More Grey Hairs

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ボストンからの安定供給には頭が下がる。
レックス、08年のクラシック「Grey Hairs」から間髪入れずに放たれた「More Grey Hairs」も高値安定のクオリティ。




相変わらずボストンの同胞、スタティック・セレクターと絡んだ仕事の出来がいい。
タイトルそのままテレビにラジオ、DJにオレの音楽をかけろ!と歌う「Play My Music」
あったかソウルフルな音色に延々繰り返す「Play My Music」という声ネタ、フックでは懇願するように優しく問い掛けるレックスの下手ウマな歌がツボ。
3rdヴァースでも歌われているけど、スカイズーにターマノロジー、サイゴンとここ周辺のラッパー・トラックメイカーたちの精力的な活動は嬉しい限り。

くぐもったベースがうねり、細かく刻まれるハット、ドラムブレイク、フックのホーンとジャジーなトラックが渋い、「killaz On Wax」もいい。
ここまで色濃くジャズっぽさが出るのも、彼らにしては珍しく聴こえるが、しっとり聴かせるトラックにアグレッシブにまくし立てるラップとのミスマッチが意外な相性。

今更確かめるべくもなく、相性のよさを見せつけるレックスとスタティック・セレクターのボストンコネクションだが、出色なのは「Year Of The Showoff」か。
背中で語る男の世界を漂わす、泣きのサンプリングに硬めのビート。
跳ねるようにフロウするレックスのライム。
「You don't know? You better ask somebody」と、故ビッグLの有名なラインをこすったフックもシビレる。
ネタ感、ソウル、ファンクの要素をベースにしたスタティック・セレクターのトラックは数打てば打つほど深みが増してきた気がする。
最新鋭に進化していくソウル・ファンク・ヒップホップがカニエならば、古き良きを今の時代に体現しているのがスタティック・セレクター。
ここにオーソドックスかつ、引出しの多いフロウ巧者、レックスのラッピンがハマる。
こと聴こえの相性だけでいえば、レックス>ターマノロジーだよな。



スタティック・セレクターとのコンビネーションだけでおなかいっぱいだが、ほかにも好曲、目白押し。
プリモ御大がぶっりぶりのファンクネスを注入した男のワンループトラック、「Cloud 9」
スキルズと並ぶ系譜にあると思う、レックスの張り付き、粘着系の声を味わうにはこういったシンプルなトラックがいい。
ヴァースごとにライミングの仕方はことごとく変わり、そのスキルの高さは聴こえだけで充分把握できる。
リード・シングルっぽい「System」はDJ GIジョー作。
GIジョーってキッズ・イン・ザ・ホールとかやってる人だよね。
レックスのヴァースでも「back to the 90's」なんてリリックが出てくるけど、ホーンが華麗に鳴り響くいかにも90年代調のサンプリングサウンドで、あの時代の空気がバッチリ出せてる。
三十路Bボーイズは絶対に気に入るはず。


おっと、この調子でいくと例によって全曲語ってしまう。
盟友ターマノロジー、スカイズーとドープサウンドの上でマネートークをディープにかます「Money On The Ave remix」もひとつのハイライトだが、ここはひとつ、最後に「Dear Winter」を。
奥行きのあるストリングスに、ハンドクラップ的にビートを刻むミディアムナンバー。
なんの変哲もない、ヒップホップだが、それがいい。

もちろん意味はわからないんだけど、端々にビギーや2パックが出てきたり、この人のラップは英語の聴き取り易さもそうだけど、言ってることもわかりやすそう(に聴こえる)。
言葉が違っても発音や発声がクリアであることは大切だな、と感じる。
乗っけるトラックごとに微妙にスタイルを変化させてたり、カラフルな音色が楽しめる作品だけど、通して聴いて好きなのはレックスのラップ、そこだなと。
タイトルだけだと続編的な位置付けに済ませてしまいそうだが、前作「Grey Hairs」に勝るとも劣らない、素晴らしい作品だ。
by blue-red-cherry | 2009-07-23 17:34 | 音楽
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