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GIANT KILLING

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初の2ヶ月連続発売となった「GIANT KILLING」8巻、ソッコーでゲトって気になりすぎて仕事中に読破。
うほ、スラムダンク化!
ガンナーズ戦、長っ!

リアルなほうの東京は一足先に大阪の強豪に打ち勝ったわけですが、ETUはいよいよエンジンかかってきたってとこか。
逆にガンナーズの波も落ちてきた、ともいえる。
毎回ちょこちょこそこそこの場面が与えられる赤碕が今まででいちばん輝いた今回だけど、試合を決めるのは椿かな?夏木かな?世良かな?ジーノかな?
黒田と杉江も目立ってる。
みんなが輝く、これは勝ち試合の機運ですな。

ああ、でもこの試合にこんだけかけちゃ、この作品の寿命が気になっちゃうよ…。
いいチームなんてのは一年でできるはずもなく、少しでも長く見ていくのが楽しいもんなんだから、長く続いて欲しいんだけどな…。
どうよ?
by blue-red-cherry | 2008-11-21 17:45 |

違和感

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方や「サッカーマガジン」は今年のベストプレーヤー候補をカタログ化し、方や「サッカーダイジェスト」は来季ウワサされる選手の移籍話に花を咲かせている。
まったくもって違和感だ。

ひとつ、まだ今季は何も終っちゃいない。
しかもほとんどのクラブにとって何かしらのモチベーションがある。
そういった混戦ではなかったとしても、優勝争いに残留争い、残り3つリーグ戦を前にして代表戦と天皇杯によるブレークが設けられたこの週、この未曾有の混戦劇を深く語るに相応しい号だったのではないか。
今週に限らず、一ヶ月くらい前から来季のウワサ話を特集に持ってきたりしてたのも相当に違和感を覚えた。
ひとつ、語られるネタが掲示板的なこと。
「ベストプレーヤー」決めようぜ、とか、「ら」レベルなウワサを願望的なフォメ混ぜて語る、なんて。
掲示板的なだけじゃなくて、ウイイレとかサカつく、ゲーム的とも言えるかも。
良くも悪くもサッカーを語る場がネットへ移行しているひとつの象徴かも知れない。
そういうのが楽しいのは分かる。
みんなが「ベストプレーヤー」選びたいし、新しいシーズンには何かしらの刺激を求めるもの。
でもそこじゃないんだよなー、少なくともこの2誌に求めたいのは。
むしろネット化するなら「会長のご乱心」とか、「無能監督を起用したユース代表について」とか、サポティスタのスレタイになるようなネタを深くやったりすればいいのに。

紙メディアというか、プッシュ型のコンテンツに求められるのは下手にインタラクティブな流れに迎合するんじゃなくって、違うところにあると思う。
東京で言うところのトーチュウとか、密着型のメディアはそれこそ日々のネタを拾ってくるからたまにアツーイ記事を読ませてくれるが、日本サッカー界の2大誌で読むネタはなぜか、薄い。
番記者は各チームにいるわけで、思うところは大いにあるはず。
この混戦の裏で各チーム、何が起きているのか。
選手は監督はフロントはサポーターは、どう戦っているのか。
例えば資金的に次のステージ、ACLやJ1は正直キツイ、とか、それぞれの思惑。
知りたい話はたくさんあるのに。
ダイジェストのちょっと前の浦和の特集とか、よかったと思う。
マガジンのバックナンバー見ると一目瞭然だけど、迷走感がww
後藤さんのコラムは、Jリーグファンとしてはすごく納得、心強い評論家の一声だったけど、多くのメディアにそんな風に思わせないのは後藤さんの仕事ではなく、マガジンとダイジェストにも課せられた使命なんじゃないかな。
そんな2誌が、最後までもつれにもつれて目が離せないこの大混戦を尻目にネタに走る違和感。

専門誌のプライド、見せてくれ。
立ち読みでは済まされない、凄味のある記事が読みたい。
コラムに連載、好きなページも多いけど、トップでもっとやれるはず。
いちサッカーファンの意見として、いちサッカーファンじゃ立ち入れない世界を見ることができる方へのお願いです。

…でもそれじゃ売れないんだろうなあ。
パイ広がらないもん。
媒体だけでどうこうならない部分もあるだけに、彼らだけに矛先を向けるのはあまりフェアじゃないかもね。
ジレンマ。
by blue-red-cherry | 2008-11-11 17:23 |

Number

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「Number」、久々に購入。
世界が見たニッポン。
表紙のオシム、カッコよすぎ。

正直オシムの話を読むのは、無一文でウインドウショッピングするようなもので、もしくはないものねだりを加速させるというか、どちらにしろ読後感として空しさや切なさが残りそうで気後れしてたんだが、まあ彼が元気なことが知れてよかった。
そしていつになく饒舌、例えば鈴木啓太がもっと巧かったら、の行とか、憲剛に大きな期待を寄せてた話とか、個人名をバシバシ挙げて語るオシムジャパンのストーリーは、それがすでに過去のものとなったのを理解せざるを得ない内容だった。
そこに描かれた彼の理想のサッカーは知れば知るほどに興味が沸き、期待が膨らみ、そしてそれが届かないという事実にショボーンとなる。
これはもう、しばらくは仕方ないな。
オシムの掲げた日本化を超える、日本のワクワクするサッカーの形が見えてくるまでは。

著書の印象も手伝ってか、最近は「戦術論といえば」な感じの西部さんによるピクシー&ミラー評は、ミラーのかん口令でちょっと消化不良。
トゥルシエ、ヒディングからワシントン(元浦和)、フランサ、祖母外氏と幅広い人選による「私の日本サッカー論」は人選そのままトピックまで幅広く広がりすぎてて散漫すぎ(個々はまあまあオモロイ)。
アマ、エスクデロ父、ディドをフィーチャーした日本定住を選んだ助っ人の話とか、もっとボリュームあっても面白いのに。

それとこういう特集に欠かせない、英国人記者による日本サッカー紀行。
日記スタイルでJから天皇杯、代表戦と並べた観戦記はそれなりに面白い。
平和なスタンドの温かい応援、といったお決まりの反応は正直食傷気味。
例えば山形とか札幌とか集中的に冬に行ってもらって、あと、熱帯化しつつある夏場にもきてもらったりして、それこそ外の人に日本で秋冬制に移行する是非を問う、とか面白いと思うけどな。
いや、それ以前に遠いから足並みそろえても変らないよ、とかあっさり斬られたりして。

オシムのロングインタビューだけで価値がある号。
だけど最近、なんか内容が薄い気がする…。
by blue-red-cherry | 2008-11-06 19:15 |

R.P.G.

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宮部みゆきの文庫書き下ろし小説、「R.P.G.」を読んだ。
微妙な長さが文庫書き下ろしにマッチしたとあとがきで著者本人が後述していたが、確かに店舗もよく、大きな場面展開も少なく、このサイズが適していたと思う。

そのままロールプレイングゲーム、所謂ドラクエなRPGというのではなく、役割を演じるという本来の意味でいうところのRPGが肝。
ネット上で家族を演じていた人たちと、そのRPGに興じていた人たちのリアルな人間関係が絡み合って起きた殺人事件。
犯人が捕まらないように何かを演じるのは普通だが、今作ではそれを暴くサイドも役割を演じるという徹底振り、すべての登場人物が何かしらのロールをプレイングしていた。
演じることで生まれる可笑しさと、空しさ、その両方が味わえ、それはまた現実の人間関係にも置き換えられる。
犯罪、推理小説として飛びぬけたもの、衝撃を受けるような話ではなかったが、着眼点と構成の巧さで興味深く読むことができた。

というわけで、宮部みゆき月間スタートです。
by blue-red-cherry | 2008-11-01 13:22 |

U-31

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ジャイキリの原作者(絵じゃなくて案のほう)が03年と04年に発表したサッカー漫画、「U-31」を読んだ。

鳴り物入りでJリーガーになり、アトランタ五輪で活躍後、スペインへの移籍のチャンスを逸して東京にある名門クラブへ移りその後転落…。
サッカーファンなら誰もが知ってるあの彼をベースにしてるのは間違いない。
プレースタイルもトップ下からの突破力と得点力、彼の持ち味だ。
違うのは歩んだ道のり。
目に見えぬ衰えと向き合わないまま選手生活を送った主人公の河野は、いつのまにかポジションを少しずつ下げ、パっとしないボランチに成り下がっていた。
現実を受け入れぬまま迎えた27歳のシーズン途中で戦力外通告を受け、古巣へ逆戻りすることに。
これを転機に彼は現実、そして自らを支えてきたサッカーとの繋がりを真剣に見つめ、サッカーへの執着心を取り戻し、U-31プレーヤーとして前を向いて戦っていく。

実際のJや日本サッカーのおかれた03年、04年とリンクして物語は進む。
02年のワールドカップバブル期をスタート、そこで河野はどん底から立ち上がるんだが、その場、戻った古巣はジェム市原ww
対戦相手にも仲間にも見知ったような名前が並ぶが、衰え始めた自分を見つめ戦い始めた第1章、オシムと思しき将を得て深みのある選手へ成長していく第2章、どちらも読み応えがある。
サッカーを見続けているものからすれば真新しいことは特にない。
だが必殺シュートも日本人離れしたルックスももたないベテラン選手が挑むプロサッカーの世界を改めて描かれるとグっとくるものがある。
最後のドーピングうんぬんの話だって、それはそれでストレートなメッセージだろうけど、オレとしてはサッカーは体だけじゃないんだぞっていうメッセージとして受け取った。
つか、U-31はベテランじゃないよね。
2巻で27歳から31歳、最終的には31歳でもドイツワールドカップをあきらめずに…というところがクライマックスになるんだけど、31はまだまだやれるでしょ。
フジもサリもいくつだと思ってんだww

網本さん、いいねえ。
これからもサッカーのうわべだけじゃない魅力をいろんな角度から世に教えてってほしい。
キャプ翼で夢のある世界を知ったら、こういう話で夢と現実を近づけるのもいいんじゃない?
by blue-red-cherry | 2008-10-25 16:57 |

GIANT KILLING

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「ジャイキリ」、7巻
鹿島戦を目前に控えての新巻、奇しくもETUも首位、大阪ガンナーズをホームに迎えての一戦。
だけど、前半ガッツリ凹まされる展開のまま次巻へつづくって、どんだけ~(古)。

相変わらず着眼点がいい。
スタジアムで代表監督を見かけ、下位チームのサポは自軍の選手の代表入りに夢を膨らませ、上位チームのサポは「ウチの選手呼びすぎ!」と食って掛かる。
「わかってるねー」感を突いてくるな、ことごとく。

試合内容も面白い。
凡百のサッカー漫画で見られるようなスーパープレーどころか、ヒールパスも出てこないが、フォワードへの楔やライン際の攻防、局面のリアリティは普段からサッカーを見てる人間の心をくすぐる。
この作品史上最強チーム、大阪ガンナーズの4トップは便宜上の表現と甘めに認識しつつ、その実超攻撃的布陣の真価をセカンドボール永遠奪取システムに置く、というユニークかつ理に適ったストーリー。
セカンドがあんだけ取れたら相手も嫌だろうし見てるほうは楽しいだろうし、実際東京は(ry
なーんて、ね。

黒田が目立ちすぎてる気がするが、ジーノと杉江に張った伏線とか、この試合の結果が激しく気になる。
って、7巻、8巻は2ヶ月連続発売、キター!
1ヶ月、ワクワクして待ちますよ。
by blue-red-cherry | 2008-10-24 11:34 |

股旅フットボール

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「股旅フットボール」、実に面白かった。
宇都宮徹壱さんは昔から好きなライターさん。
冷静な語り口からときに過剰な四字熟語や慣用句の類の織り交ぜ方まで、一貫した主張があるからこそ、ブレない魅力がある。
ヨーロッパの中でも東欧を追ってたり、代表戦とかユーロとかも抑えつつ、地域リーグに目を向ける慧眼。
世界を回ったがゆえ、世界のサッカーを知ったがゆえに地域リーグが選ばれたのが、この本を読み終えればよく分かる。

やっぱりサッカーを見てるとやりたくなるし、やったから分かる「見るサッカー」の楽しみも当然ある。
サッカーはプロ選手のものであると同時に自分たちのものでもある。
主体が変ればレベルはもちろん意味合いも変ってくるが、例えばやる方でもホームがあってリーグに属して、っとやっていくことでその果てがいつも見るJリーグや天皇杯に繋がっていく。
この面白さはスカパーで海外のハイレベルなサッカーを楽しむのに匹敵、いや、それ以上の楽しみがあると思う。
オレが不定期で参加してるK区の何部だか分からないリーグ戦の先にはK区の一部リーグがあり、その先に都のリーグがあり、関東のリーグがある。
そういうのって、ワクワクしない?

J1を頂点とした日本のクラブサッカーのピラミッド、3部相当のJFLの下に位置する地域リーグ。
この本では地域リーグに属するクラブの描く夢、向き合う現実が切実に描かれている。
わが街にJクラブを!
夢の部分は想像がつくが、なんといっても現実部分の内容が厚い。
JFLはプロ・アマ混在のリーグだが、出入りの激しいリーグであり、JFL直下の地域リーグのクラブにとってもプロ化の波が押し寄せている。
Jを目指す、夢を追うことでクラブの運営や規模、さまざまな部分で重い現実がのしかかる。
各地域、各クラブの置かれた状況は様々で、北は北海道、南は沖縄まで多種多様なクラブ模様、人間模様が存在することを教えてくれる。
国見の小嶺先生が神格化したVファーレン長崎、豪奢なパトロンと県を挙げた理想的な環境づくりが存在するFC Mi-OびわこKusatsu、名古屋グランパスのDNAが息づきながら名古屋>岐阜の構図を脱却しようとせんFC岐阜。
すべて興味深い。

また、それぞれにクラブが抱える問題を浮き彫りにしつつ、それは日本サッカー界の構図の問題に言及する。
「全社」こと全国社会人サッカー選手権大会、「地域決勝」こと全国地域リーグ決勝大会の凄まじい過酷さは既に多く知られているが(この本の果たした役割は大きいのでは)、ここでもまたプロとアマの狭間、日本のプロサッカーが成熟していく一方で、裾野の整備が追いついていない構造を知らされる。

すべて宇都宮さんの筆力、取材力に支えられている。
現在もこの取材を続けているそうだが、発表媒体がなく、自費での取材をされているようだ。
いずれはこの地域サッカーの文化が日本全土、地図を埋め尽くさん勢いで浸透していき、それが日本のサッカーを支える、そんな夢をサッカーファンならば抱かずにはいられない。
そのためにもこの宇都宮さんの「股旅」は、もっともっと知られて読まれていくべきだ。

誰か、サポートしてください。
by blue-red-cherry | 2008-10-07 12:24 |

グロテスク

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桐野夏生の代表作、「グロテスク」を読んだ。
上下巻で綴られる濃密な「女」の世界は、重く、醜く、逞しく、一方で美しく儚いものでもあった。

所謂「東電OL殺人事件」を題材に描かれた今作。
その事件の呼称はよく耳にしていたが、まったく興味がなく、知らぬまま今作でその事件に触れた。
およそその事件のディテールはそのまま生かされているが、それは大きな顛末のひとつであり、そこまで堕ちていく女の世界が主。

堕ちていく。
よく「今年1年を漢字一文字で表すと?」みたいなのやってるけど、この作品を一文字で表すなら、「堕」、がしっくりくる。
エリートOLでありながら夜は街娼に身を落とし、挙句外国人に殺される運命に「堕ちた」和恵は件の事件を元に生み出された「女」だが、彼女が形成されるに至る女子学生時代、OL時代を語るために登場する3人の「女」、個性も悩みも「堕ち方」も違う4人の女性、それぞれの苦痛と戦い、悪意が絡まりあう。
女同士のヒエラルキーは、美貌、知性、金、男、性、いろんなものを媒介にしてドロドロに深く描かれる。
妬み、勘繰り、恨みつらみ。
醜く、恐ろしい、しかし貫かれるそれはどこか共感せざるを得ない部分があり、それこそ恐ろしいことに美しく映らないこともない。

「わたし」というあまり主張のないキャラを軸に、恐ろしい美を誇り「わたし」のコンプレックスのすべてだった「わたし」の妹・ユリコ、上記の哀しい末路をたどるすべての努力が報われない女社会の犠牲者・和恵、知性を求めたなれの果ての転落人生を送るミツル、それぞれの手記という形で4者それぞれが主体になる形で「女」の世界が語られる。
そのリアリティーはすさまじく、男のオレにはまったくもって共感できない。
小説のハマるポイントに共感することや感情移入できることというのは大きなウェイトを締めるといえそうだが、真逆にまったく共感できないこと、知りえないことを楽しむという側面もあるだろう。

また、主軸以外のキャラについても多くのページを割くスタイルも健在。
犯人とされた男の半生を描くことが今作では、「女」を際立たせることに成功している。
一見まったく本筋とは関係ないストーリー、ともすれば冗長なくらいそれを描き続けることが最終的にその作品の重みを増す、長編小説ならではの手法が最近、気に入っている。
桐野夏生作品の楽しみどころのひとつかな。

疲れたけど、読み甲斐あった。
by blue-red-cherry | 2008-09-27 04:47 |

リアルワールド

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ミロシリーズが終わっても桐野夏生強化月間はコンティニュー。
「グロテスク」がゴールかな、と思いつつ、同じくJKモノの「リアルワールド」を読んだ。

4人の仲良し女子高生が秘密を共有し、調子に乗り、罰を受け…って「ミスティック・リバー」とか「スタンド・バイ・ミー」的というか、それの現在進行形バージョンってのはちょっと違うかな。
正確に言うと、4人の女子高生とひとりの冴えない男子高校生の物語。
主要5人をそれぞれ章立てして、一人称の語り口で進めるスタイルが面白い。
境遇もキャラも違う5人は、表向きの「仲良しグループ」と、興味本位で繋がった「殺人犯」というつながりがありつつも、その捉え方は各々が置かれている環境や互いに互いが知らない本性、自身だけが持っている相手の印象と、複雑に入り組んでいる。
きっとJK間は特に複雑なんだろうけど、こんなことは人間関係、誰しもにあることだからこその面白さと恐さ、両方を感じることができる。
誰かが誰かをどう思っているかなんて、自分のことですらよくわからないんだから分かりっこない。
そしてそんな分からない思いを互いが探り合っていく末の疑心暗鬼の渦巻き。
うーん、生々しい。

親殺しというファクターは読んでて気持ちのいいものではないが、この物語ではそれはきっかけでしかない。
その非日常に触れた4人の女の子が、非日常と自分たちの日常の境界線を曖昧にしてしまうことで巻き込まれる悲喜劇。
なんてことはない、若気の至りで片付けられる部分もありつつ、深い闇を抱えている子もいたりで、群像劇ならではの深みがある。
リアルワールドなんて、どれがリアルか分からない。

誰がどうこうってよりは、ひとつの物語を5人の視点で楽しめる、優れた群像劇だと思った。
桐野作品は事件はあくまで表面的なもので、その実は深層心理に迫る内容が多いな。
by blue-red-cherry | 2008-09-13 10:12 |

ダーク

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村野ミロシリーズをめぐる日々もようやく、「ダーク」で終了。
いやはや、なんとも、な物語だった。

この物語が発表されたとき、シリーズのファンからは驚き、落胆といった感想だけではなく時際に抗議も起こったらしい。
それもうなずける。
ひとつの物語を終らせる(続くかもしれないが)手段として、徹底した破壊を行っている。
主人公・ミロの人格、過去に始まり、ミロに繋がる人物に対しても死や錯乱、あらゆる方法を使って破壊される。
一様に、すべての登場人物や物事に「こんなはずじゃなかったのに」という言葉がハマるんだから徹底している。
ミロはともかく、成瀬にしたって村善にしたってトモさんにしたって、それなりにキャラクターを与えて描いてきたのにも関わらず、築いてきたものをすべて破壊、しかも思い切り踏み潰す形で。
人にせよ人間関係にせよ、その破壊がもたらす衝撃は大きく、読者の胸にも何かしらダメージが与えられるだろう。

それもこれもミロが望んだことだ、というのがエグい。
拒否反応が出ないほうがおかしい。
彼女の選んだ道はいばらの道どころか、底なし沼の様相を呈すドロドロの道で、蛇の道は蛇というか、碌なヤツが集まらない地獄絵図。
詐欺や盗みなんてかわいいもので、殺人、強姦、ギョっとする描写の連続。
ダークもダーク、漆黒の闇。
今作で登場するダークのひとつの象徴、久恵や徐について、その深い闇をより深くするために彼女・彼(の闇)が形成されるに至る経緯をキッチリ展開しているあたりも抜かりない。

落ちるところまで落ちる。
闇は深く沈めば沈むほど黒く、暗い。
読み終えたその先に開き直りのポジティブ感を得るのか、自らもその闇に取り込まれてしまうかは、自由だ。
もちろん、そんな深い思いなど抱かずに、気持ち悪い話として片付けるのも、自由だ。
by blue-red-cherry | 2008-09-10 20:43 |