「ウォッチメン」のザック・スナイダー監督による、同じくグラフィック・ノベル原作の「300」を見た。 「300」のザック・スナイダーによる「ウォッチメン」ってのが正しい時系列だが、それはいいとして、これまた例によって原作は知らない。 wikiを見る限り、史実にしっかりとのっとっていながら、脚色を強めていることも認めているみたい。 確かにあんなにハキハキ英語でしゃべんねーだろっていうそもそもの突っ込みどころこそ、序盤は感じたりするんだけど、圧倒的な映像美と有無をいわさぬめまぐるしい戦闘シーンの連続に、そういうディテールはどうでもよくなったわ。 撮影のほとんどがスタジオ、かなりCGで手が加えられているとのことだが、納得した。 山を見ても海を見ても空を見ても、どこもかしこも現実感がないというか、異世界感が出すぎ。 ロンドンどころじゃない厚い雲に覆われた黒い空の下では、黄金色の稲穂も怪しく揺れる不気味な存在でしかない。 エセ神様のエフォロイが居を構える山頂なんかはモロにファンタジーの域だからいいとして、同じ地球とは思えないほどのデフォルメ。 とにかくいろいろと振り切って描いていた印象だ。 生まれながらにして戦士になるべく運命付けられたスパルタの男。 その成長過程、ガキの頃から戦いの場に身を置き、数々の苦難を乗り越えて一人前の戦士と認められるまでの課程、言ってみれば幼少から義務教育が終わるくらいまでの流れを詰め込んだイントロにすごく引き込まれた。 結果として90%ドンパチやり合ってる作品なんだけど、導入は静かに、かつ重厚な迫力を持って見るものを引き付ける。 続いて戦いへ入る前に描かれるのは、スパルタ男を支える女。 ドンパチを除いた残り10%の内訳で大きな割合を占めるのが、主人公にしてスパルタの王・レオニダスの妃の支えぶり。 この妃役のレナ・ヘディがかんなりお綺麗な方で、濃厚なセックルシーンは正直どきどきするレベル。 だけどその美しさは、男顔負けの強さ、負けん気の強さを見せながらも、王を支えるべく日陰で尽力する凛とした姿があればこそ。 後半、裏切り者の評議員・セロンに文字通りハメられるも、衆目の中、ヤラレたときと同じ台詞を囁きながら剣でぶっ殺したシーンはアガった。 男、いや、漢、漢、漢な120分の中、美しさはもちろん、ストーリーでもアクセントになっていた。 でもやっぱり、この映画はスパルタの王・レオニダスとその僕というか盟友たちの、コアすぎてズルむけの男気譚である。 とにかくこの王様、ブレがない。 国力に雲泥の差をつけられている大国・ペルシャの使者を向こうに、妃と民を侮辱されたことの報いとして「ディス イズ スパルタァッ!」と凄みながら奈落の底に突き落とし、開戦。 国の通例に筋を通して神託を受けるも、理に適わなければ即翻し、多数の同意を得られぬならばと自身が最大限の信頼を置く近衛兵たちとわずか300人の軍勢で、10万人を迎え撃つ。 信頼で繋がれた少数精鋭はみな、子持ちで死地に向かうという徹底された絆。 それを体現しているスパルタの戦闘スタイルが面白い。 体の半分はあろうかという巨大な盾を大きく構え、隣の兵の体を守る形で重なり合いながら進軍する。 実際、ペルシャ軍を前に見せた、受けては跳ね返し、押し返せば斬り込む、重厚で勇ましい歩みはさすが漢の戦い様だった。 無謀に見えながらもしっかりと練られた戦いであるところも、深く楽しめるポイントだ。 ペルシャの王・クセルクセスの度重なる誘惑には目もくれず。 相手を討ち帰せば豪快に快哉を叫び、同胞の死には厳粛に喪に服す。 勇猛果敢、大国に勝らんとする戦いぶりだったが、右腕だった隊長の息子が倒れ、腕利きは片目を失い、傷ついたレオニダスと仲間たちは終ぞ、四方を塞がれる。 この窮状に漢たちは、ついに死地をみつけたりと、最後の最後まで男気を見せ、王が放ったこの言葉、「Tonight, We die in hell!!」! いやあ、狂ってるww でもカッコいい。 全編を貫いた、ちょっと毛色は違うけど油絵のように濃厚なビジュアルは、細部に至るまで凝られていた。 怪しさを演出したペルシャ軍のオリエンタルな装飾もよく出来てたなあ。 こういう時代の象って、ベルセルクじゃないけどもはやモンスターの域(この作品ではあっさり倒されるんだけどねw)。 ゲイっぽいクセルクセスに対し、兜に盾、槍剣と立派にそろえながらなぜかマントの下はパンツ一丁なスパルタ軍のガチムチっぷり、この対比も見ごたえがあった。 史実に基づく熱いストーリーを、必要以上に熱く燃え上がらせるディテールの描き方。 例によって原作のグラフィック・ノベルをかなり忠実に映像化した(だから絵っぽいってのもある)ようだし、また原作手に入れるかな(って「ウォッチメン」も読んでねえ)。 でもこうやって描かれると、そういう時代自体に興味出てくるよね。 今ある歴史スペクタクル漫画を読んでる最中なんだけど、古代ギリシャとかローマとか、その辺の話も俄然興味が出てきてしまった。 知識はいくらあっても無駄じゃないしな。 ごちゃごちゃいろいろ思ったりしたもんだが、いたってシンプルな映画。 生々しい戦闘シーンや、漢すぎる世界観は見るものを選ぶかもしれないが、男気を感じたい向きには300%、おススメです!
by blue-red-cherry
| 2009-05-29 21:56
| 映画
|
検索
カテゴリ
以前の記事
2010年 09月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 最新のトラックバック
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||