Untitled

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ナスの「illmatic」の呪縛に捕らわれているのは恐らく、本人よりもオレたち聞く側であることは間違いない。
もっといえば、完全な非英語圏である日本のヒップホップリスナーにとっていくらリリシストで馳せるナスのアルバムであっても音の占める割合は大きく、リリックをダイレクトに理解できる人たちに比べれば「illmatic」に固執するのも仕方ないかもしれない。
恐らくナスは「illmatic」でも「it was writen」でも「Hiphop is dead」でも、そして最新作の「Untitled」でも知性溢れるボキャブラリーを培ったスキルで、アーティスティックなリリックとして発しているはずだ。
そして、その評価は揺るぎないだけに、呪縛に縛られる必要はないはずだ。


Black President


Sly Fox

で、この先も劇的に英語の理解力が上がるとは思えないオレは、音メインで聴くスタンスは変わりない。
その面でも今回の「Untitled」は、ここ最近の作品の中では聴きやすく統一感もあり、今のところ「illmatic」に次ぐお気に入りになりそうな予感。
初の黒人大統領の誕生(危うくなってきたが)に寄せる、ただ希望に満ちただけでないところが希代のリリシストらしくていい「Black President」や、あからさまに攻撃を受けている(ナスが)メディアと真っ向向き合った「Sly Fox」、相対があるメッセージソングの熱のこもり具合はさすがに熱く、トラックもそれに見合った熱量を備える。
「Black President」は2PACの声が扇情的でよすぎなんだけどね。

音の観点でいくと、「You Can’t Stop Us Now」
スタイリスティックスのメンバー自身を招いてしまう曲作りは、こうサンプリングで繋がった音楽の最高の形というか。
ベテランならではの成せる業であり、そして自身の曲のために歌ってもらったヴァースはやはりサンプリングのそれを超える深みがある。
よかった頃のロッカフェラあたりが好みそうな煌びやかさと奥行きを感じる「Breathe」、生っぽさが80'sの香りが漂うウワモノとマッチする「Ya’ll My Niggas」、この辺も気持ちよく耳に入ってくるな。
ホーンの「Louis Farrakhan」、ピアノの「We’re Not Alone」、どちらも変則的なリズムと抑制されたジャズっぽさが渋い。
単純にカッコいい。
ふと思ったが、リリシストのアルバムであろうと、聴こえの良さは必須だよな。
聴きやすくなかったら、例えばギャンギャン鳴りっぱなしの音ばかりのアルバムだったらメッセージもくすんでしまうだろう。
ナスの選ぶトラックには何か、それこそ倍速サンプリングとかトライトンばりばりとかシンコペ全盛とか、まったく採り入れないわけではないが、時代感を越えたものを感じる。
そこに通ずるのは聴きやすさを念頭に置いたシンプルさなのかもしれない。


Hero

ハイライトはメジャー感がほとばしる「Hero」「Make The World Go Round」の並びかな。
前者はタイトルそのままに映画のような高揚感が新しい。
こういうドラマティックなサウンド、あまり得意じゃなかったけど、ヒップホップは死んだ、と発言したナスが歌うと重みがあるね。
後者はアイドル、クリス・ブラウンとGAMEを一緒に迎え入れる力技。
三者三様に見せ場があり、熱の入ったプロフェッショナルな1曲だ。

貫禄の一枚。
メッセージを読み取れれば最大限に楽しめるが、そうでなくても聴きこめる。
by blue-red-cherry | 2008-09-03 11:26 | 音楽
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