憑神

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1週間前くらいに、浅田次郎の「憑神」を読了。
時代小説は苦手、というか食わず嫌いだと思うんだが、縁が薄い。
妻夫木好きの連れから借りて読んだ。

その妻夫木主演の映画版のトレーラーの印象が強かったが、まったく違う触感。
なんとなく、気のいい江戸の若者が織り成す珍道中みたいなのをイメージしてた。
そこは「憑神」っつうくらいなもんで、お化けの類が出てくるわけで、浅田次郎一流のウィットとユーモアに富んだシニカルな笑いは全編に漂う空気感なんだが、主人公の彦四郎は幕末に似つかわしくない武士中の武士(もののふ)。
義理人情に厚い江戸っ子のDNAと相俟って、結構アツくさせてくれる。

ちょっと前に深川とかあの辺を、古地図を使って歩いたことがあった。
それもあって、描かれる江戸の町も興味深く楽しむことができた。
貧乏神、疫病神、死神と、笑うに笑えない神という巨大な相手を向こうに、人間として、義理人情はともかく真摯であること、男らしくあること、家族を大切にすること、神=運命と退治することで上手く人間のカルマを描いていると思う。

運命と抗って、運命を受け入れる物語。
運命はきっと決まってて、受け入れるも抗うもそれはその運命の中で生きていることなのであって、どっちに転んでもその結果がその人の運命なんだと思う。
わかんないけどね。
神様が決めてるのかも知れない。
彦四郎は戦った。
自分の運命と戦った。
そして自分の運命を、その意味を知り、貫いた。
生きる人の意思があれば、神様だって都合を変えてくれるんだよ。


まだ彼は抗うよ。
神様もまだだって知ってるはず。
運命はその人の意思が決めるんだ。
彼は、意思の人だから。
by blue-red-cherry | 2007-11-16 20:42 |
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