えなかったと思うから。
Don’t believe the hype.
by blue-red-cherry | 2009-01-28 11:53 |
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