昨年の公開時には、出演者のダンサーたちも来日し、新たなダンスのスタイルのムーブメントとして紹介されてた記憶があるドキュメンタリー映画「RIZE」を見た。 といってもドキュメンタリーだと知ったのは最初の映像を見た段階が初めて。 その、所謂80年代初頭のヒップホップ登場における映画だったり、ギャングスタはじめとしたブラックムービーの類で、成り上がり的な(安っぽい表現でスマソ)ストーリーものだと思ってた。 もちろん、ドキュメンタリーだけに、その背景的なものはきちんと描かれていて(伝えられていて)、ゲトーで生まれた新しいダンスに込められた深い物語も知ることができる。 ピエロという日本では知られているようで知られていない存在から始まり、成長していく上での争いが起きたりと、ダンスの1スタイルとしては、その見ごたえと同じく型破り。 そこで得たリアリティーをもってして、話の味わい深さはかなり深まるんだが、それを差し引いても、ダンスの迫力だけでご飯3杯はいける。 とにかくパワフル! 最近復活した「スーパーチャンプル」でもたまに見られる新ジャンルのダンス・クランプだけど、ダンスにしてダンスにあらず、というか、肉体で表現するアートではあるんだが、そこには下手したら絵や小説といった芸術品よりも、精神的な世界を感じる。 それは怒りだったり、喜びだったり、様々な感情だ。 圧倒される。 写真家のデヴィッド・ラシャペルが監督しているからか知らんが、絵の美しさも必見。 あるときはまさしくアーティスティックで(Lil Cの波打ち際のダンス!泣!)、ほとんどのライブ映像は痛いほどの生々しさで、興奮する。 銃社会・アメリカはロサンゼルス、その生き抜くことの難しさでは名を馳せるコンプトンやロングビーチを舞台に広がったダンスと、それを描いた今作。 映画として見せられれば、ひとつのムーブメントとして知りうるが、果たして現地ではいかなる存在としてとらえられているのだろう。 出演者の一部は商業的になってしまったヒップホップとの関連性を否定するむきもあったが、彼らのダンスのリズムであったりメッセージはヒップホップのそれと通ずる。 しかし、オレが長年親しんだヒップホップで知りえた、彼らのダンスの舞台・アメリカのゲトーは、ギャングたちの世界だ。 今のメインストリームでさえ、ギャングスタラップは健在だ。 昔、ヒップホップそのもの(ラップ、DJ、ダンサー、グラフィティなんでもいい)がギャングに対してのアンチテーゼ(抗争の代わりのヒップホップバトル)だったように、この映画でも、ゲトーのエリートコースに対する存在としてダンスの道がある。 きっとダンスを選んだ彼らは、マイノリティーなのでは? ギャングスタスタイルにあこがれ、その道に進んでしまいがちな社会に生きながら、別の形で成功を願う青年たちの姿は、まぶしく映り、余計な心配さえしてしまった。 がんばれ。
by blue-red-cherry
| 2006-11-01 23:41
| 映画
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