Back on My B.S.

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日米もメジャーもインディーも関係なく、ここ最近、ヒップホップのリリースラッシュが続き、その多くが高いクオリティを保っており、リスナーとしては嬉しい限り。
音楽を売り物にすることが難しいこの時代に、心から尊敬と感謝の念を送りたい。
パッケージでもダウンロードでも、リスペクトといくばくかの金を送ることしかできないが、せめて。

バスタ・ライムズの新作、「Back on My B.S.」
とにかく精力的に作品を出し続けている印象が強く、8枚目のソロアルバムというのを聞いてえらく少なく感じたんだが、前作「BIG BANG」からは3年、その前の「IT AIN’T SAFE NO MORE」との間では4年も空いていた。
ここ最近は寡作の人、だったんだなあ。
まあ元祖だみ声、がなりも変化球も得意なキャラ立ちMCなため、客演はひっきりなし。
個人的にも過去最高傑作だったと思っている「BIG BANG」を聴き続けていたので久しぶりという感じがしない。

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Arab Money

それでも待ちに待った新作、大きな期待をもって聴いた…んだけど、期待しすぎたかな。
「BIG BANG」はやっぱり不世出の傑作なのかな。
あれへの思いはここに書いたので今更書くまでもないが、曲のバリエーション、一曲一曲の粒の大きさ、どちらをとっても前作に比べると落ちる。
クラブとか行かないからかもしれないが、バンガーだという「Arab Money」もピンとこなかった。
オリエンタル風味ならばパンジャビMCとジガのあれには遠く及ばないし、シンセと重めのベース、クラップ音という構成のデジタルサウンドも一昔前のネプチューンズっぽくって、今更なぜこれが流行るのか。
アラブをトピックにした歌詞は断片を拾うのが精一杯だが、確かに面白そう。
PVでのコミカルなダンスも、そのままフロアに持っていけそうな楽しさが伝わってくる。
でもねえ。

本家ネプチューンズトラックの「Kill Dem」も収録されていて、こっちはこっちでなんつうか、手抜き感が拭えないワンループ。
単純な太鼓とシンセの組み合わせはいつものそれなので安心して体を揺らせられるが、いつもの、の粋を出ない。
全体的にちょっと古いんだよなあ。
古いというか、中途半端なのかな。
盟友・DJスクラッチが手がけたイントロ流れの「Wheel Of Fortune」、スキット流れの「I'm A Go And Get My...」、どちらもクラシックなドラムブレイクをバラして打ち込んだループがベースのシンプルなトラック。
前者は速めのファンクサウンド、後者はデジタルなウワモノを被せながらこちらもファンク魂を感じるダウンビート。
たぶん言葉が分かれば楽しめそうな気がするんだけど、耳で、鳴りで聴いてる身としてはやや退屈な出来。

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Hustler's Anthem '09

今をときめくスターを招いたいくつかの曲では、ゲストを迎えたことで生まれた変化が楽しませてくれる。
Tペインの肩の力が抜けたフックがクセになる「Hustler’s Anthem ‘09」はアルバム中でも随一の軽快なナンバー。
バスタのラップも遊び心が効いてる感があり、ゆるく体を揺らしたくなる。
対照的にリル・ウェイン、ジェイダキスを迎えた「Respect My Conglomerate」は骨太なマイクリレー。
怪しげな女声のイントロとフック、不穏な音色のウワモノがそれぞれ中毒性高い。
ゲストの2MCの声もダークな雰囲気にマッチしていて、豪華メンツながらまとまりよく、完成度高い一曲。
エイコンが歌い、T.Iがラップで援護射撃する「Don't Believe Em」は昨今のメジャー感ありまくりサウスサウンドで、素直にカッコいい。
クール&ドレによるトラックは、ベースにあるシンコペなリズムと、乱れ打たれるドラムがサウス発の流れを汲んでいるんだが、サビに向かう高揚感と、ストリングスやギターを用いて盛り上げるフックの上がり方は、この手のサウンドが今もっとも熱く、サウスを越えたグローバル・スタンダードな鳴りを聴かせていることを感じさせる。
一転して静かに時を刻むビートに、物憂げなピアノループ、その上でしっとり聴かせるジェイミー・フォックスの歌ヴァースから入る「Decision」
バスタのヴァースを挟んで最初のフックはクイーン、メアリーJブライジが力強く歌い上げ、再びバスタヴァース、2度目のフックはジョン・レジェンド!
空けて3つ目のヴァースはコモン!
なんつう豪華さ、そしてバッチリな人選とトラックのマッチング。
しっとり、締めにはもってこいなのに、なぜかこのあとディスコティークなエレクトリック四つ打ちチューン、「World Go Round」が続くのは実にもったいない。
曲自体は悪くないんだけど、蛇足じゃねえ?

ゲストを配した曲でも、ずしりと重いドラム&ベースとギターが奏でる泣きのメロが美しく渋い「Sugar」あたりは、勢いだけじゃないバスタの魅力が味わえる。
走り気味のトラックにヴァース、フックと抑揚をつけたバスタ独演、「Shoot For The Moon」もいい。
でも全体としては散漫。
派手に曲単位で尖らせたコンピ的な作品として楽しむには、つまらない曲が多いし、かといって全体に統一感は感じない。
曲単位にも佳曲ぞろい、アルバム全体のイメージも統一されていた「BIG BANG」はやっぱり秀逸だったなあ。
期待が高すぎた。
by blue-red-cherry | 2009-06-15 15:25 | 音楽
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