「オシムの言葉」に続く木村元彦本、ピクシーことストイコビッチのストーリーを綴った「誇り―ドラガン・ストイコビッチの軌跡」を読了。 漫画家の1巻から近著までの成長ではないが、作家の文にも成長というか洗練されていく感がある。 「オシムの言葉」の加筆部分は今年に入って書かれたものだから、遡ること8年、そういう意味での粗さはある。 だからといってこの作品の質が下がるかといえばそんなことはない。 著者が今、ユーゴ事情通であることの原体験、様々な衝撃の事実に、偉大なプレーヤーたちに、触れた瞬間の初期衝動はむしろその粗さによって生々しく感じる。 旧ユーゴの選手たちに関して、当時WOWOWが放送していたセリエAで活躍していたサビチェビッチ、ユーゴビッチ、ミハイロビッチ、ボクシッチあたりは見ていたが、ほかの選手は連邦崩壊後のプレーしか知らない。 ピクシーに関しても名古屋以降しか知らない。 木村さんの本を立て続けに読んで、国家とサッカー、その背後にある深い物語が強く胸に響いた一方で、単純にユーゴの美しいサッカーへの興味が非常に高まった。 映像作品が残ってないか、ググって見たところ、リージョンが微妙だったり訳なしだったりするコレが一番良さそうなんだけど、果たしてその環境で楽しめるかどうか、悩ましい。 やはり知識がなかったこともあり、ピクシーのイメージはパブリックイメージとなっている、気性の荒いスター選手だった。 もちろんそれは一面でしかなく、もちろんそこには理由があった。 過酷な運命に翻弄された彼の人生を思うと、オシムにしても同様だが、よく続けてくれたと思う。 彼らは自身の苛烈な状況のみならず、祖国の英雄として、悲劇に見舞われた国のすべてを背負って生きている。 彼らが続けてくれることがどれだけ多くの人の希望になったことか。 美しいサッカーやそこにある真摯な哲学は、単純にサッカーファンの希望であり光であるといえるが、ピクシーやオシムを国の英雄とあがめた人々にとってのそれは想像を絶する。 中でも人格者であったり、日本にゆかりがあるからこの2人の話を知ることができたが、この戦争に運命を握られた多くのサッカー選手、サッカー選手に限らずだが、それぞれに深いストーリーがあるんだろうな……。 当たり前のことだが、サッカー選手だって人間だ。 いろいろあるさ。 オシムのときも思ったが、こんな偉大なサッカーマンが関わってくれてるんだから、日本サッカー、もっと頑張らないと。
by blue-red-cherry
| 2008-07-15 20:04
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