![]() ![]() パフューム、「⊿」。 一聴して最初に感じたのはアルバムとしての完成度の高さ。 文字通り、「⊿」の音の世界に飛び立つような広がりのあるデジタル音に引き込まれるイントロの「Take off」から1曲目の「love the world」。 カウントダウンを経て、一分の隙もなく、ピッタリ曲のケツと頭を重ねてくる、徹底された曲間の作りこみにその意気込みがうかがえる。 さらに後半でも、「The best thing」から、「Speed of Sound」への切れ間のない繋ぎぶり。 コンマ秒単位で計算し尽くされたマスタリングの妙。 淀みないスムースな流れは熟練のDJミックスのようであり、曲曲を聴かせる一方で、アルバム全体の流れが非常に重要視され、作りこまれた作品だという印象を受ける。 事実、このアルバムに関しては、どこかを抜き取って聴く、という行為にいたらない。 「Take off」から始まり、「願い(Album-mix)」まで、通して聴くことが正しい聴き方であり、それが今のところ一番しっくりきている。 テクニックの部分は置いといて、アルバムの並び、曲順も例によってよく練られている。 「love the world」、「Dream Fighter」と、「GAME」から「⊿」までの間を繋いできてくれたシングル群が、安定した鳴りを聴かす前半。 夏フェスや武道館、パフュームの精力的な活動がフラッシュバックする。 と、ピースな流れで始まったアルバムを転調させるのが「edge(⊿-mix)」。 病的にクセになるミニマルなデジタルサウンドのループと、よりパーツ的に、衝撃的なリリックを無機質に歌うフックが「love the world」カップリング収録時から話題だった異色の楽曲が、爆発的に存在感を高めて登場した。 ベースやギターの音圧は前出バージョンとは比較にならないほど分厚くなり、打ち込みひとつひとつの硬さ、パターンも豊富で、音圧がとにかくハンパない。 「GAME」で言うところの「GAME」、ちょうど出番も同じくらいか。 挑戦的で先鋭的、パフューム⊿というか、ystk⊿の真骨頂。 この並びで「NIGHT FLIGHT」。 既報通りの80'sテクノポップ、駆け抜けるエレクトロなメロの洪水。 ウワモノの適度にエキゾチックなメロのイメージはまんまYMO、ただしベースはブリブリystk仕様。 はちきれんばかりにキュートな3人の歌も加速気味で、初回盤特典のDVDに収録されている代々木ディスコ時のライブ映像が証明しているように、ライブ映えがいい。 展開含めかなり派手なので、シクシクほど長く聴けるかはわからないが、アルバム用のボムをしっかり用意してくるところはさすがだ。 で、一つ目のハイライトを越えたあとの3曲がまた、刺激が強い。 冷水、熱湯、冷水と交互にかけてはち〇こを腫らした小学生時代の銭湯での出来事を思い出した。 まさに冷や水掛けられたかのような、突き放された気持ちにさせられる「Kiss and Music」。 ミッドテンポなR&B調のナンバーといえば「マカロニ」を思い出すが、それとは180度違う世界観。 夜だ。 オトナだ。 「コルクを開けて酔いに揺られて 勇気ないのね 踏み出せないの? ねえ」 って、ちょっとぉ。 なんつうか、恐らく個人的にこういうのを求めてなかっただけに刺激、いや衝撃が強かった。 ベースが引っ張る、ブラックネスに満ちたコード進行、うーん。 こういう曲いるのかなーって思ってたら、「Zero Gravity」。 のっけからかしゆか濃度が高い、ふわふわキッチュで柔らかい歌声と音色。 入り口を抜けた先はハウスのりなグルーヴが心地よいトラック。 歌詞も恋する女子の背中を押すようなポジティブさで満ち溢れていて、「Kiss and Music」との恐ろしいまでのコントラスト。 「アンタ、ダメね」 「ほら、キミならできるよ」 ステレオで天使と悪魔に囁かれているようなこの並び、確信犯的にystkに弄ばれているような感覚に陥る。 トドメが「I still love U」。 決して叶わぬ恋への想いを拭い去れない女心。 マドンナやカイリー・ミノーグなんかが歌いだしそうなキラキラしてて、どこか切ない80'sポップスのノリ。 奏でるメロは相田翔子と鈴木早智子が出てきて歌ってもおかしくなさそうな、これまた80'sなJ-POP・歌謡のテンション。 ほんのり甘く、たっぷり苦い、美メロナンバーのドキムネ感はいまだかつてないレベル。 この3曲の並びで味わえる悦びとダメージは絶大で、トドメに強烈な完成度を誇るISLUを喰らい、いよいよ「Complete best」収録曲との本格的なお別れも覚悟しなければいけないと、身の縮む思いがした。 一転アップテンポに戻り、スタンダードながらもダンサブルな、らしい「The best thing」で安心させられる。 間なしで繋ぐ、ほぼインスト曲の「Speed of Sound」は客いじりにもってこいで、ライブでその真価を発揮してくれそう。 「ワンルーム・ディスコ」も同じく、安心感を覚えた。 あの攻撃的なイントロから、懐かしいリズムのダンストラックに変わるあの流れは慣れ親しんだパフュームのそれで、シングルの時点では結構面白いな、と思ったが、中盤の心揺さぶる展開を経た今となっては、安心感が先立った。 「願い(Album-mix)」は見事なアレンジ。 これも全体のトーンあってのアレンジだと思うが、一枚通じてダンスサウンドを貫いたアルバムの締めとして、骨抜きのアコースティックじゃ締まらない。 ドラムの強度を挙げたことで、より聴かせる仕上がりになっていたのでは。 緻密に計算し尽くされている気がするんだよね。 アルバム全体のトーンに始まり、曲と曲とのつなげ方、並びには歌詞や意味的なものから、曲間の秒数など技術的なところまで、すべてがアルバムそのものの統一感を高め、それ自体の完成度を高めている。 たぶん、これは最初から絵がないとできない芸当であり、やはりプロデューサーの存在が大きいだろう。 ましてや「GAME」以降大忙しなパフュームの3人にここまで作りこんだ物作りは、アイデア出しのレベルでさえ不可能に近い。 だからね…正直、このアルバムはystkのアルバムに近いんじゃないかなって思ってしまったわけですよ。 実際、3人のヴォーカルの記号化は、間違いなく進んでないか? モノによるけど、例えばISLUなんか、声のエフェクトのかけ具合もいままでより強くかけられているように聴こえるし、どのパートが誰なのか、判別がいつになくしにくい。 それでもパフュームの3人のアルバムだから成り立っているものであることも間違いないと思う。 「The best thing」~「Speed of Sound」のくだりもそうだし、恐らくライブというパッケージも見据えて映えそうな作りの楽曲も多い。 ファンであれば、聴きながらにしてそういうシーンを描くわけで、そういう聴き方ができるのりしろはある。 だからこのアルバム、パフュームの「⊿」としてのポテンシャルはライブを見てはじめて正当な価値を知り得るものなんだと思うんだが、このCDアルバムとしての完成度の高さがどうしても、今の時点では強烈なインパクトがある。 優れたプロデューサーの手腕が存分に発揮された一枚だ。 弄ばれてる感があったり、いろいろ心が揺れるアルバムではあるが、曲単位でのクオリティは引き続き、ブレることなくハイレベル。 どれも楽しく聴ける。 「TSPS」のような甘い作調が減りつつあるのは、寂しいようで頼もしい。 うまく溶け込ませてはいるものの、シングル曲は少し、浮いて聴こえる。 恐らく、シングルなしでアルバム制作、という流れが許されるのであれば、さらに研ぎ澄まされた完成度のアルバムを作ってきそうな気がする。 音源だけで感じ取れるパフュームのパーソナリティは明らかに減退していると思う。 しかし、一方で音楽性の高さはより、幅を広げ、質を深めている。 この「作品はマニアックに」、「ファン心理はライブで満たす」というスタンスがいつまで続くのか、持つのか。 「⊿」以降は、「GAME」以降よりさらに難しく、楽しみな季節になりそうだ。 うわ、あーちゃん、かしゆか、のっち、とか、そういうワードが全然出てこなかった。 でもそういうアルバムなんだと思う、うん。
by blue-red-cherry
| 2009-07-21 02:04
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