顔に降りかかる雨

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桐野夏生強化月間は、探偵ミロシリーズに突入。
女性探偵・村野ミロが初登場した江戸川乱歩賞受賞作、「顔に降りかかる雨」を読んだ。

実に15年前の作品である。
連絡手段に携帯電話は登場せず、ウェブメールも使わない。
旧時代を感じさせる社会での探偵業は、どこか味があって美しくって、今の社会に照らし合わせれば何かとまわりくどいその手段も周到で、どこかスマートに映る。

といっても今作は父親が私立探偵をしていた、という設定のミロが事件に巻き込まれ、結果抗えないDNAの力か、探偵のようなことをしていくというお話。
探偵前夜のミロが己の衝動、ひとりの女性としての思いと、事件を解決するために動いている人間としての思い、冷静と情熱の間で揺れる様が面白い。
巻き込まれた事件の設定では、自らの運命をかけた期限が設けられ、ベタではあるがこの設定がサスペンスを盛り上げる。

過去のトラウマと戦う内省的な部分であったり、強烈に女を感じさせる恋愛的な要素だったり、ミステリー/サスペンスではあるが、村野ミロという人間の内面と彼女が直面する現実とを交互にリンクさせた、村野ミロの物語である。
ここから彼女のストーリーが続くことを想定して書いたのかどうおかはわからないが、今こうして村野ミロシリーズを読んでいくうえではすごくありがたいイントロダクションだった。

最後のオチまで、そう手の込んだトリックはないが、楽しく読める。
何より先を読むうえで通っておくべきステップだ。
by blue-red-cherry | 2008-08-23 09:57 |
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