THE LAST KISS

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やっぱりわかりやすいのがいい。
もともとリリック追ってないし、深読みできないし、ならば鳴りの良さ、素直にノれるのがいい。
どメジャー感たっぷり、白バックに革ジャンで決めたジャケとは裏腹に、ジェイダキスの新作「THE LAST KISS」は、多くの曲がフロア向け、首振って、体揺らしてナンボのわかりやすいアルバムだ。

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Who's Real


Grind Hard

ひと月前くらいにHOT97のストリーミングを知り、それ以来は仕事中、しばらくつけっ放しだったんだけど、向こうのラジオ局は相変わらず本気のヘビーローテーション。
1時間に同じ曲が2回かかることなんてざらで、その頃だとドレイクとか、リル・ウェイン&ヤング・マネーとか。
途中からは例の「D.O.A」が解禁になって、ガンガンオートチューンな曲と、それのアンチが交互にかかりまくるっていう。
そんな流れの中で健闘してたのがこの「THE LAST KISS」随一のヘッドバンガー、「Who's Real」
ラフ・ライダーズからの盟友にして、長きに渡りフロアを揺らすスウィズ・ビーツのトラックだ。
けたたましいホーンと、どたばた走るブレイク、作りは至ってシンプルだが、スウィズの煽りがクセになる。
この曲に限ったことではないが、ジェイダの「アヒャァ!」という怪鳥音ばりの嬌声も最高潮。
お約束のポッセカットリミックスはDMXにイヴ、ドラッグオンらが名を連ねたラフ・ライダーズリユニオン仕様として既に話題だが、ベース厚め、ウワモノ抑えたマイナーチェンジがいまいちで、こういうのって得てしてそうだけど、トラックはオリジナルのほうがいい。
しかし派手さでいくと、「Who’s Real」の次の曲にあたる「Grind Hard」のほうが一段上のレベル。
バリバリのシンセ音がフックでは荘厳に、ヴァースでは攻撃的になりまくり。
ベースも終始広げっぱなし、ドラムも硬く、もこもこしてて耳に響く。
しかもフックを歌うはメアリーJブライジという磐石のフォーメーション。
ありがちっちゃあありがちな音の組み合わせだが、やったもん勝ち。
この振り切れ具合は一時期のジャスト・ブレイズやネプチューンズに通ずるものがある。
つかこの曲が一番好き、超ヘビロ中。
なぜかチャイナタウンなビデオが謎なリードシングル「Can't Stop Me」はいつぞやの勢いあるロカフェラ、フリーウェイあたりのトラックを思い出させるミッドナンバーで、これもフロア受け良さそう。

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Can't Stop Me

そういやネプチューンズの仕事ぶりもまずまず。
アフリカンなドラムブレイクに、変なデジ音を鳴りっぱなしでのっけといて不穏な空気を作って、ファレルが囁くっていう、ある種王道のファレル節が味わえる「Stress Ya」
派手目な曲が並ぶ中で、いい感じにクールダウンできる。
たぶんあいつが良かったとか、オマエがいちばんいい的なことを歌っているであろうと思われる「Rocking With The Best」はボビー・ヴァレンティノがフックをしっとり歌い、サマータイムっぽくピロるウワモノでセクシーな雰囲気を醸し出す、これまた王道ネプチューンズサウンド。
「Excuse Me Miss」とか「Beautiful」とか、女子モノでうまくいくと最高に気持ちいいの作るよね、ネプチューンズ。
2曲提供でこのクオリティは、健在ぶりを示すに充分だったと思う。

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By My Side

マジで佳曲ぞろい。
ダンサブルでベースが引っ張るアップ、「By My Side」はDJクイックっぽさすら覚えるスムースな出来。
ニーヨの歌いっぷりとフックの上げ方も相俟って、どこかマイケルを思い出さざるを得ない。
基本的にパーツの鳴りは太く、ファットなんだけど、ウワモノはキラキラしてて、華やかなトラックが多い。
ゴーストフェイス&レイクォンのウーブラザースをフィーチャーした「Cartel Gathering」も、サビなし、男のマイクリレーなのに、ウワモノの鳴りがキラキラしててどこか爽やか(でもラップは重量級)。
同じことはナスとの競演が実現した「What If」でも言える。
最近のUSヒップホップに感じている聴きやすさの追求を、ここら辺にも感じる。
メジャーアーティストは意識的にリスナーを広げているというか、やっぱり本場の層の厚さというか、メインストリームはアメリカの音楽自体のメインストリームだから、必然的にそうなるわな。

そういう意味ではまだまだ血気盛んなキッズたちを狂喜させるであろう、ガチガチの、昔でいえばリル・ジョンのクランク風なヘヴィなサウンドもあったりする。
ヤング・ジージーとハスキーヴォイス同士、サシで掛け合う「Something Else」は、重厚なギターが鳴り響き、シンコペビートが乱れ打たれ、ズシっと重い。
ボートラ扱いの「Death Wish」ではリル・ウェインをゲストに迎えている。
こちらはドラム、ベース、一発の強度がハンパなく、その残響音と、不穏な金属音でダークな世界を演出。
トラックがシンプルだから、ジェイダとウィージーのラップも際立ち、特にウィージーはいつにも増して扇情的なヴァースがカッコいい。

ビギー映画のサントラに収録された「Letter To B.I.G.」もおまけっぽく聴けたりして、こう追ってみると実に豪華なアルバムだ。
音の面では踊れる曲、気持ちいい曲、ハードな曲、バラエティに富みつつそれぞれ掘り下げられてて薄っぺらさは微塵もない。
一方で全体的に明るめなテイストというか、作りは鮮やかで、いい意味で敷居が低い。
このアルバムを万人受けしそう、と感じるのはヒップホップ中毒者の曲がった見解、でしょーか。
ソロ3作目、間違いなく最高傑作デフ。
by blue-red-cherry | 2009-07-02 12:12 | 音楽
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