グロテスク

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桐野夏生の代表作、「グロテスク」を読んだ。
上下巻で綴られる濃密な「女」の世界は、重く、醜く、逞しく、一方で美しく儚いものでもあった。

所謂「東電OL殺人事件」を題材に描かれた今作。
その事件の呼称はよく耳にしていたが、まったく興味がなく、知らぬまま今作でその事件に触れた。
およそその事件のディテールはそのまま生かされているが、それは大きな顛末のひとつであり、そこまで堕ちていく女の世界が主。

堕ちていく。
よく「今年1年を漢字一文字で表すと?」みたいなのやってるけど、この作品を一文字で表すなら、「堕」、がしっくりくる。
エリートOLでありながら夜は街娼に身を落とし、挙句外国人に殺される運命に「堕ちた」和恵は件の事件を元に生み出された「女」だが、彼女が形成されるに至る女子学生時代、OL時代を語るために登場する3人の「女」、個性も悩みも「堕ち方」も違う4人の女性、それぞれの苦痛と戦い、悪意が絡まりあう。
女同士のヒエラルキーは、美貌、知性、金、男、性、いろんなものを媒介にしてドロドロに深く描かれる。
妬み、勘繰り、恨みつらみ。
醜く、恐ろしい、しかし貫かれるそれはどこか共感せざるを得ない部分があり、それこそ恐ろしいことに美しく映らないこともない。

「わたし」というあまり主張のないキャラを軸に、恐ろしい美を誇り「わたし」のコンプレックスのすべてだった「わたし」の妹・ユリコ、上記の哀しい末路をたどるすべての努力が報われない女社会の犠牲者・和恵、知性を求めたなれの果ての転落人生を送るミツル、それぞれの手記という形で4者それぞれが主体になる形で「女」の世界が語られる。
そのリアリティーはすさまじく、男のオレにはまったくもって共感できない。
小説のハマるポイントに共感することや感情移入できることというのは大きなウェイトを締めるといえそうだが、真逆にまったく共感できないこと、知りえないことを楽しむという側面もあるだろう。

また、主軸以外のキャラについても多くのページを割くスタイルも健在。
犯人とされた男の半生を描くことが今作では、「女」を際立たせることに成功している。
一見まったく本筋とは関係ないストーリー、ともすれば冗長なくらいそれを描き続けることが最終的にその作品の重みを増す、長編小説ならではの手法が最近、気に入っている。
桐野夏生作品の楽しみどころのひとつかな。

疲れたけど、読み甲斐あった。
by blue-red-cherry | 2008-09-27 04:47 |
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