オシムの言葉

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5月に文庫版が発売になった「オシムの言葉」を読了。
美しく、オレが好きなサッカーを形容した先のエントリーで引用させてもらった言葉をはじめ、金言名句が各所に散りばめられているが、その言葉とともに、いやそれ以上に彼が歩んできた道のりに生き様に深く感銘を受けた。

木村元彦さんの本を読むのも初めてだった。
Numberをはじめ、オシム絡みの記事を寄稿しているのを読んだことはあったが、まとまった作品は初見。
ここしばらくサッカー関係の本を読むことが多かったが、それらとは確実に一線を画す。
長く取材を行い造詣が深い、というのもあるが、フォーカスしているのは人であり、サッカーを重要なファクターにしているが、もはやこれは伝記の域であり、対象であるオシムのドラマチックな運命を描く様は骨太のノンフィクション小説だ。

複雑に入り組んだユーゴ連邦国家の崩壊史。
その裏で葛藤や軋轢の中、進んだ今は亡きユーゴスラビア代表の躍進。
恥ずかしながら、どちらもよく知らなかった。
個人的にはただそれを知りえただけで充分に価値のある一冊だった。

厳戒下を生きる人間・オシムと、その中で(その中だけではなく、後日平和な日本においても)辣腕を振るう監督・オシム。
両者の振る舞いは表裏一体で、どちらにも深い味わいと、確固たる芯がある。
ウィットに富んだ物言いとその裏にある悲壮な思い。
彼の刻んできた生き様を知り、改めて自分の知るオシムを振り返ると、そのひとつひとつの行動にかける思いを知るようで、ハっとさせられた。

ピクシーをはじめ、サビチェビッチ、ミヤトビッチ、プロシネツキ、旧ユーゴを彩ったスター選手たち。
阿部、羽生、佐藤勇人、ジェフ千葉でともに戦い、今はジェフ千葉を去ったチルドレンたち。
彼らの現在地とオシムと過ごした日々、それと両者の思い。
この辺もいろいろと考えさせられるところはある。

この本を読んでよかったという思いと、読まなきゃよかったという思いが交錯する。
偉大な監督であり、偉大な人間であったオシムが東京オリンピックで親日家になり、その後少なくない縁で繋がった果てにジェフを率い、さらには日本代表の監督として、日本サッカーに関わってくれた奇跡と幸せ。
それを改めて深く知り、感じることができた。
一方で失ったものの大きさを感じずにはいられない。

もしも願いが叶うのなら。
いや、やめとこう。
by blue-red-cherry | 2008-07-09 11:05 |
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