股旅フットボール

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「股旅フットボール」、実に面白かった。
宇都宮徹壱さんは昔から好きなライターさん。
冷静な語り口からときに過剰な四字熟語や慣用句の類の織り交ぜ方まで、一貫した主張があるからこそ、ブレない魅力がある。
ヨーロッパの中でも東欧を追ってたり、代表戦とかユーロとかも抑えつつ、地域リーグに目を向ける慧眼。
世界を回ったがゆえ、世界のサッカーを知ったがゆえに地域リーグが選ばれたのが、この本を読み終えればよく分かる。

やっぱりサッカーを見てるとやりたくなるし、やったから分かる「見るサッカー」の楽しみも当然ある。
サッカーはプロ選手のものであると同時に自分たちのものでもある。
主体が変ればレベルはもちろん意味合いも変ってくるが、例えばやる方でもホームがあってリーグに属して、っとやっていくことでその果てがいつも見るJリーグや天皇杯に繋がっていく。
この面白さはスカパーで海外のハイレベルなサッカーを楽しむのに匹敵、いや、それ以上の楽しみがあると思う。
オレが不定期で参加してるK区の何部だか分からないリーグ戦の先にはK区の一部リーグがあり、その先に都のリーグがあり、関東のリーグがある。
そういうのって、ワクワクしない?

J1を頂点とした日本のクラブサッカーのピラミッド、3部相当のJFLの下に位置する地域リーグ。
この本では地域リーグに属するクラブの描く夢、向き合う現実が切実に描かれている。
わが街にJクラブを!
夢の部分は想像がつくが、なんといっても現実部分の内容が厚い。
JFLはプロ・アマ混在のリーグだが、出入りの激しいリーグであり、JFL直下の地域リーグのクラブにとってもプロ化の波が押し寄せている。
Jを目指す、夢を追うことでクラブの運営や規模、さまざまな部分で重い現実がのしかかる。
各地域、各クラブの置かれた状況は様々で、北は北海道、南は沖縄まで多種多様なクラブ模様、人間模様が存在することを教えてくれる。
国見の小嶺先生が神格化したVファーレン長崎、豪奢なパトロンと県を挙げた理想的な環境づくりが存在するFC Mi-OびわこKusatsu、名古屋グランパスのDNAが息づきながら名古屋>岐阜の構図を脱却しようとせんFC岐阜。
すべて興味深い。

また、それぞれにクラブが抱える問題を浮き彫りにしつつ、それは日本サッカー界の構図の問題に言及する。
「全社」こと全国社会人サッカー選手権大会、「地域決勝」こと全国地域リーグ決勝大会の凄まじい過酷さは既に多く知られているが(この本の果たした役割は大きいのでは)、ここでもまたプロとアマの狭間、日本のプロサッカーが成熟していく一方で、裾野の整備が追いついていない構造を知らされる。

すべて宇都宮さんの筆力、取材力に支えられている。
現在もこの取材を続けているそうだが、発表媒体がなく、自費での取材をされているようだ。
いずれはこの地域サッカーの文化が日本全土、地図を埋め尽くさん勢いで浸透していき、それが日本のサッカーを支える、そんな夢をサッカーファンならば抱かずにはいられない。
そのためにもこの宇都宮さんの「股旅」は、もっともっと知られて読まれていくべきだ。

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by blue-red-cherry | 2008-10-07 12:24 |
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