カテゴリ:本( 103 )

ローズ・ガーデン

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村野ミロシリーズ、異色の短編集、「ローズ・ガーデン」を読んだ。

ミロの自殺した旦那、博夫一人称の語りが表題作で、それから始まる今作。
もうね、典型的な嫌いなタイプの男で、その博夫が。
癖とか振る舞いとか、どこがっていうよりは全体的に生理的に。
でもまあ、その博夫とくっついたミロがいるわけで、博夫が語る過去の中では少なからず博夫と引き合うミロが出てきてしまう。
ここまでミロに対してはたまに見せる「オンナ」な部分にも目を瞑れるくらい、ハードな新宿で生きる様が好きだったんだけど、あまり知りたくなかった過去を知った感じ。
ただ、こういう長編連作ものってそれ自体はその話の軸に対する伏線は許容できても登場人物の過去とかもろもろの設定部分まで脱線してると収集つかなくなっちゃうし、こうやって短編で見せてくれるのは悪くない。

オカマちゃん大活躍でお化けすら絡んでくる「漂う魂」あたりはユーモアを交えつつ、「独りにしないで」、「愛のトンネル」と続く3、4編目では中国マフィア、SMクラブなどミロシリーズならではのアンダーグラウンドな世界を舞台に人々の異形の愛を描く。
それぞれにそれなりのミステリーがあり、短編ならではのライトな展開が心地よく、楽しく読めるミロシリーズだ。
ただし読了後の心に残るのは、そこはかとない寂しさ。
謎解きのヒントは証拠や遺留品、トリックにあらず、人の心の機微にあったりする。
ミロの探偵業は事件や依頼を解決するだけでなく、人間のどこか欠落した部分を見つめさせる。

やっぱり博夫の話、「ローズ・ガーデン」の気持ち悪さが際立つなあ。
でもこのゾクっとするというか、どんよりした気持ちにさせる気持ち悪さが桐野夏生の魅力なような気がしないでもない。
by blue-red-cherry | 2008-09-02 19:38 |

水の眠り 灰の夢

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順調にミロシリーズ読破中。
今回はシリーズ番外編、ミロの父、村野善三を主役にした「水の眠り 灰の夢」を読んだ。

東京オリンピック前年を舞台にした今作。
村野善三、略して村善は「トップ屋」と呼ばれる週刊誌の腕利き記者。
こうネットが発達した今の社会に「トップ屋」がいるかどうかはわからないが、こういう情熱と誇りで仕事をこなす人種は嫌いじゃない。
編集周りの人間でも熱い人、減ったよなあ。

そのトップ屋がたまたま爆破事件に遭遇し、たまたま甥の不始末を対処したことで別の事件に関与してしまい、それらが渦巻いて彼の人生を変えてゆく。
女流ハードボイルド作家として知られる桐野夏生だけど、ハードボイルドはやっぱ、男を主に据えたほうが収まりがいい。
自分、不器用ですからを地で行く村善は完全にハードボイルドが似合う。
週刊誌や新聞の出し抜き合うヒリヒリした世界、警察やヤクザの血なまぐさい世界、そして謎めく事件。
そこに女々しさは感じず、気持ちを入れて読めた。

調査探偵・村善誕生前夜の物語は、昭和の活気に満ちている。
ミロファンならずとも楽しく読めるはず。
そしてミロファンなら避けてはとおれないエピソードもあり、必見。
by blue-red-cherry | 2008-08-31 13:24 |

天使に見捨てられた夜

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桐野夏生の探偵・村野ミロシリーズ第2弾、「天使に見捨てられた夜」、読了。
こういうシリーズものはまとめ読みに限る。
テンションも思いいれも高くて深いから一気にいける。
一方で読後の寂しさもデカかったりするんだけど。

前回の事件から一年後の設定と思われる(前作との絡みを直接的に書いた記述はほとんどない)。
すっかり探偵を生業にしているミロは頼もしくもあり、しかし探偵に染まったがゆえの危うさもある。
AV女優の失踪事件を追っていくうちに起こるあれこれがこの物語。
根っこにあるのが性ド真ん中のAVだからか、ミロは探偵でありながら、強烈に「女」としての行動が目立つ。
男女の心身がくんずほずれつの世界に身を置くことでいろんなものが剥がされていくというか。
強く気丈、怖いもの知らずの行動力を見せたかと思えば途端にもろく儚い女としての一面をも認めてさらけ出す。
ある意味潔いが、女女した展開は、正しい使い方ではないがそれこそ女々しく、ちょっとトゥーマッチだったかも。
かたせ梨乃がミロを、この女全開の部分を演じていると思うと、ちょっとスープ割りしたくなるww

ミステリーとしての面白さは増した気がする。
何しろ情報がまったくないところからスタートするもんで、事件の全容は玉石混合、ありとあらゆる情報がなだれ込んで起こるジェットコースター的な展開がスリリングで楽しい。
読み始めるととまらなくって、ついつい夜更かししてしまった。
それにも関わらず前述のミロ、そしてミロの鏡として大きな役割を果たした隣人のトモさんと、登場人物の描写にもぬかりなく、迫力のある筆だと思った。

この調子でこのシリーズは読破しますぜ。
by blue-red-cherry | 2008-08-26 20:10 |

顔に降りかかる雨

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桐野夏生強化月間は、探偵ミロシリーズに突入。
女性探偵・村野ミロが初登場した江戸川乱歩賞受賞作、「顔に降りかかる雨」を読んだ。

実に15年前の作品である。
連絡手段に携帯電話は登場せず、ウェブメールも使わない。
旧時代を感じさせる社会での探偵業は、どこか味があって美しくって、今の社会に照らし合わせれば何かとまわりくどいその手段も周到で、どこかスマートに映る。

といっても今作は父親が私立探偵をしていた、という設定のミロが事件に巻き込まれ、結果抗えないDNAの力か、探偵のようなことをしていくというお話。
探偵前夜のミロが己の衝動、ひとりの女性としての思いと、事件を解決するために動いている人間としての思い、冷静と情熱の間で揺れる様が面白い。
巻き込まれた事件の設定では、自らの運命をかけた期限が設けられ、ベタではあるがこの設定がサスペンスを盛り上げる。

過去のトラウマと戦う内省的な部分であったり、強烈に女を感じさせる恋愛的な要素だったり、ミステリー/サスペンスではあるが、村野ミロという人間の内面と彼女が直面する現実とを交互にリンクさせた、村野ミロの物語である。
ここから彼女のストーリーが続くことを想定して書いたのかどうおかはわからないが、今こうして村野ミロシリーズを読んでいくうえではすごくありがたいイントロダクションだった。

最後のオチまで、そう手の込んだトリックはないが、楽しく読める。
何より先を読むうえで通っておくべきステップだ。
by blue-red-cherry | 2008-08-23 09:57 |

BRUTUS

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パ、Perfumeの表紙に惹かれて買ったわけじゃないんだからね!
「BRUTUS」のJポップ特集号を読んだ。

Perfume、カエラ、土屋アンナ、YUIと続く歌詞に関するインタビューは薄いなあ。
せっかく時間もらってるんだからもっと突っ込めばいいのに、と思いつつ、これくらいしか出てこなかったのかも、とも思う。

宇多丸先生のチャットモンチーほか、フレッシュガールポップ評はあまり特集主旨のリリックに絡んでなくってワロタ。
最後のほうで推奨してたモデルハウス(=モデル系の女の子がハウスを歌うっていう)、あると思います!

サザンのauと、キョンキョンと細野晴臣の「グーグーだって~」のタイアップはそこかしこで見かけるのでテーマを変えても食傷気味。

クレイジー剣さんの遍歴はもっと掘り下げたい、あの遍歴をサラっとは物足りない。

で、で色だったのが小西康陽の阿久悠評。
同じ音楽クリエイターとしての尊敬と嫉妬、好き嫌い、愛憎入り混じったメッセージは一見の価値あり。


Disney - Main Street Electrical Parade (Readymade Digs)


FPM田中とOZMAの放談はなんか、最近この人たちのセレブライフが鼻につくのでどうも。
一番よかったのは篠山紀信撮影で麻生太郎と麻生久美子(着物)、麻生セッションのグラビアかな。
by blue-red-cherry | 2008-08-22 19:38 |

20世紀少年+21世紀少年

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公開が迫る劇場版に思いを馳せつつ、「20世紀少年」と完結編の「21世紀少年」を3日くらいかけて一気に読みきった。
学生時代~社会人序盤はスピリッツを毎週買っていたので、それに単行本もきっちり追いかけてて、16巻くらいまではまともに読んでたんだけどなぜかその辺で離脱。
その後フィナーレを迎えたこともしってたんだけど、これまたなぜか追ってなかった。
件の映画の話をしてたときにその話をしたら先輩が貸してくれて、今にいたる。

真相を知ったわけだが、なんつうかああいうまとめ方か、と。
ことあるごとに強調されたワード、"ともだち"、"子供が作った話"、この辺はやはりキーワードであり、核心。
8年に渡る長期連載は70年代から世紀末を経て2015年、ド真ん中で読んでたと思われる読者層の過去~現在~未来を通過する展開は大きなスケールであり、その実我々読者の誰もが経験し得る、童心、夢に始まり成長し、挫折や認識することで喪失するもの、その果てに見えない未来へ向かうという、なんとも等身大の物語のように思えた。

ケンヂは遠藤ケンヂの名のとおり、エンケンがモデルなんだね。
でも映画は唐沢なのか。
エンケンじゃあ893っぽすぎるかw
正直、2部でのケンヂはあまり好きじゃない。
オレの求めるヒーロー像とはちょっと違うのかも。
どちらかというとオッチョのほうがヒーローっぽいな。
どちらも人間臭いところが単なるヒーローものじゃない深みなんだけどさ。

"ともだちワールド"とかあの辺で挫折したんだけど、今回ゆっくりじっくり、かつ一気に読んでみたら別に分かりにくいことなんかない。
小泉響子が、ヨシツネが、カンナがケンヂが万丈目がそうしたように、ともだちの世界に身をゆだねることが、この作品に近づく術だと思う。

今流れている第1部のトレーラーを見る限り、期待できると思う。
この大河コミックをきっちり再現できたら、いい映画になるんじゃないか。
今は8年に渡って描かれたひとつのロマンの余韻に浸りながら、期待して待つとしよう。
by blue-red-cherry | 2008-08-12 00:44 |

柔らかな頬

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上下巻、なかなかのボリュームで10日くらいかかった「柔らかな頬」、ようやく読了。
電車で読んだり、たまにPSP優先したり、ラジバンダリ(big up 2 あーちゃん)。
腰据えて読まないとダメだなー。

主人公・カスミの不幸(自分で選んだ感もある)な出自から、彼女とエリートデザイナー・石山の不倫話と、序盤から結構重い。
夏のカラっと晴れた日には似合わんが、ジメっとした日にゃちょうどいいかもね。
カスミと石山の不倫に両方の家族を交えたありえない北海道旅行でカスミの娘が行方不明になったことを受けて、ミステリー、サスペンスとしての物語が動く。
しかしこの話、質感はミステリーではないと思う。
確かにカスミの娘・有香を探す物語であり、その真相こそがこの物語の肝だったりするんだけど、カスミや石山、カスミの夫・道弘、そして死期を控えた元刑事の内海を加えた主要人物を転々とする群像劇としての側面が強い。
娘の行方不明という軸に向かって進むというよりは、その軸に寄り添う形で生きている主要人物の過去・現在・未来をそれぞれの視点で描く、それぞれの物語の集まりであるような気がする。

いくつかの人物を使い、一人称が刻々と変わる手法はミステリーを読み込んでいく上で非常に分かりやすい。
いや、注意深く読まないと分かりづらいんだけど、ひとつの物事を違った人間をフィルターにすれば違った見方、違った答えが導かれる。
なんというか、ミステリーでありテーマは重く謎めいているんだが、一人一人の描写が短いながらも深いので、ヒューマンもの?

いろんなタイプのキャラクターに浸かりながらも、この群像劇の締めは強烈だった。
同じく視点を変えた最後の1ピース。
核心の核はあまりにもシンプルに、そして強烈にこの物語を締める。

ここにいたるまでの冷静かつ突き動かす語り口といいラストの潔さといい、桐野夏生、好きかも。
by blue-red-cherry | 2008-08-03 13:11 |

聖☆おにいさん

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「聖☆おにいさん」、ついこの前読み始めたばかりのアツいタイミングで2巻発売。
連載中の「モーニング・ツー」は月刊誌だから、次は1月予定らしい。

月刊誌ゆえの季節感、そして単行本になったときのずれがおもしろい。
しかもこの作品だとより顕著。
クリスマスに正月、どちらも神事だからね。
当事者のイエスとブッダが絡めば当然おかしな話になるわけで。

今回強烈だったのは、体を壊したブッダかな。
瀕死というか臨死というか、なんだけど「帰省」ってww
イエスのメカヲタっぷりももうちょい読みたかったな。
ちょろちょろ出てくる大天使ミカエルとかの存在も気になる気になる。
2人の起こす奇跡のガチっぷりも強度が増してきた。
天界と下界が重なりつつある……かな。

まだまだまだまだ笑える。
それこそ、聖書と経典がネタなんだから、尽きないよなあ。
by blue-red-cherry | 2008-07-24 18:28 |

GIANT KILLING

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「GIANT KILLING」、6巻きました。

5巻ではみっちり1冊かけてETUの初勝利を描いたあとだけに、どんなスピード感で展開してくか楽しみだったが、今回は1冊で数試合をこなした。
できれば1シーズンで終わってほしくない。
クラブチームって1年でどうこうなるもんじゃないじゃん。

今回もサポーター魂の醍醐味っつうか、勝ち負け順位だけじゃない、人に愛され地域に愛され、それに選手が応える的な流れがJファンの琴線に響きそう。
本編のサッカーもそう。
やっとの思いで得た初勝利から上向きのチームが結果を出し始めたかと思えば、中では11人のポジションを巡った熱い思いが交錯し、また、まだ若いチームが最後まで突っ走るかといえばそんな甘くはなく、早速2枚目、3枚目の壁にぶち当たる。
ホントまあ、よく取材されてるというか、よく見てらっしゃるというか。
どこぞの青赤いチームにダブる部分もあり、今回も集中してあっという間に読み終わった。

ここまでひとつのクラブチームに肩入れできるサッカー漫画もなかったと思う。
監督というフィルターを通すことでチームが見えてくる。
現実もまた、一緒だ。
Jリーグを普段見ない人にこそ、読んでほしい。

次巻は恐らく、秋。
by blue-red-cherry | 2008-07-24 08:50 |

聖☆おにいさん

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サブカル誌や書店の店頭をにわかに賑わせていた「聖☆おにいさん」、買っちゃった。
つかamazonで「BL」とかタグついててウケルんですけどww
確かにナヨってるし、それっぽくなくもないけど、罰当たるよww

イエス・キリストと仏陀が下界、それも日本の立川で(天界の)余暇を過ごす、これまたすごいアパートでのシェア生活で。
所謂シチュエーションコントのノリに近い。
つかそのもの。
イエスとブッダ、それぞれやることなすこと的外れだったり、神の奇跡を日常に巻き込んじゃったり、天界の常識で下界の常識とズレちゃったり。
お互いボケながらもどちらかがフォローする形は、漫才でありコントであり、それこそイエスとブッダで漫才に挑戦するエピソードもあったりするくらい、お笑いだ。
今のお笑いブームとのシンクロ率が高く、その辺の空気感も支持される理由だろう。

しかしまあ、ウンチクはいらない。
ウンチクなしで笑える。
イエスもブッダも趣味が根暗ww
イエスの「全放送局で放送中のドラマを全部チェックしてその日のうちに感想をアップすることで人気を誇る、一日1万ヒットのブログ」とかwww
シルクスクリーンで自作のTシャツ勝手に作って自分はおろかイエスに(しかも「13」とかwwww)着させちゃうブッダwww
上に書いたシチュエーションボケもかなり笑えるんだけど、2人の細かい設定とか、そこかしこに笑いのエッセンスが散りばめられていて抜かりない。

やったもん勝ち。
神様に怒られない程度にドンドンやっちゃってください。
いや、笑いの神様は認めてくれてるでしょww
by blue-red-cherry | 2008-07-20 10:16 |