テロリストのパラソル

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故・藤原伊織の代表作、「テロリストのパラソル」、読了。

いやー、かなり好きなテイストだった。
適度なハードボイルドさと、適度なセンチメンタリズムのバランスがめちゃくちゃフィット。
まあハードボイルドの要件にセンチメンタリズムも含まれているように思うけど。
この人の本、「シリウスの星」を以前読んだことがあって、電通出身者による広告話はリアリティがあって、電通マンなのに鼻につかないところが好感持てたのを思い出した。

学生運動に加わり、ひとつの事件を境に、長きに渡って日陰暮らしを余儀なくされた主人公、島村aka菊地。
アル中バーテンダーでありながら、野性味溢れる元ボクサーにして、理知的な思考と物言い。
当時ですら時代遅れを自他共に認められる存在は、今の世に当てはめても当然稀有な古きよき時代の男のそれであり、カッコいい。
彼の数奇な運命と絡まりあい、それが紐解かれるように関係性が深まっていく、他の登場人物も味がある。
インテリやくざなんてのも、今やミステリーにサスペンスに欠かせない設定だが、当時の空気なのか、新鮮さが残る浅井というキャラは結構ツボだった。
深すぎず、浅すぎず。
会話を中心につかず離れずといった様相で、過去や素性を明かしていく人物描写がうまいと思った。
ある種「LOST」的な。

テロリズムと結びつくのが学生闘争や、中南米ゲリラなあたりに隔世の感は禁じえない。
911以降と以前でもっとも意味や価値感が変ったのは「テロ」かもしれない。
だがそれが意味し、そこから生まれる感情だったりは変わるものではない。
タイトルほどの存在感を発揮はしないが、これもまた、重厚なテーマとして貫かれる。

人を軸に進む物語は、ブレない軸のもと、時折強弱をつける仕掛けで飽きさせない。
クライマックスの抑えのきいた昂ぶりはグっときた。
新作が読めないことを非常に残念に思うが、リスペクトを込めて、ほかの作品を読みたいと思う。
by blue-red-cherry | 2008-05-14 23:07 |
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