マイケル・ジャクソンのファイナルツアーとなるはずだった、ロンドン公演のリハーサル映像を軸に構成された映画、「THIS IS IT」を観た。 結論から言ってしまえば、オレ自身は強く感銘したし、メッセージも受け取った。 替え玉説やら、いろんなきな臭い話が飛び交っているが、そんなの関係ない。 オレがこの映画に見いだした真実は、マイケル・ジャクソンへのラヴとリスペクト。 マイケル・ジャクソンを自身の心の中に永遠の存在として輝かせておきたい、そんな向きは絶対に観ておいたほうがいい。 この映画から得られることのひとつとして、ロンドン公演が行われていれば、という念がある。 ダンサーの映像を何万人にも膨らませたド迫力の「They Don’t Care About Us」、オリジナルのPVを思い出させる映画とのコラージュ「Smooth Criminal」、あの偉大なるホラーPVを現代の技術で甦らせた「Thriller」。 強いメッセージを、スクリーンとステージを同期させた演出で、感動と共に届ける「Earth Song」。 映像もセットも、1アーティストのステージとして作られているのが信じられないくらい、1曲1曲とことんまで作りこまれている。 規模感も凄まじいし、その1つ1つのクオリティが一級品のエンターテインメントであり、それらを見ているだけで、このステージが実現したら…どれだけ凄いことになったのか。 ディテールの凄さよりも凄みがあったのがマイケル、その人その才能。 正直、齢50を数えるマイケルの、無謀ともとれるロンドン50公演に、ファンであろうとも少なからず、疑念があったのは間違いない。 しかし、リハーサルをこなすマイケルの姿は、そりゃ歳を取ったし、身体的な変化もあるのは事実だが、迸るエナジー、光るタレント、そのステージングには期待こそ高まれど、不安にさせるものは何もない。 「Wanna Be Startin’ Somethin’」、「Jam」、ダンスに歌に、流す姿も続くものの、長丁場のリハーサルゆえ、至極当然。 むしろ驚かされるのが、モチベーションが高まっているときの映像だ。 コーラスの女性との掛け合いが徐々に熱を帯び、エンディングではいつまでも終わらないアレンジで美声を響き渡らせる「I Just Can't Stop Loving You」。 希代の名曲で延々踊り続ける「Billie Jean」。 幸運にも(ある意味不幸でもあった)この公演のメンバーに選ばれたダンサーたち、マイケルの「THIS IS IT」へ向けたパフォーマンスを観ることが許された数少ない彼らの興奮からもその凄まじさが伝わってくる。 「ちゃんとやれんのか」どころか、他を圧倒するレベルでのパフォーマンスを、少なくともこのリハーサルの段階でマイケルは、成しえていた。 マイケルの楽曲はもちろん、オリジナルが素晴らしい。 途中挟まれるバンドメンバーの声にも、オリジナルに忠実であることが前提とされるという旨の発言がある。 しかし、その素晴らしさはライブアレンジにより、さらに輝きを増すように思う。 最高のループはマイケルのさじ加減ひとつで伸び縮みし、ボーカル、ダンス、演出、様々なエッセンスを際立たせる。 マイケルのツアーに賭けるこだわりはハンパじゃない。 脇を固めるスタッフは、この作品を監督しているケニー・オルテガに始まり、コレオグラファー、証明、音響、美術にいたるまですべてがプロ。 オーディションを乗り越えて選ばれるダンサー、バンドのメンバー然りだ。 これも劇中にあった言葉だが、彼らひとりひとりはプロであり、高い技術を持っているのは当然で、その上で人を惹きつける華を持っていなければいけない。 事実、「The Way You Make Me Feel」でマイケルと絡む女性ダンサーなんかはかなり美しく、しなやかで、この先独り立ちしても充分活躍しそうなくらい、光っていた。 「Black or White」で迫真のギターソロを効かす、女性ギタリストも見逃せない。 それだけ随所にこだわっているからこそ、そのどれもを輝かせ、そのどれもがマイケルと絡み合うようにあらなければいけない。 そのために練られたアレンジだからこそ、マイケルの楽曲のライブヴァージョンが素晴らしいんだ。 劇中の登場順に並べられたサントラのトラックリストを眺めるだけでため息が出る。 まさにヒットパレードだ。 ここまで書いてきたように、1曲1曲は演出、パフォーマンスに合わせて細部までこだわりを持って準備されており、マイケルと演出、マイケルとバンド、マイケルとダンサー、ピュアで、熱い思いのぶつかり合いを挟みながら、映画は進む。 ただのヒットパレードではない。 その曲に、そのパフォーマンスに込められた思いを受けながら観るヒットパレードは、思いも感動もひとしおだ。 だが。 その曲、パフォーマンスが活き活きすればするほど、マイケルを失ったという事実、哀しみが増す。 今、スクリーンから観るパフォーマンスでオレを惹きつけるこの人はもう、この世にいないんだ。 このキレキレのダンス、すっと入り、奥深くを熱くさせるこのボーカル、もう観ることは、聴くことはできないんだ。 著名人によるこの映画の感想で、最初から最後まで泣きっぱなしでした、なんてのを目にしたが、少しも大袈裟ではない。 この事実を重ねて観てしまえば、それは泣きっぱなしも仕方のないことだ。 オレは頑張って、極力そのパフォーマンス、エンターテインメントにどっぷり浸かろうと努力したが、ファミリーの映像を挟みながら送られたジャクソン5メドレー、特にしっとり歌い上げる「I'll be there」ではさすがに堪えきれず、薄く嗚咽を漏らしてしまった。 I Just Can't Stop Loving You. 作品内で、随所にマイケルの生前の思い、環境破壊を始めとした地球の危機を救いたいという思いが発せられている。 マイケルに感動をもらい、その楽曲でこれからも楽しませてもらうオレたちファンは、少しでも彼の思いに応えなければいけない。 いろんな思いが去来し、余韻として残ったこの映画。 観終わったあとも、楽曲を聴けばその姿が思い浮かぶ。 恐らく劇的な復活、そして伝説を築いたであろうロンドン公演が叶わなかったことは非常に残念だ。 マイケル自身が見せたくなかった裏側が公開されたことへの賛否も分かる。 しかし、オレはこの映画が見られて良かった。 マイケルのいろんな話が語られる中で、この、奇跡の復活劇にかける、打ち込むマイケルの姿が見られたことは本当に良かったと思う。 音楽に愛され、音楽を愛した男、マイケル・ジャクソン。 彼の歌は永遠であり、彼の存在もまた、オレたちの心の中で永遠の存在になる。 その手助けをしてくれたこの映画を見られて、本当に良かった。 映像作品化、難しいだろうけど、期待している。 We love MJ, forever. foever, and ever, and ever.
by blue-red-cherry
| 2009-10-31 16:40
| 映画
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